第十幕 最強魔術師、マネジメントの壁にぶち当たる
「いよう!兄!帰ってきたかー」
マドーが魔導ビルの自分のオフィスに転移するなり、いかにも魔女みたいな恰好の少女が声をかけた。彼女こそ魔導ギルド治安維持部隊局長、残虐悪女のマジョリカ・マホーである。
一応、マドーの妹という形だ。
マジョリカを見てマドーは嫌そうな顔をした。
「なんだいその顔は?悪い知らせがあるが聞くか?」
「いやいい」
「喜べ!我がナンバーズを撃滅してくれたおかげで兄は減給だ!ざまーみろ!」
と、マジョリカはもろ手を挙げてキャッキャと喜んだ。マドーはうんざりしたが、無視して話を進めることにする。
「はいはい。分かった。分かった。ところで妹。新魔界創造のために魔王をスカウトしてきたんだが、部下として使い、共に瘴気の研究をしてくれないか?」
「ほう!研究か!構わないぞ。と言いたいところだが、まさか部下とはその骨のことではあるまいな?」
と、グリーアを指さす。いまだに放心していたグリーアだったが、悪口を言われてムッとなった。
「我は魔王ぞ」
といって、骨をカタカタ鳴らし目を光らせて威圧した。しかし、マジョリカは相手にもしない。
「こりゃまた臭そうな骨だな。しかも脆そうだ。ハンマーで叩いたらすぐぶっ壊れそうだな!それになんだい。横のちび爺は。臭そうな布かぶっちゃって。格好いいとでも思っているのかね」
とついでにパメロアも馬鹿にする。確かにパメロアは魔術師らしく身をフードとローブで包んでいた。もちろん、パメロアは気位が高いので、馬鹿にされて激怒する。
「おのれ!我を愚弄するか!我こそが魔王グリーア様配下、四天王の大地のグリーア!見知ったか!」
と杖を掲げてポーズをとり啖呵を切った。その有様にマジョリカはぴくぴくを頬を動かす。あまりにも田舎者丸出しの品性の欠片もない下劣さをそこに感じたからだ。
「おいおい!兄よ!本当にこのあり得ない田舎者の馬鹿野郎どもを部下にしろってのかい!」
それを聞いたグリーアも反論する。
「ふんっ。我こそ脆弱の人間の部下になどなるものか」
もうすでにマドーの部下であり、そのことは自身も納得してたので何の意味もない言葉だったが、マドーと違ってマジョリカは自分に対して敬意が感じられないのでとてもやってられないと思ったのだ。
マドーは、グリーアの頭を杖でこつんと叩く。すると、グリーアとパメロアはいい匂いとフェロモンをまき散らす美少女へ変身した。
「ぬおおお!なんだこの匂いわああ!」
「ま、魔王様!」
グリーアは自身の匂いに耐えきれずもんどりうって倒れこみ暴れた。そのグリーアをパメロアが何とかなだめている。
「おいおい・・・。本当に大丈夫かい?こいつは」
その有様にさすがのマジョリカも引いている。マドーは何も問題といった口調で言った。
「これで匂いの問題は解決しただろう?」
「いやそりゃそうだが」
「グリーアも脆弱な人間の部下になりたくないと言っていたが、自身も脆弱な人間になったのだから問題ないだろう」
しかし、問題ないわけがない。
「元に戻せええ!」
といって、グリーアは目を光らせた。それを見てマジョリカは大笑いする。
「ぎゃははは!こりゃ傑作だ!兄よ!目を光らせる機能は残したままにしたのだな?」
「面白いだろ?」
それを聞いてパメロアは激怒する。
「話が違うぞ!マドー・マホー!我々を笑い者の見世物にするためにここに連れてきたのか?貴様を高潔な武人と思いここまでついてきたがとんだ見込み違い!
ここで魔王様共々自害させていただく!」
と、えらく舌足らずでかわいい声で宣言する。
「え?」
勝手に自害させられることになってグリーアは思わずパメロアの顔を見た。そのグリーアの様子を見てパメロアも微妙に気迫が削がれる。
もちろん、マドーとしてせっかくスカウトした貴重な人材に自害されてしまったら困る。とはいえ自害されても生き返せばいいだけの話ではあるのだが。
(あちらを立てればこちらが立たずか)
やはり自分の力量では人材のマネージメントは難しいとマドーは痛感した。となると、きるりか武光に頼むしかないのだが、きるりはマジョリカと仲が悪いし、武光は今忙しい。
武光の配下である知恵者のサキュンでも使えればいいのだが、サキュンは武光の言うことしか聞かない。
(ここは自分で切り開くしかない)
結局そうなると、グリーア側を説得するしかないとマドーは感じた。マジョリカはとりあえず多少納得している様子であるし、そもそもマジョリカの性格がいまさら変わるとも思えない。




