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Prologue No.5 ~土御門菫~

 ひいおばあちゃんの家に一族の長がみんな集められた。私と彼の父も。お腹の中の弟を数週間後に出産する母も、いつも彼に怒鳴ってばかりの彼の母も。まだ幼かった私たちは他の一族の同い年くらいの子たちと広いお庭で鬼ごっこやかくれんぼをした。無邪気に走って、捕まったらお互いに笑い合って、楽しかったあの日々を思い出す。大人たちが沢山入っていった大広間のふすまが開いた。誰かを呼ぶ声がする。もう帰る時間なのだと、みんなで大広間の前まで行く。だが、予想とは異なってた。彼が、彼だけが呼ばれていたのだった。彼は履いていた靴を脱ぎ、襖の中へ一人で入っていった。私たちは、彼を見送ってまた遊び始めた。

 数十分後、また襖が開いた。次は大人たちみんなが出てきた。お父さんとお母さんの下へ走って行った。

 「さあ、帰ろうか。長く待たせてごめんね。」

 お父さんの優しい声に包まれる。よく見るとお父さんの目元が赤くなっている。お父さんの後ろにいたお母さんは目元に加え、目が充血している。そんな目元とは裏腹に、二人はとてもにこにこしていて、何が何だかわからなかった。

 ひいおばあちゃんの家を出て、車に乗り込んだ。お父さんが助手席、お母さんと私が後ろの席に座り、生まれた時から家に仕えてくれているじいやが運転をしている。いつもと同じように家族で話をしていた。今日何をして遊んだのか、誰と何の話をしたのか。たわいもない話だった。車が走り出して数分後、母親の目から涙がこぼれ落ちてきた。ぽろぽろ。ぽろぽろ。顔を覆った手からどんどんと涙が滴ってくる。どうしたの?どこかいたいの?私は咄嗟に母を慰めたが、母の涙はどんどんと多くなり、しまいには父も泣き始めてしまった。じいやも心なしか、涙をこらえているように見えた。

 数週間後、ひいおばあちゃんの家に来た。お母さんの出産予定日が近づいてきたからだとお父さんに聞いた。ひいおばあちゃんの家は前来た時とは雰囲気が違うと子供ながらに悟った。お母さんはついてすぐに顔に不気味なお面を付けた人たちと一緒にどこか行ったこともないような奥の部屋へ連れていかれた。お母さんが私たちの下へ帰ってくるのに10日かかった。その間、四六時中ずっとお経のようなものが聞こえた。不気味で仕方なかった。お父さんの下へ行って、ずっと袖をつかんでおびえていたのを覚えている。

 お母さんが連れていかれて6日後、次はお父さんが連れていかれた。いかないで、と泣きじゃくる私をなだめて優しく私を抱擁してくれたお父さんはそれから二度と私の下へ戻ることはなかった。

 お父さんが連れていかれた4日後、お母さんが帰ってきた。ひどくやつれて、まるで別人のようだった。帰ってきてからはずっと「アイツがすべてを奪った」「あんな化け物生まれてくるべきじゃなかったのよ」などとブツブツと訳の分からないことを吐き捨てていた。

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