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第77話 ポータガルグーンの復活

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「ダークエイジ、その傷は大丈夫なのか」


「大丈夫じゃない。カグタは?」


「ギリギリ、満身創痍の寸前ってところだ」


 俺は突き刺した剣を抜き、巨大なモンスターの体から降りる。そしてカグタさんの隣に行き、白い箱を渡した。


「おっと、弾を持ってきてくれたのか」


「ああ、他のみんなはどこに?」


「リリーとロナちゃんは南に避難、カールは確か俺の家で弾を探すと言っていた。そうだ、カールに会ったか?」


「……ああ、笑顔だったよ」


 繋がっているようで繋がっていない、そんな回答をしたために彼は、真横に立つ俺を睨んでいた。


「笑顔って、何のことだ?」


 俺は目の見えない代わりに、顔をカグタさんの方へ向ける。そして、唇をぎゅっと噛んで、意思を伝える。その意思が何となく伝わったのか、彼は拳をギュッと握り締め、怒りを顕にした。


「ファック!!」


 そして彼はスナイパーライフルに弾を装填し、あのモンスターに向かって構える。


「今のは別の国の言語で、クソとか、ちきしょうとか、そういう意味だ」


 そう説明しながらも、彼は深く落ち込んでいる。涙こそ流していないものの、必死にこらえている。俺だって同じ気持ちだ、俺だって涙を流したいさ、でもここは戦場だ。


 だから俺も彼と同じように涙を我慢して、前に立つ。そして暴れ狂う巨大なモンスターに向けて、剣を構える。


「カグタ、このモンスターの弱点を知らないか。俺なら正確に突くことができる」


「……このモンスターに弱点は無い。あっても、知らないんだ、俺は」


 どういうことだ。どのモンスターにも必ず弱点がある、あの図体のでかい巨人ですら弱点があって、巨人襲撃の時もそれで倒した。だからこのモンスターにも、弱点はあるはず。


 あいにく、俺はこのモンスターのことを知らない。見た目や色が分からないから、刺々しい形をした四足歩行の巨大なモンスターってことしか分からない。そうなると、元討伐者のカグタさんに頼るしかないが、彼でも分からないってどういうことだ。


「カグタ、このモンスターの名前を教えろ。俺なら分かるかもしれない」


「言ったところで知らないだろ」


「いいや、言ってみろ」


 すると彼は少しだけ唇を震わせた後、そのモンスターの名前を口にした。


「こいつは、ポータガルグーンだ」


 ポータガルグーンって、アイツか。数十年前にマーベラスを襲って、都市の三割を破壊した特殊なモンスターだ。そして十年前くらいに、キャプロー村を再襲撃した。


 都市によって討伐されていたはずだか、再襲撃したということは生きていたのか。都市も再襲撃の事実を隠蔽したし、何よりポータガルグーンには奴ら組織が深く関係している。


 前だって、アンチャードの本部の中で奴らは話していた。ポータガルグーンの復活だとか、巨人再襲撃だとか。


「再襲撃の時、ポータガルグーンは暴れ終わった後、そのまま海に戻った。初襲撃の際も”都市の精鋭討伐者チームが倒した”としか書かれていなかったんだよ」


 そうか、そうなるとカグタさんでも知らないか。というより、都市はポータガルグーンの存在をなるべく隠蔽したがっている。そりゃ弱点も教えないか。


 と、その時。俺はあることに気がついた。というより、思い出した。クロガの言っていた、モンスター化の薬の存在を。


「待て、マリノはどこへ?」


 この質問に、カグタさんは答えようとしなかった。

 続けて、俺は彼に尋ねる。


「さっき、クロガと話した。奴は、モンスター化の薬を打ったとか言っていた。本部でも、マリノは素晴らしい実験体だとか言われていた。それで、マリノはどこに行った?」


「それが答えだ、もう分かるだろ。ダークエイジ」


 彼は明言しなかった、とはいえ間接的にそれを述べた。


「くそ!」


 俺はその場で叫んだ。


 やっぱりだ、奴らは外道でクソ野郎共の集まりだ。奴らはマリノさんの体にモンスター化の薬を混ぜて、放置した。そして今、目の前で暴れているモンスター、ポータガルグーンは都市が深く関わっている。


 何より、カグタさんの家の損壊具合。あれは家の中から爆発が起きてないとおかしい、そんな壊れ方をしていた。きっと、カールは彼女の近くにいたんだろう。


「マリノちゃん、助けられなくてごめんな」


 つまり、ポータガルグーンの正体は、マリノさんってことだ。彼女はもう、モンスターになってしまった。


 人がモンスターになるって聞いたことがない、でも奴らがああ言ってるんだ、それは事実のはず。


 それにカグタさんは目の前で見たんだろう。彼女がモンスターになる様子を、村を襲った元凶の姿となって、暴れ狂う様を。


「カグタ、このモンスターを倒したいと思うか?」


「……あのモンスターは村の仇、とはいえ中身はマリノちゃんだ、討伐なんて、そんな残忍なこと、できると思うか?」


 そう返答されて、俺は何も言い返せなかった。

 彼はうつむき、少ししてから顔を上げ口を開く。


「……でも、俺は討伐者だ。街を襲うモンスターがいたら、人々がそれを怖く思っていたら、何が何でも俺が、この手で討伐する。それが、討伐者だ」


 彼は弾を装填し、スナイパーライフルを構える。

 それを見た俺も、グッと力を入れて剣を構え直す。


「カグタ、言い忘れていたが俺も、元討伐者だ」


「そうか、だがモンスターに立ち向かった時点で、それは”元討伐者”じゃない。お前も立派な討伐者だ」


「カグタ、覚悟は決まっているな?」


「ああ、ダークエイジ……いや、ブレイク・カーディフ。ダブル討伐者で、共に戦うぞ!」


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