プロローグ 三途のドブ川を乗り越えて
「ではこれを次の受付で提出して下さい」
「えっと……あの列に並ぶんですか…?」
横には気が遠くなるほどの行列ができておりその奥に案内所が見える
「いつもこんな感じです、後が詰まるので早くどうぞ」
「はぁ……ありがとうございました……」
最後尾に並ぶと案内役なのか真っ白な服を来た長身の人が「最後尾」と書かれた看板を持っている
「はぁーい、こちらに並んでくださいねー」
「はい…」
暇を潰せるものは持っておらず空や人を眺めるしかやることがない。空は青く澄み渡っておりこんなに空は広かったのかと驚く
ふと前の人の顔が見える。その顔と上半身は片側が原形を留めておらず皮膚が無くなっていた
(うわあ……痛そー……ああ、でももう痛みは感じないんだっけ)
この世界には痛みが無い。たとえ手足がもげても顔が潰れても、もう苦しむことは無いのだ
「次の方ー、書類をお願いします」
「あ、はい」
やっと順番が回ってきたようだ。歩く度に目玉が揺れて落ちそうになるのでゆっくりしか移動できないのは不便だ
「お名前と死因をどうぞ」
筋から垂れている潰れた目玉を支えながら受付に書類を渡す
「はい……浮舟ノア、トラック事故に巻き込まれて死にました」