第10話 親友の苦悩 20210905・加筆修正
1325文字 → 1672文字
ロバートは苦悩していた。
親友が窮地に陥っていたのを知っていたにも関わらず、警告も出来なかった自分にである。
自分の考えが甘過ぎたことに、そしてまさか命まで代償に取られるとは、如何してあの時幹部会に乗り込んででも助命に動かなかったのか……、今となっては後悔することしか出来ない自分に……、半年経ったが幹部たちの顔を見るたびに苦いものが湧き上がってくる。
急な幹部召集と訳の解からない爆雷の投下に、どんな意味があった?
コクマー 「今回の行動については私から説明しよう。過日、執行された東雲の処刑であるが、失敗している可能性があるとダアト様よりもたらされた!。」
なんと言うことだ。
親友は生きていると言う、時が止まり、そして体が震えた。
……俺は、喜びに震えながら声を荒げるのだった。
ホド 「なにっ! それじゃ瑛はまだ生きているのか?」
『ハイ、今回爆雷による衝撃波をクルーザーに設置されたソナーで測定し、アメリカのスパイ衛星の情報と照合した結果、およそ3000メートルの深海に未確認物体を発見いたしました。直径およそ1Kメートルほどの丸い物体です。これほど巨大で新円に近いものが自然発生する事は考えられませんので、何らかの人工物ではないかと考えられます……』
ケテル 「それが東雲とどんな関係があるのだね?」
『ハイ、これだけの人工物は 国家プロジェクトであったとしても建設に数年はかかると思われます。そんな計画も資金も現在どの国家組織にも確認出来ません。近年の海洋調査のデータからも1年前には該当するような物体は存在しなかったと確認出来ています』
ゲブラー 「そうすると何かね、そんな巨大なものが1年たらずで しかも何も無い所に現れたって言うのかね? まるで魔法でもあるまいに……」
『そうです、データがそのように語っているのです。そして現在そんな事が出来る存在が居たとしたら?』
コクマー 「……悔しいが東雲以外に思い浮かばないな、俺は」
いかに世界が広いと言っても、それだけの物を短期間に造る事が出来るのは、瑛以外には居ないだろう、しかしどうして……。
ケセド 「たしかに彼ならそのくらいの物を造ったとしても驚かないな、ここにあるイリスが良い見本だ」
ビナー 「ホドにだって造れるんじゃないの? ネェ~~」
ホド 「イヤイヤ、俺にも造れると思うがそんなに短期間では無理だ。だが瑛なら或いは……」
瑛よ、生きているのか?、本当に・・・、生きているなら今度こそ友として・・・。
イェソド 「それで?」 ……ホントに生きてたら大事だな、こりゃ~……
コクマー 「結果を紐解くと、奴がどんな魔法を使ったのか東雲は生きていて、いつの間にかあんな物を造っていたって事だ」
イェソド 「ほんとにそれは東雲の仕業なのか? 他の誰かが造った可能性はないんだな?」
ケテル 「これはダアト様の御言葉でもあるのだ、ほぼ間違いないだろう」
ホド 「百歩譲って瑛が生きていたとしよう、それでこれからどうするのだ?」
俺には何が出来る、考えろ考えろ考えろ……俺は友として何が出来るんだ。
ケテル 「それを決めるために我らは集まって居るのではないか。当初の目的から言えば奴の抹殺とオリハルコンの奪還なのだが……」
『現在の我々には、海底3000メートルで自由に行動出来る様な装備はありません。ですが、ダアト様が4ヶ月後の満月の夜には、ネツァクを燻り出すから攻撃の準備をしておくようにとの御言葉でございます』
ッ、また襲撃するだと!
諦めていないのかコイツ等は……どうする?
俺に何が出来る……、また何も出来ずに絶望するのか……。
『ゲブラー様、ティファレト様、ホド様は通常お仕事をお願いいたします。みなさま、当日の観戦が御希望であればヴァーチャルでの参加が可能で御座います。それからホド様、介入を御考えになって居らっしゃるようですがお進めいたしかねます。結社に敵対するのであれば制裁をお覚悟になってください』
ホド 「ッ!、わっ分かった」
ゲブラー 「大人しくしている事だな、ホドよ」
……瑛よ……俺は、また何も出来ないのか……
……俺は、どうしたらいいんだ……誰か教えてくれ……