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第69話 治安部隊の裏の顔

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「それで、この方たちは?」


 日が昇るより前に、俺たちはカグタさんの家に着いた。俺はいつものように二階の窓から戻ったから、たまたま廊下を通りかかったリリーさんに驚かれた。何で玄関があるのに上から入ってくるの、と怒られたりもした。それは無視して、俺は玄関の扉を開けて、ロナとカールを入れた。


「おい、ダークエイジ。聞いてるか、この方たちは誰なんだ……って、怪我は大丈夫なのか?」


 カグタさんは勝手に家に人を入れられたからか、少し苛立ちを見せつつも、それはそれとして傷ついている二人を見て傷の手当てを始めようとしていた。


「リリー、マリノを起こして来い」


「何で指図されなきゃいけないんですか」


 そう言いつつもリリーさんは、嫌々ながらもマリノさんを起こしに言った。仕方ない、ダークエイジのこういう口調が、こういう格好をしている時には合っているんだ。


「それで、連れて来ましたよ」


「そうか。なら、今から真実を教えよう」


 俺は部屋の明かりを消して、暗い空間で話を始めようとしたが、その前にカグタさんに質問された。


「で、まずこの御二方はどなたなんだ?」


「今から説明する」


「俺からも質問で、この方たちは誰なんだ?」


「それも、今から説明する」


「ちょっと待って、ビアスは結局何者なの?」


「次々に質問するな」


 あまりにも疑問点と説明することが多すぎて、説明する前なのにみんな混乱しているのか質問してくる。


 俺だって混乱しているさ、ダークエイジとポータガルグーンのせいで、普通に生きていたらまあまあ関わりのない二つの家族が交わりかけているんだから。


 少しでも分かりやすくするため、俺は部屋の中心に椅子を円形に置き、そこにみんなを座らせた。座る順番は右回りに、俺、カール、ロナ、リリーさん、マリノさん、カグタさん。この方が話を整理しやすいだろう。


「まずはカービージャンクの南部に暮らしているロナとカール、彼らはウォークアバウトという新聞を書いている。分かるだろう、突然、しばらく休むと書いてあったところだ」


「おお、俺たちの新聞を読んでくれているのか」


「まあ、そうだ。休んだ理由は明らかになっていないが、ウォークアバウトには他に二人の記者がいる。それがカールの妻であるヌヤミと、旅人で記者でもあるビアス。二人はダークエイジに協力していたとして捕まったが、実は違う。ヌヤミはただの記者だが、ビアスには裏の顔がある」


 その言葉を聞いて、ロナとカールの心拍数が上がった。彼らからすればビアスは、突然家に押しかけてきた謎の記者である。好青年で、多言語を扱えること以外は、かなりの不審者だった。そのビアスに裏の顔があると聞いて、思うところがあるんだろう。一緒に生活をしてきた仲でもあるし。


「ビアスは、隣国・ナラティブから逃げてきた。まず、治安部隊の裏の顔について話そう。治安部隊は、治安を守る組織じゃない、ある闇の組織の傀儡に過ぎない」


 そこから俺は、自分が知っている情報を全て話した。マックスフューのデビルズオール社がナラティブの治安部隊を買収し、ビアス、いや、ハードはそいつらに追われていること。ボルトというモンタージュ捜査官の協力者と共に、一度は奴らをこの街から退けたこと。


 この街で生まれた子供には特殊能力があり、巨人襲撃もそれによって起こされたこと。マリノさんはそれで追われていることも、ポータガルグーンについても話した。カールはポータガルグーン再襲撃の話を一切知らなかったため、都市に対しての怒りを顕にしていた。


 ハードは情報を知るために、ウォークアバウトの記者となった。ダークエイジの協力者ではあったが、隣国のスパイなどではない。むしろ彼も被害者だ、巻き込まれてしまったヌヤミは特に。


 そこから、ラーズ・フェイスのことも話した。奴が強盗団を牛耳っており、治安部隊は奴の傀儡であること。マックスフューとデビルズオール社とラーズの繋がりは未だによく分かっていないが、説明できることは全て説明した。奴らが起こしたいであろう、モンスター大戦についても。


「ほう、何となく分かった。その武器屋襲撃や、パン屋襲撃を起こしたのは別の強盗団で、アンタは濡れ衣を着せられているってことか」


 カールは頷きながらも、まだ何かモヤモヤが残っているのか、腕や足を組み直したりしている。


「そうだ、捜査官を殺したのは事実だが、奴らは治安部隊のスパイだった。パン屋のダイジンや武器屋のマーティンを殺したのは、ラーズの部下のニュークという男だ」


 そしてそこから、俺は誰にも話したことのない事実を語り出した。それは、ウォーリアーズについて。ウォーリアーズは世間にとっては、マーベラスの中心部で活躍している討伐者パーティーだろう。しかし、実態は大きく異なる。


「奴らは、特にリーダーのクロガはラーズの配下だ。奴と何回か対話したが、奴は正義の心など忘れていた。ウォーリアーズも、不正を働いていた」


 それを聞いたみんなは、そんなことはないと言わんばかりに首を横に振っていた。しかし、それは事実なんだ。ウォーリアーズは、強盗団マルゲリタと何らかの関わりを持っていた。それは、俺が持っていた帳簿に書いてあった。


 実際にラーズとクロガが共にいる場面を何回も見てきたし、巨人襲撃の時もクロガは森の中にいた。奴は討伐者なんかじゃない、むしろモンスターを兵器として利用しようとしている。


「いや、でも、私は一回だけ見たよ。クロガさんがゴブリンを倒しているところ。トリロジー地区の噴水のところで」


「それは、奴らのパフォーマンスに過ぎない。前にあったウォーリアーズ活動休止は、巨人襲撃の際に助けに行けないアリバイを作るためだ。巨人襲撃で世間がウォーリアーズを求めた頃に復活する、そういうロジックだったんだ」


 ウォーリアーズは俺以外、みんな不正について気づいていた。だから追放して、俺を抹消しようとしたんだ。奴らもラーズの配下ってことだ、めんどくさい奴らだな、本当に。


「これで説明は終わりだ。質問があったら手を挙げろ、その後に話してくれ」


 すると、カグタさんが手を挙げた。


「なるほど、これで本当に説明は終わりか?」


「ああ、そうだ」


「まだ話してないことがあるだろう」


「……何だ?」


「ダークエイジ、お前の正体だ」


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