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第二幕 崩れ行く世界

自由の翼のギルドメンバーたちは思い思いの武器をもってマドーを取り囲んだ。かといって必要以上には近づかない。マドーに近づきすぎたら何をされるか分からない。


ギルドマスターである武光ワンとヒヒンに抱えられるようにしてマドーの前に押し出された。


「さあ、賠償金の交渉をするんだ!」


「馬鹿いえ!グランドル攻略をすれば俺たち自由の翼のギルドランクは上がる!それが生誕因子コルムの地位向上に繋がるんだ!マドーの起源を損ねるべきではない!」


「あのやろーは、俺たちを石ころとでも思ってるんだ!おい!ギルドマスター!本当にあんな差別主義者と協力しなけりゃならないのか?」


「そうだぜ。俺たちだけでなんともでなるだろ?」


その時、サキュンが叫んだ。


「待て!マドーがいないぞ!しかも、見てみろ!ナンバーズだ!」


「げえ!」


自由の翼のギルドメンバーは恐れ戦いた。ナンバーズといえば、情け容赦ない治安維持部隊、魔道ギルドの魔導局長、残虐悪女マジョリカ率いるサイキッカーのサイボーグたちだ。


武光は叫んだ。


「みんな!早く魔法陣に逃げ込め!ここは俺が抑える!」


「おう!みんな!ギルドマスターが何とかしているうちに逃げ込むぞ!」


自由の翼のギルドメンバーたちは次々に魔法陣から転移していく。後に残されたのは武光のみ。


「アリア!リリア!ミリア!最大解放!三翼展開!セイクリッド・ディバイン・フィールド!」


武光の体から三体の天使たちが出現し魔法陣を守るための結界を貼る。


「マスター!ここは私たちにお任せてください!」


「私たちならよゆーっしょ!」


「わーい!みんなを守るよ!」


「ここは任せたぞ!」


魔法陣の守りを天使たちに任せて武光も魔法陣を経由し異世界【グランドル】に転移した。


「ぐわあああ!」


「た、助けてくれー!」


「み、みんな!」


武光がグランドルに到着してみると、自由の翼の面々が叫びながら皮膚を溶かしながら骨だけであり、その骨さえ溶けている有様だった。


(く!力を使いすぎた)


武光の浄化の力ならばなんとかできたはずだが、今はその力もない。どうすればいいのだと武光があたりを見渡してみると、驚いた。


グランドルの強い瘴気に苛まれて苦しむ仲間たちをマドーがジーっと見つめて観察していたのだ。武光は叫びマドーに向かって突撃した。


「てめえ!何やってんだ!」


その拳はマドーの頬にめり込むがマドーは微動だにしなかった。武光は唖然としたが、冷静になり再び叫んだ。


「マドー!助けろ!」


「ん?武光か。ああ、そうだな。悪かった」


マドーは杖を掲げた。


浄化クリア


マドーの魔術は周辺の瘴気を浄化し、安全地帯を作った。これで瘴気の影響を取り除くことができる。


「ぐわあああ!」


しかし、自由の翼のメンバーはまだ悲鳴を上げていた。なぜかというと瘴気の影響はなくなったが、すでに傷を覆っている。その傷が癒されてないからだ。マドーがまた観察モードに入ってしまったので、武光は叱咤した。


「おい!いい加減にしろ!傷も治せ!死んでいる奴は蘇らせろ!」


随分無茶な話に思えるが、マドーにとっては造作もないことだった。


回復ヒール復活リザレクション


「お、おお………」


自由の翼のメンバーは傷を負ったものは回復し、死んだ者は復活し、元通りの元気な状態に戻った。


「た、助かった!」


とはいえ、自由の翼のメンバーは何だか素直にマドーに感謝する気にもなれなかった。


そもそもマドーがぼけっとしていなければ、自分たちはこんな目に合わなかったのではないか?と思ったからだ。


しかも、その後もひどかった。


瘴気の痛みで転げまわっている仲間を早く助けてればいいのに、何の感情もわかない人みたいに暫く観察していたからだ。


彼らは内心思った。やはりマドーは精霊因子アステだから生誕因子コルムである自分たちを見下しているの違いないと。


「て、てめえやっぱり俺たちをコケにしてやがるな!」


皆を代表して息巻くのはやはり偉大なる馬族の男ヒヒン。マドーはヒヒンを横目でじろりと嫌な目で見た。


「諸君らの業務の範囲だ」


「て、てめえ!じゃあてめえの仕事は俺たちが苦しんでるのを観察することだってのか?」


「これだけの瘴気を作れる魔王は珍しい。新魔界創造に必要な人材となるだろう。とあれば精密な分析は不可欠」


「や、やろう!ごちゃごちゃと屁理屈を・・・」


まだ息巻くヒヒンの肩に武光は手を置いて制した。


「こんなことやってる時間はないぞ。外にはナンバーズが勢ぞろいだ。長くはもたない。このクエストを失敗したら自由の翼には後がないんだ。マドーに乗るしかない」


「確かにここまで来たらそうするしかねえよな」


と、武光に続いてワンコーまで同意したので、ヒヒンも多少落ち着いた。サキュンも続いてギルドメンバー全体に聞こえるようにこういった。


「その通り。我々はマドー・マホーに乗るしかない。すでに賽は投げられたのだ。

我々の役割はせいぜい肉壁程度のもの。しかし、たったそれだけのことで莫大な報酬が手に入る。

このチャンスは逃すわけにはいかない」


「サキュンの言うとおりだ」


すかさず武光がそういったので、ヒヒンも完全に納得した。


「ああ。そうだな。確かに規格外のチャンスではあるのか・・・、しかし、マドーの旦那よ。結局俺たちは何をしたらいいんだ?」


「お前たちは当初の予定通り、管理者の扉を探してくれ」


武光が聞いた。


「お前はどうするんだ?マドー」


「俺はこの世界の魔王をスカウトしに行く」


「それはいいが時間がないぞ。ナンバーズが入ってきたら何もかもぶち壊しだ」


「なあに。問題ないだろうよ」


「お前に問題なくても俺達にはあるんだ」


その時、世界を揺るがすような音量のラッパの音が響き渡った。誰かが上空を指さして言った。


週末レクイエムカウントだ!」


上空に巨大な数字が始まり、だんだんと数字が減っていく。減っていくたびに世界そのものが震え上がる。それを見て武光はさらに絶望した。


「まさか!スケジュールは確認したのに!」


「魔導ギルド、それに天神達も敵ってことだな」


「マドーの権限で何とかする手はずじゃなかったのか?」


「俺のスキルでは無理だったようだ。ここはやはり千の首を垂れるヒドラの異名を持つ五月雨武光のスキルがいる」


「俺任せかよ!だがそれもここを切り抜けてからの話だ」


「この日のために必死に各異世界を飛び回って精鋭を集めたんだろ?しかも復活機能付きだ。何を恐れることがあるんだ?」


「いや、いくら復活できるからって死ぬのは痛いし嫌だぞ」


「お二人さん。いつまでのんきに雑談してるんだ。ほら。マドー・マホー。魔族の群れがやってきたぞ。早く仕事に行け」


サキュンに急かされてマドーは浮遊し魔族の群れに突っ込んでいった。

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