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第89話 世界の真実

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「ここか、再襲撃で抗議した日以来だ」


 お昼過ぎ、俺たちはハイディアンに辿り着いた。

 奴らのことだから妨害して、今日中に着かないようにするとか、姑息なことをしてくるかと思ったが、そういうことはしてこなかったようだな。


 まあ、俺が能力を使って検問や人を避けたからだろう。奴らのことだ、無理やりでも足止めさせたかったに違いない。


「私は初めて来ましたよ」


「ええ、僕もです」


 ここはハイディアンの更に中心部、こういうところなんて滅多に来ない。カグタはポータガルグーンの再襲撃の件で抗議した時以来、ここには来てないんだろう。まあ、俺はウォーリアーズの時に何回か来ていた。そもそもウォーリアーズの拠点は、ハイディアンの外れの方にあるし。


 今は森の中にいるから人も少ないが、少し行けば都市の中心部であるため、人々の声が薄らと聞こえる。どの建物も高いし、市民の服装もどこか高級そうだ。


「いいか、作戦はさっきの通りだ」


 流石に無策で飛び込むようなことはしない、だからここに来るまで四人で作戦を考えた。


 とはいっても戦えるのは俺とカグタしかいない。ハードは射撃経験者ではあるものの、それは過去に人を守るために仕方なく撃ったものであり、戦えるとはいえない。一応、護身用にハンドガンを持っているそうだ。


 だから治安部隊本部に行くのは俺一人で、カグタはスナイパーライフルで遠方から狙う。魔剣四天王の奴らはモンスターとの合成実験を受けているため、体がモンスターと化している。人間には効果の薄い対モンスターの武器だが、奴ら相手だと威力が高くなるだろう。


 ハードとヌヤミは森の中で、馬車と共に待機してもらう。俺とカグタが戻って来れたら逃げるし、時間までに戻ってこなくてもそのまま二人で逃げてもらう。


「ブレイクさん、どうにか娘を助けて」


「ああ、必ずロナもリリーも、ボルトも助ける」


 ここで二手に分かれるため、俺たちは最後の会話をする。これは死ぬ前の最後というわけじゃない、作戦の前の最後という意味だ。


「ダークエイジさん、アンチャードは思った以上に押されているみたいです。奴らは市民を敵に回しました、奴らはカービージャンクの市民の強さを分かっていなかったようですね」


「それは良いことだが、早く戦いから解放させたい。必ず三人を助けて、この長い復讐劇にケリをつける。クロガもラーズ・フェイスも、全て倒してやるさ」


「どうか無理をせずに、生きて帰ってきてください」


「ああ、全て終わったあとに、七人で会おう」


 こうして俺たちは分かれた、ここからは戦場だ、気を引き締めて行かないと。俺は青いサングラスを外し、コスチュームを着て覆面を被る。


「この塔には誰もいない、だが出口は確保しろ」


「了解、絶対に生きて帰ってこい」


「当たり前だ。必ずお前の娘を取り返す」


 そうしてカグタを塔の中に入れて、更に二手に分かれる。何かあったら彼が気を引いてくれる、まあ、彼に頼らないように解決できればいいが。


 というのも、はっきり言って俺は彼らに頼りたくはない。だってこれは、俺が巻き込んだことだから。散々チームだとか、ダークエイジは悪くないとか、そうやって自分を鼓舞していたが、結局は俺が巻き込んだ。


 戦う前にこんなにネガティブになってどうする、でもそれは事実だ。奴らがそう言ってくる度に俺は違う、と何度も言い返したり思ったりしていた。けれども、それは当たっていた。


 俺があの時、カールさんに拾われていなかったら、カールさんは死ななかったかもしれない。でもその分、街の悪を止める人間はいなかった。


 まあ、今は考えるのをやめよう。とにかく、三人を救い出せれば後はどうだっていい。ここにおいて、戦える人間は俺とカグタだけだが、世界に目を広げれば他にもいる。現に今も、レジスタンスのみんなが戦っている。


「あの男、もしやダークエイジ?」

「何でこんなところにいるの?」

「早く誰か捕まえなさいよ!」


 俺は逃げも隠れもせず、堂々と大通りを歩く。流石に目立ちすぎるか、いや、俺は目立つためにここを歩いているから正しい。それにしても、ダークエイジの名前はここまで轟いていたとはな。


「ダークエイジ、ご苦労だった」


 少しすると大通りに兵士が集まってきた、市民は逃げているため大通りには俺と兵士くらいしかいない。その中、ヘルメットを被った男が近づいてきて、耳元でささやく。


「ラーズ様がお呼びだ、武器を捨てて投降しろ」


 この声は、ニュークか。魔剣四天王の一員がここに居るということは、ラーズに近づいたということ。


「断ったら?」


「人質の命の保証はできなくなると思え。ラーズ様はカービージャンクごと滅ぼすおつもりだ、早めに投降した方が身のためだぞ」


 やっぱりか、奴は巨人襲撃で街を滅ぼそうとしていた。抵抗する市民やモンタージュをレジスタンスと称して殺戮行為を繰り返しているが、奴からすれば街はどうだっていいんだろう。興味あるのは、街の子供にある能力だけ。


 しかしここで抵抗したとしても、俺ではなく人質の命が危ない。ニュークなら倒せるだろうが、奴の体はすぐに復活する。そして俺を囲むように、三十人くらいの兵士が槍を構えている。


「我々のためにも、早く投降してくれ」


 それだけじゃない、俺から見えないくらい遠くに、何人かの狙撃部隊が待機している。下手な行動を見せれば撃ち抜くつもりなんだろう、やっぱり抵抗はしないでおくか。


「……分かった」


「よしっお前ら、ダークエイジを眠らせろ」


 次の瞬間、周りにいた兵士らが一気に襲いかかってきた。手には、麻酔の注射器。まずい、これを刺されたら眠ってしまう。俺は急いでナイフを取り出して対抗するも、慣れない環境で三十人と同時に戦うことは無謀だった。


 ザクッ!


 肉をえぐられるようにして、太ももに注射器が刺さった。続けて奴らは首や腕に、次々に刺していく。


「やりすぎだ、お前ら!」


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「……ここは?」


 目覚めると、俺はどこか見知らぬ場所にいた。とても上品な物ばかり置かれた部屋だが無機質で、下にカーペットが敷かれていることと、壁に大量の絵が飾られていることから、どこかの部屋であることが分かる。


 何より俺は、部屋の中心に置かれた椅子に縛り付けられていた。覆面は着いたままだが、くそ、簡単には抜けられなさそうだ。


 あらゆる部位を注射器で刺されたからか、感覚が鈍っている。一人の人間に刺していい量じゃなかっただろ、あのニュークですら「やりすぎだ!」と叫んでいたし、というかそこまでは覚えている。


「久しぶりだな、ダークエイジ」


 段々と能力が戻ってきて、声をかけてきた奴が誰なのか分かるようになった。そう、ラーズ・フェイスだ。しかし、どうやら子供の姿と声ではない。どちらかといえば、お婆さんの姿と声をしている。


 これがヒルデヨ部長の言っていた、治安部隊の会長の方のラーズなのか。それにしては奴は久しぶり、と言っている。つまりどこかで会っているはずだ、でもこんな人と会った記憶はない。


「ああ、この姿に慣れていないのか。おい、兵士を外に出せ」


「しかし、ラーズ様の護衛が――」


「大丈夫だ、ここは私と四人だけでいい。というより、四人だけで十分だろう」


 部屋の隅の方に意識を傾けてみると、魔剣四天王の奴らがいた。ニューク、ブラッドリー、アテナ、そしてクロガ。揃いも揃って、何のつもりだ。


 ラーズは部屋にいた三十人くらいの兵士を全員追い出した。そして椅子から立ち上がり、ゆっくりと俺の方へと近づいてくる。


「ダークエイジ。これから、世界の真実を教えることにする。抵抗せずに、心して聞いてくれ」


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