Prologue No.2〜Lucius Merlin(ルキウス・マーリン)〜
――学院に入学してからというもの、ルキウス・マーリンは負けを知らなかった。授業、演習、模擬戦。どれも完璧だった。「さすがマーリン家のご子息だ」「やはり神童だな」それが、当たり前だった。努力など、必要がない。少なくとも、その頃の彼はそう信じていた。
そんな日常が、ある日、静かに崩れた。
「新入生を交えた実戦演習を行う」
演習場にざわめきが走る。対戦相手の年齢を聞いた瞬間、ルキウスは眉をひそめた。
「……一年?」
教師が指し示した先にいたのは、まだ制服が身体に馴染んでいない、小さな少年だった。十二歳の自分と、六歳の新入生。年齢差は六年。力も、経験も、知識も――比較にすらならないはずだった。ただの形式――そう思っていた。試合稽古が始まる、その瞬間までは。――最初の一手で、違和感が走った。質が、明らかに違う。粗さも無駄もない。最初から「完成形」に近い。
「……っ」
反応が、わずかに遅れた。それだけで、流れは少年のものになった。
先手を取られ、気づいた時には、床に叩きつけられる感覚が背中を走っていた。まるで――最初から、勝敗が見えていたかのような動き。数合も、もたなかった。視界に映る、白い天井。
「……そこまで。勝負あり」
一瞬の静寂。次いで、どよめきが広がる。「今の、見たか……?」「六歳で、あれを……」「マーリンが負けるなんて……」ルキウスは、すぐには立ち上がれなかった。少年は何も言わない。勝ち誇ることも、振り返ることもなく、ただ一礼して、教師のもとへ向かう。そこには驕りも、侮りもなかった。ただ「結果を受け取った」だけの態度。
「……あんな奴が、いるのか」
同じ場所に立ち、同じ条件で、初めて負けた。――しかし。悔しさより先に、胸の奥が高鳴っていた。自分より強い存在がいるという事実に、抑えきれないほどの興奮を覚えていた。俺は今まで、神童と呼ばれ、期待され、「できる」という前提の上に胡坐をかいていた。努力をしてこなかった。挑む必要も、挑むべき相手も、いないと思い込んでいた。――だが、違った。
この日を境に、ルキウス・マーリンは変わった。演習が終わった後、ルキウスは誰とも話さず、訓練棟へ向かった。夜遅くまで、灯りは消えなかった。自分の使える力をより深く分解し、構式を練り直し、自分の未熟さと、何度も向き合う。この敗北を、無駄にはしないと誓った。才能に甘えることをやめ、努力を重ね続けた。――次は、同じ土俵に立つ。その一心だけを胸に。胸の奥に、静かに刻まれている。あの六歳の少年の存在を、決して忘れることはない。
マーリンは頭の中では呪術廻戦の五条悟みたいな性格の顔はガチアクタのエンジンです笑
だからこそこの2人とは違った部分を出そうと思って性格設定は一番しっかり作り込まれてます笑
(主人公の方が性格設定の文字数少ないことあるんだと自分でツッコミを入れてしまう関西人のおいらw)




