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第74話 追放された真の理由

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「何って、仲間だったじゃないか、俺とお前は」


 クロガはフッと笑いながら答えた。何を言っているんだ、お前が裏切ったんだろ。


 ウォーリアーズの裏でこっそり強盗団と繋がっていたのは、カービージャンクの子供たちを誘拐したのは、巨人襲撃を起こしたのは、全てお前の方だろ。


「その目つきはよせ。ブレイクには感謝しているよ、何だってあの時、俺のことを助けてくれた」


 そう言ってクロガは俺の頭を撫で始める。噛み付いてもよかったが、クロガの優しいその手で頭を押さえつけられているような、そんな閉塞感があって俺は、抵抗せずにただ耐えた。


「あの時、俺は病んでいた。救済のつもりで、俺は子供を殺した。今考えれば、それは正常な行動ではなかった。戦闘員を辞めて、俺は行く場所がなかった。その時、お前も辞めて一緒に来てくれた。感謝している、あのままだと俺は死んでいた」


 別にお前と一緒に居たいから辞めた、とかそんなんじゃない。俺も潮時だなと思った、このまま戦闘員で人と戦っていても、いずれはクロガのように病んでしまうと思った。だから、お前と同じくらいに辞めた。


 辞めてから半年くらい経った時か、戦争も終わって職を失っていた時、都市がモンスター討伐のパーティーの復興を推進していて、そのパーティーのメンバーを募集していたから、戦闘経験のある俺たちはそこに加入した。


 クロガはモンスターに両親を殺された、だからモンスターを恨んでいた。パーティーに入るにはちょうどいい理由でもあった。俺はそこに着いていっただけ、職が貰えれば何でも良かった。


「だが同時期に、戦闘員時代の成績を見たラーズ様が俺に声をかけた。その時はウォーリアーズに入っていたが、御方はそれを許容した。そこから俺は表でモンスターと戦い、裏では人と戦った。楽しい日々だったよ、体が満たされていく感じが」


 クロガはベッドの横で酒を飲みながら、話を続ける。そうか、ウォーリアーズ結成当時からお前はラーズの配下だったのか。そして俺はその時から追放されるまでずっと気づかなかった、ということか。


「ある時期、俺は見切りをつけなきゃならなくなった。どちらかとお別れしなくちゃいけなくて、俺は最初、ウォーリアーズに残ろうとした。しかし、御方はそれを許さなかった。当たり前だ、当時の俺は未熟だった」


 クロガは酒を飲み干すと、別のボトルを開け、ラッパ飲みした。血と酒の匂いが混ざると、こんなにも気持ち悪いか。さっき肉片をたくさん吐いたというのに、また吐きそうだ。


「ある日、アジトに帰ってくるとお前が帳簿を持って騒いでいた。そこにはマルゲリタとかハルメールの名前が書いてあった。驚いたよ、そんな帳簿を書いた覚えはないからな」


 何を言ってるんだ、確かに帳簿は置いてあった。マルゲリタもラーズがリーダーを務めてる強盗団だし、ハルメールは都市の名前だし。帳簿を見せたらお前は明らかに動揺して、挙句の果てに俺をパーティーから追放した。


 あの時、俺は倉庫を掃除していた。確か俺が寝坊して、ちょうど4人がモンスター討伐のために外に出かけていた時だったか。


 今でも覚えている、確かあの時、凄い怖い夢を見て、それで朝起きてしまって、二度寝したらあの時間だった。そのせいでモンスター討伐には間に合わず、寝坊した人への罰として設定されていた倉庫の掃除をやっていたら、帳簿を見つけた。


「帰ると、お前の様子がおかしかった。帳簿とか、不正だとか騒いでいた。俺も何を言っているか分からなかったが、何故か残りの3人は口裏合わせて『知らない』とか言い張った。そう、3人はラーズ様に買収されていた」


 くそ、この時点でウォーリアーズの俺以外全員がラーズと関わりを持っていたのか。パニッシュ、コロネ、ハルート、アイツらは元々チンピラで浮浪者で、ウォーリアーズの前身のソクザというパーティーは、100年前に活躍していたパーティーの名前をパクったものだった。


 まあ、なんというか、アイツらも買収されていたというのがムカつく。そこまでしといて、何でラーズは俺とは関係がなかったんだ。


「その時、コロネが小さな紙を渡してきた。そこには『セリフを読め』と書いてあった。そして小さな文字で『ブレイク、お前をパーティーから追放する』とも。ああ、こういうことかって、全てを悟ったよ」


 あの時、クロガが俺を追放したのは、コロネを通したラーズに指示されていたからだったのか。これでハッキリした、奴らは俺をウォーリアーズから追い出したがっていた、ということ。どうにかして、俺とクロガを離したかったんだな、理由は何となく分かる。


「俺はお前とは生きられない、そういう人生を選んでしまった。お前がアジトを出た後、ラーズ様はアジトに赴き、お前を直々に殺すよう俺に命令を下した。俺にとって、お前は親友だ。でもその時のお前は帳簿を持っていた、もしその証拠を都市に突き出せば……俺じゃなく、お前が死んでいた。都市もラーズ様の支配下にあるからな」


 ああ、それは危なかったな。というより、マーベラスもラーズが支配しているのか。強盗団のリーダーなのに、何でここまで力を持っているんだ。


「俺の手でお前を殺す、これが最大の救済だと思った。だからお前の近くまで行ったんだが……やっぱり怖くなって、他の兵士に任せた。そこからは、知らないんだ。死体は森に放置した、と聞かされた時は泣いてしまったよ」


 本来だったらクロガが俺を殺す予定だったのか、しかもそれが最大の救済って、あの時からお前は何も変わってないな。


「巨人襲撃の時、ブレイクと名乗る男が巨人を倒した。そこで俺は嬉しくなったよ、お前はまだ生きていたのか、って。でもお前は組織の不正をバラそうとした裏切り者だったから、素直には喜べなかった。そして今も、お前はダークエイジとして、組織と戦っている」


 俺は帳簿を持ち出して、不正を暴こうとした。しかし帳簿は破り捨てられ、兵士に殺されかけた。その後に能力を手に入れてからも俺は、この力で不正を暴こうと戦っている。


 いい意味でも悪い意味でも、俺もお前もあの頃から変わってない、というわけだ。


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