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第73話 正体発覚

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《数年前 とある小国にて》


「クロガ、お前は右から、俺は左から行く」


「了解、ブレイク」


 戦闘員としてマックスフューと戦争中の小国に配属された俺とクロガは、都市の兵士を片付けた。マックスフューは侵略戦争を行っていて、こんな小国も例外ではなかった。


 しかしここは飛び地だ、領土が隣ならまだしも、こんなところを侵略したいなんて、マックスフューも狂ってる。


 今回のミッションは、都市の兵士を抹殺した後、残された民間人を保護する、というものだ。それもこの小国は戦争に負けそうである。物資も足りていない、だが戦争に負けたくないからか次々に民間人を兵士に仕立て上げている。


 そういう負の連鎖は止めるべきだ、だから民間人を保護して捕虜とすることで、兵士にさせずに生かす。子供に武器を持たせるわけにはいかない、狂ってるマックスフューでも相手の国の子供を気遣う余裕はあるみたいだ。


 それで俺たち2人は、民間人の保護に回っている。兵士はもう片付けた。しかし残された民間人はまだ戦おうとしている、だから俺とクロガが殺さない程度に戦い、彼らを保護する。これは俺たちが優秀だからと任されたミッションだ。


 挟み撃ちなら、彼らも抵抗しないだろう。そう読んで、俺とクロガは分かれた。しかし、これが過ちだった。俺とクロガが分かれてから数分後、建物の中から悲鳴が聞こえた。


 急いで向かうとそこには、返り血にまみれたクロガが立っていた。足元には民間人の死体が。クロガの手には、ハンドガンが握られていた。


「まさか、殺したのか」


「いや、違う。アイツら、自殺したんだ。俺が来て、抵抗できないと知って」


 よく見ると、足元に転がっている死体の手には鉄砲が。彼らは抵抗ではなく、自死を選んだのか。こんなこと、初めてだ。最後まで戦う兵士が多かった中、彼らは死ぬことを選んだっていうのか。


 クロガは落ち着いていなかった。今までたくさん人を殺したというのに、遺体を見るのは初めてじゃないというのに、クロガは震えていた。


「おい、クロガ。大丈夫か、俺を見ろ」


「何でそんなに落ち着けるんだよ」


「俺だって怖いが、ここは戦場だ。今は落ち着け」


 俺はクロガを抱き締め、無理やり落ち着かせる。人に包まれたクロガは少しずつ、震えが落ち着いていった。ここは戦場だ、そういう切り替えをしないと殺される。


 と、その時。部屋にあったロッカーの中から音がした。急いで開けてみると、そこには子供が2人いた。大人たちが隠したんだろう。


「おい、怪我はないか?」


「gdmng,hlpy.mama.papa」


 くそ、言語は通じない。でも、何となく言っていることは分かる。助けを求めているんだろう、自分の両親に。ただ、残念ながら母親は死んだ。自殺したよ、父親は知らない。


 俺は彼らを抱え、下に連れて行こうとした。その時、何故かクロガが止めて来た。


「彼らの両親は死んだ、彼らは生きていても仕方ないだろう」


「……何を言っている」


 子供たちは俺のことを怖く思ったのか、腕に噛みついてきた。そして腕から離れて、扉の方へ向かっていく。それを見た、涙ぐむクロガは目をつぶり、ハンドガンを左手に持って、そして、引き金に手をかけた。


 バンッ、バンッ!


 クロガの撃った弾によって、子供たちは死んだ。銃弾が脳を貫通していた、即死だった。あまりの衝撃に、俺はその場で倒れそうになった。反対にクロガは、ハンドガンを構えたまま立ち尽くしている。


「何をした、クロガ!」


 すぐに俺は、クロガの胸ぐらを掴み、怒鳴った。

 しかしクロガは、動かずに返事をする。


「これで、彼らは救われた」


「何を言っている」


「ブレイク、お前は生に固執している。死は救済でもあるんだよ、彼らは生きていたとしても、マックスフューで捕虜として生きるのみ。彼らは、ここで死んだ方が幸せだ。死後の国で、両親に会える」


 その後、発砲音を聞いて戻ってきた作戦長が子供たちの死体と、ハンドガンを構えたまま立っているクロガを見て、全てを理解したかのように俺たちを拘束した。戦う意志のない民間人や子供を殺すのは、違法だ。


 何故クロガは子供たちを殺したか、まあ、簡単に言うとクロガは病んでいた。戦いに体は慣れても、精神が慣れなかったんだろう。その後、クロガは戦闘員を辞め、俺も後を追うようにして辞めた。


 戦闘員で好成績を残したとしても、実戦で使い物になるかは分からない。まあ、色々とあってその後は討伐者となった。変な浮浪者が集まって作られたパーティーを乗っ取って、ウォーリアーズを結成した。


 精神的に病んでいたクロガは、討伐者としてモンスターと戦えば戦うほど、病みから解放された。何故ならモンスターは完全な悪だから、同じ人間じゃない。罪悪感とかも無かったんだろう。


 いわばモンスターは、人類の共通敵だ。


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《現在 セオリー地区のモンタージュ施設内》


「……ここは?」


 俺は、ベッドの上で目覚めた。さっきまで地下室で戦っていたはずなのに、どうしてここに。診療所か、それにしては暗い。カーテンがかかっているのか、聴力がまだちゃんと復活していないから、どこにどういう物があるか上手く掴めない。


 でも、この空気からしてモンタージュの施設内ではあるんだろう。冷えた、残酷な空気が流れている。そして何より、側には人がいるみたいだ。男か、この身長は。


「見事だったよ、ブレイク」


 その声は、クロガか。急いで立ち上がろうとしたものの、思うように足が動かず起き上がることすらできなかった。不思議なことに、クロガは戦う意志を見せずに、俺の体を支えようとしてくる。


「おっと、無理をするな」


「何のつもりだ、クロガ」


「そんな目つきをするな、前まで仲間だったじゃないか……というか、目は見えてないな。どうやってあそこまで戦えるようになった?」


 くそ、もうダークエイジという仮面は脱ぎ捨てられたみたいだ。それどころか、目が見えないことまでバレてしまった。目に光を当てても反応がなかったから、ということだろう。


 あいにく、聴力はまだ完全に回復していない。クロガの声は聞こえても、周りに何があるかとか、部屋の外の状況とかは分からない。それに足もまだ動かせない、というよりは全身が軽く痺れている。反抗は無理だな。


 それにしても俺の全身に包帯が巻かれている、それは何となく分かる。それに、俺はベッドで寝かされていた。まさか、クロガが助けたのか?


「何のつもりだ、クロガ」


「何って、仲間だったじゃないか、俺とお前は」


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