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第70話 ダークエイジの正体

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「ダークエイジ、お前の正体についてここまで何も言及されてない。お前はどうしてここまでして戦うんだ、お前も治安部隊に何かを奪われた立場なのか?」


「……関係ない」


「ナイフで刺されてまで戦う意味はあるのか。俺はある、俺は友達の死を偽造されたことと、都市の対応が許せない。ダイジンの死を、治安部隊のエサとして利用されたくないんだよ」


 カグタさんは都市の対応にずっと苦しめられてきた。そして今も、ダイジンさんの死を通してまた苦しめられている。彼はダイジンさんを殺した真犯人を裁きたいんだろう、だから戦っている。


 俺の戦う理由、それは、何なんだろう。いつも考えているが、きちんとした答えは出ていない。答えを出しているように見せかけているだけ、自分の中でもまだ納得はいってない。


 俺はウォーリアーズを追放され、殺されかけた。そいつらを殺したいからか、いや、復讐したい。復讐なんて甘いな、もっと痛めつけてやる。そして、必ずこの手で殺す。ラーズも、治安部隊も、デビルズオール社も、マックスフューも。


 そのために、俺はダークエイジでいなきゃいけない。アーク・コータイガーにも、ブレイク・カーディフにもできないことを、俺はやっている。ダークエイジで居続けるためには、正体を隠すしかない。


 だって俺は、表の立場では無力な人間なのだから。ダークエイジとしてじゃないと、何もやってこれなかった。巨人を倒した時も、俺は仮面を被っていた。何かで自分を誤魔化してないと、俺は何もできないのかもしれないな。


 だから、俺は答える。


「俺の正体は、まだ言えない。話すのは、ヌヤミとハードとボルトが来てからだ」


「……そうか、しかしボルト捜査官は1ヶ月間戻ってこないんだろう。それに二人は捕まった」


 ボルトは捕まったのではなく、優秀な捜査官として都市の中心部にて表彰されている。そのため、1ヶ月くらいはカービージャンクに帰ってこないと言っていた。しかし、このタイミングであることを見るに、これも奴らの仕業だろう。


 奴らは俺がハードやボルトと組んでいることを知っていたはずだ。だからボルトを都市の中心部に送り、ハードを捕まえることで協力者をなくした。こうすれば、ダークエイジを孤立化できると思ったんだろう。


「ボルトは中心部にいるが、ハードとヌヤミはまだカービージャンクの牢屋に囚われている。じきに、彼らは都市に輸送されるだろう。それまでに、脱獄させる」


「カービージャンクの厳重な牢屋だとすると、セオリー地区のモンタージュ施設の地下に、極悪人用の牢屋があるはずだが、どうするつもりだ?」


「簡単だ、強行突破で行く」


「……無茶ですよ、計画が」


「大丈夫だ、今日の朝に行く。カグタとカールはこの家を守れ、絶対に誰も入れるなよ。そしてカグタは、対モンスター用の近接武器をいくつか貸してくれ。ナイフも何本か欲しい」


 俺はカグタから渡されたナイフを腰や太もものベルトに差し、二階へ向かう。するとカグタは心配なのか、階段を昇って着いてきた。


「無茶な作戦だ、何もかも唐突で危険すぎる」


「……今から、カグタにだけ秘密を教えよう。そうだな、昨日の夜はスープを飲んだな。昼も、同じスープしか飲んでないな。焦りから脇汗をかいていて、着替えたいが服がなくて困っている」


「……どういうことだ」


「今、一階でマリノが歩いている。そして、リリーと話している。ダークエイジがまだ怖いそうだ。カールは便所へ、ロナは部屋の明かりをつけようとしている。続けるか?」


「……奇妙だな」


「俺は能力を持っている。まあ、実演した通りだ」


「俺たちにもできることはないか? 例えば記事を書くとか。俺は記者だし、ウォークアバウトの編集者と印刷のできるロナちゃんがいれば、真実を広めることだってできるぞ」


「まだその時じゃない、タイミングを間違えれば俺たちは殺される。今はこの家を守ることだけに集中しろ、あまり家から出るな。戦えるのは、カグタだけしかいない」


 それだけ言って、俺は二階の窓から飛び降りた。セオリー地区はトリロジー地区の東側にある小さめの地区だ。そこにはモンタージュの施設もあるが、まさか凶悪な犯罪者を捕まえる牢獄があるとはな。ダークエイジの協力者となれば、そこに捕らえられているに違いない。


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 日が昇り始めたくらいに、俺はセオリー地区のモンタージュ施設に着いた。ちょうど交代の時間なのもあって、警備は少しだけ薄くなっている。


 4……8……7……6……カチャッ!


 いつものように音を聞き分けて扉を解錠し、中に入る。受付に人がいないのは能力で分かっている。


 恐らくここはモンタージュの施設というよりは、凶悪な犯罪者の牢獄施設をメインとしているんだろう。受付どころか一階には捜査官の姿が確認できない。


 階段を下りた先には壁しかなかった。恐らくだが、ここにギミックが隠されている。空気の流れからして、地下室の扉は固く閉ざされている。音も聞こえないから中に何人いるかも分からない。ただ、指を当てるとかすかに揺れることから、中で歩いている人がいるのは分かる。


 横の壁に耳を当てると、歯車みたいなものが動く音が聞こえた。やはりな、そうするとこの扉のギミックはここにある。階段を歩くと、ひとつの段だけズレがある。


 カパッ


 そこを外してみると、ボタンが隠されてあった。そのボタンを押すと、ゴゴゴと轟音を上げながらゆっくりと扉が開いていく。先に進めるようになったのか、俺は外した段を持ったまま前に進む。


 奥には15人ほどいる、それも特殊な鉄砲を持っていることから、既に治安部隊の根回しが終わっていることが分かる。そりゃそうか、ハードとヌヤミは奴らに捕らえられたからな。


 牢屋にも何人もいるが、奴らのうちの一人は牢屋の中の男に向かって話している。曲がり角を二回曲がれば、牢屋に辿り着く。しかしそこには15人ほどの兵士が集まっている。ナックルダスターはニュークの体に刺さったままで、回収できていない。


 よって手元にある武器は、何本かのナイフと腰に差していた金属の杖と、手元にある階段のレンガのみ。相手はハンドガンにショットガン、こんな狭くて薄暗い廊下だったら、一方的に撃たれて終わる。それでも立ち向かっていかないと、それに、俺には特殊能力がある。


 深呼吸をしながら一つ目の曲がり角を曲がる。次を曲がったら、奴らがいる。まだこちらに気づいていないため、警戒している様子はない。


 ならば、まずは声を上げてこっちに注目を集めて、そしてレンガを投げて分散させつつ、下に避けて滑り込むしかない。


 よし、準備はできた。行くぞ。


「ヴオオオオオオオオオオオオ!!!」


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