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第79話 アンチャード

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「我々はアンチャード、モンスターへの攻撃を今すぐ止めろ!」


 奴らは、モンスターを撃とうとしたカグタさんの前に立ち妨害をした。そのせいで、カグタさんは射撃の中止を余儀なくされた。何をしているんだ、奴らは。


「協力ご苦労、民間人は今すぐ立ち去れ」


 アンチャードはダークエイジ討伐のために作られた軍隊だ、そいつらが何故ここに。まあ、俺がいるからか。


 奴らは勝手にスナイパーライフルから弾を抜き、それを持っていこうとしたが、流石にカグタさんが止めた。


「俺は民間人じゃない、討伐者だ」


「我々の意志に背くつもりか」


 そしてアンチャードの奴らはハンドガンやショットガンを持って、少しずつポータガルグーンの方へ、いや、その近くにいる俺の方へと向かって来ていた。何なんだよ、こんな時でも奴らは俺の討伐を優先するつもりなのか。


「お前ら、モンスターとの戦闘経験はあるのか?」


「ダークエイジとの共闘は死刑だ、しかし今すぐ立ち去れば、見なかったことにしてやろう」


「お前ら……正気なのか」


 そうして彼は俺の方をチラッと見る、俺は何も言わずにただうなずく。


「カグタ・カンディヌ、貴様のことは調べさせてもらった。娘はダークエイジの協力者で、今も指名手配中か。何とも哀れだな」


「……ッ」


「それに、キャプロー村ではゴブリンたった三体に負けている。愚かだな、自分の不注意で雑魚のモンスターに村を滅ぼされるとは。そんな奴が、討伐者を名乗っていいのか?」


「……クッ」


「素人はここでは役に立たない。私たちに任せろ」


「……そうか」


「二度は言わない、今すぐここから立ち去れ。そうすれば、見なかったことにしてやる。聞こえなかったか、返事をしろ、哀れな素人討伐者さん」


 それを受けて、カグタさんは男の目の前に立って、こう言った。


「ファック・ユー」


「何て言ったんだ?」


「異国の言葉で『感謝します』と言った。ライフルは返してくれ、どうせ使い物にならない」


 そうして彼はスナイパーライフルを背負って、走って逃げていく。そうだ、それでいい。彼を追い払った、リーダー格の男はショットガンを引き抜き、大声で叫ぶ。


「モンスターへの攻撃を中止しろ、我々にとっての目標はモンスターじゃない、ダークエイジだ!」


 リーダー格の男の声を聞いて、アンチャードの兵士らは、ハンドガンやショットガンを構えたままこちらに向かってきている。


 人数は30人程度といったところか、巨大モンスターの討伐隊としては少ないが、たったひとりの男を倒すのには多すぎる。


 くそ、結局奴らはモンスターを討伐する気なんて更々なかったんだ。奴らの目的は、俺を殺すこと。そのためには、街を破壊するモンスターも放置しておく。


 奴らはアンチャード、対ダークエイジの軍隊にして、治安部隊の兵士で構成されている。つまり、ラーズの部下ってことだ。


 奴らにとって、この街なんてどうだっていい。ただ、俺を殺せれば、民間人が何人死のうが構わない。


 俺は崩壊しかけた家に入り、そこから二階に上がってこっそりと屋根の上へ逃げる。奴らは追いかけてくるも、早々に俺のことを見失っていた。


「出てこい、ダークエイジ!」


 身軽な俺に対して、奴らはショットガンやハンドガンを持っている。そして腰にはナイフだったり、何かポーチらしき物も着いている。だからそう簡単には登って来れないだろう。


 すると、リーダー格の男が家の前までやって来た。


「まあ待て、そう力業でやっても奴は出てこない」


「ハッ、ならどうすれば」


「まあいい、私に任せろ」


 そして奴は両手を広げて、大声を出す。


「ダークエイジ、我々は爆弾を持っている。君が出てこないのなら、ここ一帯を爆破する。モンスターが壊したことにすれば、我々の責任ではなくなる。いいか、君のせいで、逃げ遅れた人々も巻き込まれるぞ」


 くそ、最悪な脅しをしてくるんだな、奴らは。人々を巻き込んだって、奴らには関係ない。だからって、こんな非道なことができるのか。


 奴は家の中に入り、棚を漁りながら普通の声で話し始める。


「まあ、君なら知っていると思うが、あのモンスターは我々が作り出した。ダイジンの娘は、素晴らしい存在でな、私もビックリしているよ。まさか、ポータガルグーンを復活させられるとは」


 目に見えて、いや、見えなくても最悪な奴らだな。モンスターは確かに悪だ、人間を襲ったりするから。でもモンスターを兵器に使ったり、洗脳したりするお前らの方が、悪だ。


 だから俺は、路地裏にやってきた兵士の頭に向かってナイフを投げる。


 グサッ!


 悲鳴も上げずに倒れた兵士のポーチを漁ると、そこには黒い塊が入っていた。導火線らしき縄もあるし、恐らくこれが奴らの言っている爆弾なんだろう。話から察するに、威力は絶大とされる。


 俺は爆弾とハンドガンを持って屋根に戻り、爆弾を触って構造を確かめる。


 何かで直接着火して、そうすると数秒後に爆発する仕組みなんだろう。しかし、着火できるものが近くにない。ハンドガンで撃てばいいが、近すぎるし、それに火力が足りない可能性がある。ショットガンといった威力の高いもので撃てば、その場で爆発するだろう。


「さあ、ダークエイジ。まあ別に君の生死は問わないし、そこはどうでもいいだろう。だが、君が逃げれば逃げるほど、あのモンスターは暴れる。次々に被害者が増える、いいか、早く出てこい」


 奴の言っていることは一旦無視して、次に路地裏にやってきた別の兵士の頭に、また別のナイフを突き刺す。


「グアッ」


 さっきの兵士とは異なり、コイツは死ぬ前に声を出して倒れた。見つかったか、いや、人の駆け寄る様子は確認できない。黙って死んでくれた方が、個人的にはありがたい。


 俺はそいつのポーチから爆弾を取り出し、導火線を結び合わせる。そして真ん中の部分を持ち、2つの爆弾を左手に、ハンドガンを右手に持った状態で、その家から離れる。


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