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第99話 残された兵士

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 続けて、俺は収容所を襲った。

 そして、市民を全員解放した。


「ウオオオオオオオオ!!」


 近くにいた兵士は、この拳とナックルダスターで全員殺した。ハンドガンやショットガンの弾は、俺には効かない、鎧が全てを守ってくれるから。頭を狙ってこようものなら、避ける。そして、ヘルメットの上からナックルダスターの刃を突き刺す。


 石の力で強化されているからか、ナックルダスターの刃はヘルメットも貫通する。こうして、収容所の近くにいた兵士20人は全員、俺の手で殺された。簡単なことだった、兵士を殺すのは。


 俺はマントを生やしたまま、収容所の鍵を壊して無理やり開けた。すると、市民は次々に声を上げる。


「来るな、魔王め!」


 全く、都合のいい市民だ。というよりも、俺をダークエイジではなく魔王として認識していることに、少しだけ腹が立った。マントがいけないのか、俺から漏れ出るエネルギーとオーラが、俺を魔王たらしめているのか、しかし、遅れてやってきたヒルデヨ部長が全てを伝えてくれた。


「皆さん、安心してください。たった今、この街はダークエイジによって解放されました。彼は魔王でも悪でもありません、我々のために戦ってくれたのです」


 彼らは街が解放された、という事実に安堵していた。そして、次々に俺に向かって感謝したが、その言葉は偽りであった。巨人襲撃のように、心の底から感謝を述べているわけではない。あくまで、感謝を伝えないと殺される可能性があるから、心を偽って謝っているように見えた。


 魔王の存在は政府に隠されていたものの、伝承として少し残っていた。その魔王が、勇者の敵の魔王が、今ここにいる。その恐怖からか、何人かの子供は泣いている。


 だから俺は民衆の前に立ち、思いを伝える。


「俺の名はダークエイジ、この力は、魔王と呼ばれる男から引き継いだ。とにかく、まだ北西には行くな、そこにはアンチャードの奴らがいる。まずはヒルデヨの指示に従え」


 少しすると、市民は拍手し始めた。別に、拍手を望んで言ったわけじゃない。俺がダークエイジであることと、アンチャードがまだ街にいることを伝えたかっただけ。


「じゃあ、後は頼んだ。俺はアンチャードをこの街から追い出してくる」


「ああ、頼りにしていますよ」


 そうして俺は、また馬に乗ってアンチャードの本部へと向かう。


「ダークエイジは収容所を解放し、こちらに向かってきている。よって、本部を拠点として、絶対にダークエイジをこの場で殺せ!」


 本部には大量の兵士が、リーダーの指示を受けている。そしてそのリーダーの隣には、例の屈強なあの男がいた。


「ダークエイジは戦闘力に長けていて、ラーズ様の監視から抜けた男だ。決して油断するな」


 そう、リーダーの隣にいるのはブラッドリー。ラーズと共に他国にいるかと思ったが、お前はここに残っていたみたいだな。俺はマントを消してから、屋根の上に隠れる。


「どうやら収容所がダークエイジによって解放されたらしい。奴はこのまま向かってくるだろう、総員、戦闘配置に着け!」


 ブラッドリーの一声で、大勢の兵士が各々の配置に着いた。やっぱり、ブラッドリーは俺を分かっているな。


 さて、ここには50人ほどの兵士がいる。そして奴らはハンドガンやショットガンだけでなく、見たこともない武器を持っている。恐らくだが、連射可能な鉄砲といったところだろう。


 とはいっても長考する暇はない、じきに収容所から解放された市民を奴らは拘束、いや、殺害し始めるだろう。奴らはカービージャンクに興味がない、あるのは病気にかかった子供だけ。大人は奴らからすれば、力のある邪魔な存在だ。


「悩むな、感じろ」


 魔王はまた、俺に声をかけてきた。悩むなって、無茶な話だ。突然、こんなにも強大な力を手に入れたんだ。それに、時間はとても限られている。力を訓練する時間もないんだぞ。


「それはそうだが、あの時、俺の家に来た時に石を預けていれば、お前は石のエネルギーに耐えきれずに死んでいた。ゆっくりと、石に対応できる体へ進化させていただけだ」


 どうして彼の家に初めて来た時に石を移植しなかったか、それは信用していなかったとかではなくて、ただ体が追いついていなかったかららしい。それもそうか、だからって何でこのタイミングだったんだ。


「計画が始まる前には渡すつもりだった、これも仕方ないことだ。お前の体はまだ石のエネルギーに追いついてない、瞬間移動で失神したのもそのせいだ」


 まあ、それなら仕方ない。ラーズがこのタイミングで計画を始めたのが悪いからな。でも、感じろっていうのは無茶だ。


「俺だって戦ってるんだ、お前なんかに助言している暇はない……が、ひとつ言うなら、その力の可能性は無限大だ」


 そうしてまた声が聞こえなくなった、そうだな、この力は確かに無限大だ、新しいコスチュームもナックルダスターも作り出せたから。それに、パンチもキックも何もかもが強化されている。


 俺は爆弾を作り出そうと、心から念じた。しかし、何も作られなかった。光すら出てこなかった、どうなっているんだ。まさか、エネルギーが足りていないのか。くそ、じゃあ現地調達するしかないか、能力のおかげで爆弾の位置は分かっている。


 俺は屋根から飛び降り、裏通りにいた兵士を背後から襲った。


「グブッ!」


 首筋にナイフを突き刺し、その兵士を即死させる。そしてその兵士の腹に隠されていた鍵を奪い取り、近くの家に入る。扉を蹴破ってもよかったが、静かに入りたいんだ。


「グビッ!」


 そこから中にいた兵士を襲い、階段を登って机の上に置かれていた爆弾と、立てかけてあった対モンスター用の槍を取る。そして槍の先端に爆弾を結びつけてから、また屋根の上に戻り、頃合いを見て勢いよく下に飛び降りる。


 ダンッ!


 着地する音を聞き、数多くの兵士がこちらを向く。そして、先に立っている禍々しい姿をした男を見て、驚きつつも皆、ハンドガンを構える。


「まさか、ダークエイジなのか」


「そうだ、この手でお前らを殺しに来た」


 そうして俺は槍を投げ、遠くでハンドガンを構える男の顔面に突き刺す。


 ドガンッ!


 爆弾付きの槍は辺りを巻き込んで大爆発を起こした。激しい爆発音が鳴り響き、辺りを巻き込む衝撃波によって地面がえぐれ、近くにいた兵士の多くは爆発に巻き込まれた。


 地面を轟かす程の爆音が耳に入るも、鼓膜は無事だ。何故なら、強化された聴力は意識を集中させる音を変えられるからだ。至近距離で発砲したら、前なら耳鳴りが起きただろうが、今は何もならない。意識する音を変えているからだ。


 粉塵で周りが何も見えなくなっている隙に俺は奴らに近づき、次々にその無防備な体を殴っていく。


 ボゴッ! グチャッ! ザクッ!


 煙に紛れた俺の姿を、誰も視認することはできない。ただどこかから、一定のリズムで肉の裂けたり潰れたりする音が聞こえてくるだけ。奴らは、何も抵抗できない。


 グチャッ! グシャグシャ!


 ヘルメットがあろうとも関係ない、装甲があろうとも意味がない。一回のキックで、兵士は二階の窓まで吹き飛ばされていく。俺はそこから飛び跳ね、窓ガラスを突き破った男の顔面を更に殴りつける。


 グサッ! グサッ!


 そして地面に戻り、煙が晴れてきたタイミングで、ガラスの破片を次々に奴らの心臓へとお見舞いしていく。ガラスが尽きれば、遺体のヘルメットを投げつけ、ヘルメットも無くなれば倒れた兵士のナイフを突き刺す。


「ダークエイジ、いや、ブレイク、出てこい!」


 ブラッドリーの煽りを受けて、俺も叫ぶ。


「ここだ、ブラッドリー、いや、パニッシュ!」


「その名前で呼ぶな!」


「なら、ダークエイジと呼べ!」


 爆撃に耐えた何人かの兵士は、家の柱に隠れながらもそれぞれハンドガンを構えている。ブラッドリー、いや、パニッシュはその兵士たちを盾にしながらもゆっくりとこちらに向かってきていた。


「今だ、撃て!」


 兵士たちは次々に俺のことを撃つも、特殊な鎧によって全て弾かれてしまった。カンッ、カンッ、とどこか威勢のいい軽い金属音が辺りに鳴り響くだけで、痛くも痒くもない。


 残された兵士は、ダークエイジを恐れて逃げ出す。しかし、俺は見逃さない。俺は手に持っていたナイフを、次々と放り投げた。


 ザクッ! ジャキッ!


 放り投げた数本のナイフは、全て奴らの心臓に突き刺さり、残された兵士は全員絶命した。これで、残された兵士はブラッドリー、いや、パニッシュのみ。


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