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第83話 アンタは独りじゃない

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「数ヶ月前、俺はウォーリアーズから追放された」


 俺は覆面を取り、カグタさんに傷を治してもらいながらも昔の話をする。彼は俺の顔を見ようとはせずに、前にある傷の治療に集中する。


「部屋に帳簿があって、そこにはウォーリアーズの不正に関する証拠が書いてあった。その日、俺は寝坊して討伐に参加できなかった。だから罰として掃除をしていた時に、それを見つけた。俺は、正義感だけで彼らに証拠を突きつけた」


「それで、追放されたのか?」


「ああ、都市に証拠を突きつけようと考えていたら、ゴロツキに襲われた。帳簿を破かれ、ナイフで刺され、目を切り裂かれた。目覚めたら、診療所にいた。ショックで、俺は追放された時の記憶を失っていたんだ」


「目を切り裂かれてって、よく生きていたな」


「生きてはいた、しかし俺は視力を失った。そこから少しの間は、何も見えなかった」


 それを聞いてカグタさんは顔を上げる。そして俺の顔を見て、何かを察したのか手を止めるも、何も言わずにまた下を向いた。


「診療所を追い出され、森をさまよっていると、何かに触れて俺は気絶した。目覚めると、老人の家だった。この老人は不思議で、俺の能力……空間把握能力とエコロケーションのことを知っていた」


「空間把握能力って、見せてくれたアレのことか」


「ああ、名前の通り、どこに何があるか、誰がいるかを把握できるようになっていた。それにエコロケーション、まあ音や振動に体が敏感になっていて、音を反射させることで目が見えなくても、自由自在に動けるようになった。あと、運動能力もかなり向上した」


「アンタ、本当に目が見えないのか」


「そう言っただろう、さっきだって、ポータガルグーンの血の色が分からなかった。緑色の血だと言われるまで気づかなかった……さておき、色々とあって老人の家を追い出された後に、俺はカールに助けられた。そこから少しの間、俺はアーク・コータイガーという名前で、カールの家で暮らしていた」


 傷を縫う痛みに耐えながらも、俺は思い出を話す。カールは何者かも分からない俺を助けた、何をされるか分からないというのに泊めてくれた。あれがあったから、今の俺がいる。


「俺やリリーといったトルティラ地区の人々とウォークアバウトの繋がりは、ダークエイジじゃなくてアークだったってことか」


 彼の言う通り、俺の関係者は基本的にダークエイジではなく俺で繋がっている。ヌヤミもハードもカールもロナも、そしてリリーさんもカグタさんも、全員アーク・コータイガーをきっかけとして繋がっている。


「その時、手にした能力を使いたくて、俺は夜を走った。コスチュームを着て、悪党と戦った。そこで、カービージャンクの闇を知ってしまった。モンスターを洗脳する能力、誘拐される子供たち、ラーズ・フェイス。そしてクロガとも、最悪な形で再会することとなった」


「お前にとっては昔の仲間で、向こうからすれば敵だもんな」


「その後、ハードがナラティブから逃れてきた。デビルズオール社や治安部隊のことを知って、この闇がラーズだけでなく国全体に広がっていることを知って、少し怖くなった。しかし、俺には立ち向かう力がある、だからボルトを仲間につけて3人で戦った」


「確か、地下室の子供を助けて新聞に載ったやつか。前に見せてもらったが、とてもクールだった」


「ありがたい。しかし奴らも黙っていなかった。カービージャンクをモンスターを使って滅ぼそうとした。それが、巨人襲撃だ。この時、俺は鎧を着て、ブレイクとして巨人と戦った。奴らが宣戦布告をするのなら、俺も受けて立とうと思った」


 彼は巨人襲撃のニュースを見て、この街に帰ってきた。彼からしても巨人襲撃は、ポータガルグーンの再襲撃を想起させるもので、とても怖かったのだろう。だってモンスターが街や村を襲いに来るなんて、あまり無い出来事だから。


「それも記事で見た。その時はカルディアっていう国にいたんだが、ウォーリアーズの名前よりも先にお前さんの名前が有名になっていたぜ」


「ありがたい。巨人襲撃の少し前くらいから、俺はカールたちから距離を置いてセカンドライフを始めた。しかし、巨人襲撃で働き先が壊れてから、トルティラ地区に移り住んで、サードライフを始めた。そこで知り合ったのが、リリーさんとダイジンさん、そして貴方だ」


「そういう経緯か、というより、裏ではリリーやダイジンに”さん”を付けてるのか」


「……癖が出た。そこからマリノさんの件があって、濡れ衣を着せられた俺は独りで戦った。ボルトは都市に、ハードとは距離的に離れたからだ。魔剣四天王と戦い、武器屋から武器を借りたりもしたが、奴らは俺の目の前でダイジンを殺した」


 それを聞いて、彼はギュッと唇を噛んだ。


「そこからは貴方、カグタさんも知っている話だ。すまない、ずっとブレイクというものを隠して、偽名でみんなと関わっていた」


 すると彼は、少しだけ微笑んで返答する。


「呼び捨てでいい。俺も別の国で、カグタという名前を伏せて人々と関わっていた。状況は違えど、何となく気持ちは分かる。それに、別に俺たちを巻き込んでしまったとか、気負う必要はない」


「……ありがとう」


「組織と戦えるのは、アンタしかいない。俺たちはサポートすることしかできない、だからこれだけは言っておく。頼れ、独りで戦うな。いや、戦えないけども、とにかくアンタは独りじゃない」


「……ああ、分かった」


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