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第八幕 神々の敵

澄み渡った空気。清々しい気運。目の前には天に届かんばかりの階段がある。


「ぐぎゃああああ!」


静寂で厳かな雰囲気をぶち壊すような声が響いた。魔王グリーアがもんどりうって倒れこみ、暴れだしたのだ。この場の神聖力が強すぎて魔族である彼らは体が崩壊しそうになっているようだ。

四天王パメロアはさすがに矜持が高い魔族なだけにグリーアほど見苦しくない。

苦痛に耐えながらマドーに聞いた。


「これは一体?」


マドーはその言葉に応えず、こつんと杖で騒ぎ立てるグリーアの頭を小突いた。すると、二人の体が闇のオーラにつつまれグリーアの動きがピタリと止まり、よろよろと立ち上がった。


「魔王様。どうやら助かったようです」


「う、うむ。しかし・・・」


我の頭を小突く必要があったのか?と小声で言った。パメロアもその言葉が聞こえたが、聞こえない振りをした。最早、魔王がどうこうの次元ではないということにさすがに気付き始めていたからだ。

その代わり別のことに気づいた。


「そういえば、あの機械がいないようです」


「ほう?」


パメロアがそれに気づいた理由は、見苦しいグリーアに対して、ツッコミの声がなかったからだ。こういった場合、きるりがいれば必ずマドーの声を代弁しツッコミを入れるはずだった。


「魔王様。もしかしたら、ここから出られるのでは?見たところグランドルではないようですが」


「ふむ」


確かに、自分たちが元居た世界ではないようだった。改めて辺りを見渡してみると青々とした空に小鳥が声が響いている。

どうやら、ここは上空で浮遊島のようだった。魔力はあるから飛んでこの島から出ることは容易いように思えた。

だが、グリーアはこの光景を見て反吐が出る思いだった。


(ふんっ!ここは我が求める世界ではない)


なるほど。また、0から平和で軟弱な人類を滅ぼし魔王になってもいい。しかしそれでは面白くないとグリーアは思った。マドーの言う新魔界に興味がわいたのだ。


(我が真の魔王であることを示す絶好の機会)


更なる強者を求めて、自分の力と知がどれほど通用するのかグリーアは確かめたかった。自分が井の中で蛙で田舎魔王だったということもすでに十分に分かっていた。


「ゆくぞ。パメロア」


「御意」


グリーアは、マントをひらめかして浮遊し、すでに姿が見えないマドーを追いかけて階段の上を浮遊しようとした。


「ぐおっ」


しかし、強制的に階段に足をつかされる。強い神聖力によるものようだった。二人は思わず顔を見合わせた。

なんとも格好がつかないことだが格好を気にしている場合でもない。もし、マドーに追いつけず置いていかれたら一大事だ。

マドーならそのくらい平気でやりかねないことをすでに二人は共通認識としている。そのため、慌てて小走りで階段を駆け上がった。

なぜ、小走りなのかというと、どうやら階段は1段ずつしか登れないようなのでどうしてもそんな格好になる。はたから見たら馬鹿みたいな光景だが、当の本人たちは人生をかけた一大事である。


ようやく、マドーにおいつき一安心したグリーアは、息を整え、なんでもなかったかのように腕を組み余裕の笑みを浮かべた。


「ククク。どうやら、我が宿敵がこの先にいると見た。そうだろう?マドーよ」


無視されるかなと思ったグリーアだったが、マドーは当然無視せず答える。これから一緒に業務を行っていくわけだから業務に関することで無視するはずがない。


「今から会うのは天神たちだ。だが魔神も中には混じっているようだ」


「何?魔神が?我もその存在の気配くらいはつかんだことがある。なぜ我らが神と宿敵がこの先にいるのだ?」


「それは、俺たちが神々の敵だからだ。怖気ついたかね?グリーア君」


「ふんっ・・・」


グリーアは今更何を聞いても鞍替えするつもりはなかった。もう自分や自分の世界は一度滅んでいる。ならば、どんな結末を迎えようとマドーについていき滅びるつもりだった。


その様子を見て、マドーは感心した。


(十分な覇気。どうやら掘り出し物だったようだ)


そこで脅すのはやめて真面目に説明をすることにした。


「いいかね。グリーア君。彼らはクライアントだ。私たちは魔導ギルドに所属し神々から依頼を受けているのだよ」


「ほう?それは天神だろうが魔神だろうが関係ないのだな?」


「その通りだ。少なくてもここエーテリアスでは、彼らの立場は敵対的なものでもない。

全ての世界は単に維持のために天と魔でバランスをとっているだけのこと。

例えば、グリーア君の世界グランドルは魔のバランスに偏りすぎたので魔導ギルドが神々から依頼を受けラグナロクを起こした。というわけだ。我々魔導ギルドの業務内容は大体そんな感じだな」


「では、我が考慮すれば世界は崩壊しなかったのだな?」


「その通りだ」


「・・・それは分かった。過ぎたことだ。もうよい。結局、我らはなぜ神々に呼び出されたのだ。新しい依頼を受けるためか?」


「違うな。それは我々が異世界を喰らう者だからだ。あとはいけば分かる」


「・・・よかろう」


グリーアは、ブルンと武者震いした。いったいこの先にはどのような光景が待ち構えているのか。

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