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第88話 レジスタンス

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 その日のうちに、俺たちは森を抜けてハルメールに着いた。ただ、この都市は既にアンチャードの監視が入っていた。


 大きな川を渡る時、橋に検問の兵士がいたが、そこは何とかなった。というのも、橋の先に検問があるのが分かっていたから、俺たちは箱の中に隠れた。流石に奴らも時間がなく、箱の中身を確認することはなかった。


「ここでお別れだ、小屋は手配しておいた。休んで、明日には到着できるといいな」


 農家の格好をした運転手によれば、彼とはここでお別れらしい。彼もまた捜査官で、ここでアンチャードのしてきた行為を他の捜査官に伝える義務があるから。


「馬の動かし方は分かるな?」


「ああ、これでも他の国で働いていた」


 馬を引っ張るのはカグタも得意だそうで、ここからはカグタに任せることにした。


「そうか、君たちには期待している。くれぐれも気をつけて。また、カービージャンクで再会しよう」


 そうして彼は、農家の格好のまま街へ向かった。反対に俺たちは、森の近くの小屋へと向かう。その方が、人目につかなくていいからな。


 ハルメール、ここはマーベラスの隣にある都市だ。確か、ウォーリアーズの帳簿にはここと取引しているような、そんな記述があった。


 討伐パーティーと都市が取引しているなんて、規模が違いすぎてありえないと思っていたが、帳簿に書いてあったし本当なんだろう。そうだとしても、一体何を取引していたんだか。


「荷物を置いたら外に来てくれ、馬車にあった野菜でも食べよう」


 小屋に行き、薪に火をつけてから俺たちは温まる。夜で少しだけ寒くなってきたし、火はとてもありがたい。それにここは森の近くだから、人は来ない。そしてマーベラスではないから、モンスターもあまり出現しない。


 そしてありがたいことに、ヒルデヨ部長は馬車の荷物の中に野菜を入れていた。これは馬の餌でもあるのか、でも人間でも食べられるし、量はかなりある。馬を動かせるカグタによれば、馬にとっても多すぎる量とのこと。


 きっとヒルデヨ部長が、隠れて生活する俺たちのためにこっそりと載せておいたんだろう。そうだと願いたい、そういう善意ってことにしておきたい。


「明日は、もうこういう食事も取れないぞ」


 焼いた野菜を食べ、少し休憩してから俺たちは小屋の中に戻った。


 ベッドは少なく、俺とカグタは床や椅子で寝ることとなった。これは牢獄に囚われていたハードとヌヤミの方が、精神的にも肉体的にも疲れているだろうから、ということで譲ったんだ。


「話したいことがある、耳だけでも傾けて聞いてくれ」


 ロウソクの灯りを消した後、みんなが眠りにつく前に、俺は口を開く。


「俺の正体は、ブレイク・カーディフとアーク・コータイガーだ」


 それを聞いて、カグタ以外の二人は飛び起き、顔を見合せた。そして暗闇の中、俺の顔を見ようと近寄ってきたが、俺は後ろを向く。


「えっ、どういうことだ、ダークエイジさんはウォーリアーズの元メンバーで、アークさんでもあるってこと?」


「そうってことよね、目が見えないっていうのは嘘だったの?」


 やはり二人は困惑している。それをカグタは、先に聞いていた余裕からか二人を落ち着かせる。


「まあまあ、慌てるな。じきに慣れる」


「ちょっと待って、貴方は知っていたのか?」


「ああ、塔の中で聞いたさ」


 少し落ち着いてきたタイミングを見計らって、話を続ける。


「俺はウォーリアーズから追放された、理由はウォーリアーズの不正の証拠を見つけたから。その日のうちに、俺はゴロツキに命を狙われ、目を切り裂かれた。だから目は、実際には見えない。しかし、特殊能力を手に入れた」


 そこから俺は、塔の部屋の中でカグタに伝えた話をもう一度、分かりやすく説明した。ウォーリアーズを追放されたところから、目を失ったこと。森をさまようと、老人に拾われていたこと。そこからカービージャンクに来て、ダークエイジとして戦い始めたこと。


 ハードとヌヤミにとって、アーク・コータイガーは一瞬だけだが家族みたいなものだった。そして突然ふらっと現れて、突然消えた、そんな不思議な存在でもあった。


 それにカールは、アークのことを大切に思っていた。だから亡くなる直前に、アークの名前を口に出した。


「アークは私たちを利用しようとしたの? 新聞屋で情報が手に入ると思った?」


「最初はそこまで考えていなかった。ただ、みんなを巻き込みたくなくて、それに目が見えないという劣等感に苛まれるのが怖くて、俺は逃げた」


 俺は地下室の戦いから少しして、カールの家との関わりを完全に断ち切った。それは、途中から入ってきたハードと自分を比べてしまったところもあるんだろう。


 それを聞いてヌヤミは理解しつつも、納得はいってないのか布団をかけてそのまま寝ようとしていた。


「すまない、今まで言えなくて」


「僕は大丈夫だ、とりあえずみんなを助けよう」


 代わりに返事をしたのは、ハードだった。そうだな、まずはみんなの救出が最優先だ。彼らにも俺の正体を伝えなきゃならない、そのためにも、まずはみんなを助けよう。


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 朝7時、俺たちは小屋を出発して、旅人が集まるようなレストランに来ていた。ここで腹ごしらえをする、向こうに着けばそんな余裕はないからな。俺は包帯を外して、青いサングラスをつけて、周りの様子をこっそりと観察している。


 すると、ヌヤミが大慌てで新聞を持って戻ってきた。


「ブレイクさん、この新聞を見て……あっ」


 そして俺が新聞を読めないことに気づいてから、その新聞をハードに渡した。ハードはコーヒーを飲みながらも、記事を読み始める。


「えっと……カービージャンクで革命が発生し、数百名が死亡。革命隊”レジスタンス”のリーダーはダークエイジとされており、モンタージュの捜査官らも革命に参加している。これを受けて治安部隊は、敵国のスパイであるダークエイジに対して最終忠告を行う……だそうです」


 くそ、奴らは事実をねじ曲げようとしているのか。俺は敵国のスパイでもないし、モンタージュの捜査官は正義を執行しているだけで反乱に協力していない。いや、治安部隊やアンチャードを正義とするなら、モンタージュやレジスタンスは悪になるのか。


「最終通告。ダークエイジよ、今日の夜までにハイディアンに設置された治安部隊本部に来い。さもなければ、レジスタンス含む捕虜全員を射殺する。彼らは敵国の傀儡と成り果てたが、ダークエイジが来るならば、無罪として解放することも検討しよう……これは、治安部隊の会長のラーズ・フェイスの言葉みたいです」


 ラーズの謎は未だに解けていないが、これは俺が今まで出会ってきたラーズが送ってきた忠告だろう。奴らはレジスタンス、そしてハイディアンにいるロナやリリーのことも殺すつもりみたいだな。


 ならば、早めに向かわないと。俺はコーヒーを一気飲みし、立ち上がって店の外に出ようとする。しかし、カグタに止められた。


「待て、先を急ぐな。俺たちがまだ食べている」


 そうだな、単独行動は止めておこう。俺たちはチームだ、一匹狼じゃ奴らは倒せない。俺は席に着き、別の料理を注文する。


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