最強の武士、学院に入学する。
それから十年が経ち、俺は魔法学院に訪れていた。今日は入試の日だ。
この学院では入試は二種類ある。筆記試験と実技試験だ。先ずは筆記試験を受けるため、指定された教室に向かう。
扉を開けて、そこに入ると、既に数人の生徒が居た。15分ほど早く来たのだが、どうやら上には上が居るらしい。そんなことは置いておいて、指定された席に座り、筆記用具を準備する。この世界での筆記用具はガラスペンだ。インクも常に持ち歩く必要がある。
それから数分が経って、試験官が入ってくる。
「ようこそ、入学希望者達よ。」
藍色の髪に黒色の目を持つ男性の試験官だった。
「早速筆記試験を始めるが、質問のある者は手を挙げろ。」
そう問うても誰も手を挙げないことを確認し、試験官は試験用紙を配り始める。
この世界については既に履修済み。全く問題はないだろう。本当ならば一応入学希望者の顔くらい見ておいた方が良かったかもしれないが、後回しにする。
「それでは、始め。」
タイマーが起動する。制限時間は1時間。問題数は82問。1問…約44秒か。問題なさそうだな。
ただひたすらにペンを動かす音だけが聞こえる。そのまま50分が過ぎた。
(大丈夫だ、見直しもしたし、これなら問題なく満点も取れるだろう)
「終わりだ。」
試験官が用紙を回収していき、集計を始める。多くの生徒、というか俺以外の生徒は真っ直ぐに教室を出て、解散していった。
「レオン、お前は行かないのか?」
集計している試験官に言われる。
「行きますよ。」
離席して、教室を出る。簡単すぎたような気もしたが、俺が努力しすぎただけなのだろう。
俺はそのまま実技試験のための指定場所へ行く。実技試験の内容は洞窟の探索だ。
先ず、それぞれの生徒をバラバラな入口に一人ずつ分散させ、洞窟の最奥へ向かわせるというもの。
単純に着順で実技試験成績が決まるが、もちろん洞窟なので魔物も居る。それらを考えると正直に言えば、少々危険だろう。この制度であれば、教師が生徒を隠密に消し去ることも可能だ。魔物にやられた、とでも嘯けば。そんな感情を抱きつつ、合図を待っていると、アナウンスが流れる。
「えー、それではこれより実技試験を開始する。よーい、始め!」
キッパリとした女性の声を合図に各々洞窟へ入っていく。俺は極身体強化をかけて全速力で走る。疲れればすぐに心身修復を用いて回復させる。これが最も効率的だ。現れた魔物は刀で一刀両断。因みにこの刀は再構築によって生成したものだ。前世で使っていた刀とまったく同じつくりにしてある。そのまま二十分ほど走り続けていると、視界の端に最奥を示すランプが見える。そこへ向かおうとした刹那、爆音が聞こえる。恐らく魔法によるものだろうが、明らかに放出した魔法の規模がおかしい。俺が通った道中でそこまでしなければならない魔物など存在しなかった。
(どういうことだ…?)
異変を感じながら最奥のランプを見つめていたが、軈て爆音がした方向に進路を変更する。
その先にあったのは巨大なワームに襲われている女子生徒だった。
(ミュータントワーム…。魔物の中では上級レベルだ。)
よく見ると、その女子生徒には見覚えがある。赤い髪、赤い眼…。もしかしてと思って、近づく。
「フィ、フィアか!?」
フィアも気づいたようにこちらを向く。
「レ、レオン!?」
「助太刀する!」
集中力を高めて、刀の柄を握る。
「第壱奥義、一刀細断」
その刹那、ミュータントワームはバラバラになっていた。それを見て、納刀する。
「フィア、大丈夫だったか?」
「う、うん…ありがと。にしてもすごいね。これがレオンの本気?」
「そこまででもないがな。」
感心したように見られている。あ、そんなことより最奥へ向かわねば。
「さて、最奥に向かうぞ。」
「え、でも怪我しちゃって…。」
「恥ずかしいから誰にも言うなよ。」
そう釘を刺してからお姫様抱っこでフィアを抱えて、再び極身体強化をかけて全速力ダッシュする。フィア分の重量もあるが大した影響にはならない。
「え、ええっ!?」
混乱しているが、仕方ないな。そのまま最奥まで残り10mのところでフィアを降ろす。流石に教官に見られては変な疑いをかけられかねない。
「ご、ごめん…えっと…ありがと…。」
「大丈夫だ、ほら。」
フィアの背中を押して、前に進ませる。
「ま、待って!これじゃ私が一着に…。」
言葉を無視して、先にフィアにゴールさせる。教官はそれを見て聊か驚いたような顔をして、ワンテンポ遅れてから、記入する。
「フィア・レクーレ、一着。レオン・セラフィム、二着。」
俺はゴールをした後、待機場所のベンチに座った。すると、フィアも遠慮がちに隣に座ってくる。
「わ、私が一着になっちゃったけど…。いいの?」
「ああ。これでフィアが首席、俺は次席。最高のポジショニングだ。俺が首席だと目立ってしまうからな。」
「えっと…ありがと…?」
「はい、もう感謝は分かったから、そんなに気負いすぎるな。」
「うん…。」
しばしの間沈黙が流れる。
「言い忘れてたけど、久しぶりだな。まさか再会するなんて思ってもなかった。」
「うん、久しぶり。私は嬉しいよ。」
「俺もそうだな。良かったら友人にならないか?学院生活でお互い困ることもあるだろう。」
「うん、私も友達になりたいわ。」
「じゃ、決まりだな。」
そして、無事二人は魔法学院の入試を突破し、俺は次席、フィアは首席となった。




