表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/151

第68話 祖父の死の真相

----------


「……どうなってんだ」


 ウォークアバウト、つまりロナの家に着くと、そこには人だかりができていた。野次馬なのか、群衆は家を取り囲むようにして、叫んでいる。


「ダークエイジを殺せ!」

「ダークエイジの味方め!」

「早く出てこい!!」


 なんと群衆は、ロナの家に石を投げていた。誰も止める者はいない、ここにいるみんながニヤニヤしながら、そして悪意に満ちた声で叫びながら石を投げている。二階の窓ガラスはもう割れており、石が中に入っていくのが見えた。


 中にはまだ人がいる、まさかコイツらは中に人がいるのを知ってて石を投げているのか。恐らくだが、中にいるのはカールとロナ。ここからでは見えないが、二人は二階の窓から離れて、奥の部屋に隠れている。


 くそ、何があったんだ。ヌヤミとハードはどうした。ここまで群衆が怒っていて、しかもダークエイジの名を叫んでいる。そうなると、また奴らが介入したのか。それも、ウォークアバウトに。何故だ?


 今の俺は、普通の服を着ていて杖は隠している。また目を包帯で巻いていないため、傍から見れば普通の人間に見える。決して、盲目の人には見えないだろう。


 俺は石を投げることもせず、遠くからただ見ているだけの人に話しかけた。


「これは、何があったんです?」


「知らないのか?」


「ええ、まだ新聞を見てなくて」


「ここの新聞屋、ダークエイジの仲間だったんだよ」


 どういうことだ、確かにハードは俺の仲間だった。しかしビアスは、一人の記者としてここで働いていた。それにヌヤミは何も関係ない、彼女はむしろダークエイジの存在を良く思っていなかった。どういうことだ、何があったんだ。


 続きが気になりつつも聞きたくない、そういう表情を隠しながらも、俺はおそるおそる尋ねた。


「……というと?」


「ウォークアバウトに敵国のスパイがいたらしいよ。ダークエイジはどうやら、ナラティブのスパイらしい。だからダークエイジは狂った犯罪者じゃなくて、敵国のスパイ兵器だったんだよ」


 くそ、つまり奴らはハードの存在に気づいていて、あえて泳がしていたのか。いや、クロガはそう言っていたな。あの時にハードを捕まえなかったのは、ハードの居場所が分からなかったからではなく、ダークエイジの評判が落ちたタイミングを狙っていたからなのか。


 何よりも、奴らは問題を大事にしたがっている。何だ、敵国って。まさか、ナラティブを敵国だと言っているのか。そしてダークエイジは敵国のスパイ兵器だと、ふざけるな。俺は自分の意志で戦っているというのに、その意志を勝手にねじ曲げられている。


 ああ、そうだ。奴らはモンスター大戦を企んでいた。戦争を、人間ではなくモンスターにさせる。つまり、モンスターを洗脳させて他の国を侵略するということだ。


 奴らは、その計画の着実に進めている。今回行ったのは、疑惑を作って世論を一体化させることだ。早く阻止しないと、世界を巻き込んだ戦争が起こる。


 俺はその通行人に一礼をして、路地裏へ向かった。

 そして周りに誰もいないことを確認し、そのまま一気に屋根の上へ登る。


----------


 真夜中、流石に体力が尽きたのか、群衆はロナの家から離れて帰っていた。残されたロナとカールは、グチャグチャになった部屋の中を掃除しながら、嘆いている。後悔の念も含まれているのか。


「何で、こんなことになったの」


「分からない。ビアスが関係していること以外は」


「あの人は、ダークエイジの仲間だったの? 私たちは騙されていたってこと?」


「分からない。とにかく、今は店を何とかしよう」


 割れたガラスを掃除しているからか、手には小さな破片が刺さっており、傷だらけになっている。この二人、何も聞かされていないのか。ならば、伝えるしかないか。この世界の真実を。俺は屋根を伝って、二階の窓から部屋に侵入する。


「……誰だッ!」


 廊下から来たのは、ホウキを構えたカールだった。続いてその後ろからロナも、彼女はとても怯えている。


「新聞屋なら分かるだろ」


「まさか、ダークエイジか!」


「ああ、そうだ」


「……よくも、敵国のスパイめ!」


 彼は動揺しているのか、ホウキを持って殴りかかってきた。それを俺は避け、ホウキをへし折ってから床に捨てる。


「俺はマーベラス出身だ、ビアスはナラティブ出身だが、彼はスパイではない。全て仕組まれていた」


「……何を言っている」


「これも、都市の隠蔽体質の仕業だ。ビアスとヌヤミが捕まったのも、俺が世界の敵となっているのも、カービージャンク北部が封鎖されているのも、全て都市が裏で動いている」


「……”これも”って」


「お前の祖父の死の真相、知りたいか?」


 その言葉を聞いて、カールはハッと目を見開いた。彼の祖父はポータガルグーンの襲撃で命を落とした。その時も、都市の対応が酷かったらしい。ポータガルグーンの襲撃にはラーズが関わっていて、連中はポータガルグーンの復活を願っている。


 つまり、ポータガルグーンを通して事件は繋がっているということだ。


「……知りたい」


「お、お父さん!」


「……ビアスとヌヤミが捕まった理由も知りたい」


「ダークエイジのことを信用するつもり?」


「……このまま石を投げられ、泣き寝入りできずにこの家に篭もる生活を続けたくはない。ダークエイジ、真実を教えてくれ」


 そうして彼は頭を床につけた。頭を下げられるのは、自分にとってとても違和感があった。だからすぐに起こし、小さな声で囁く。


「ならば着いてこい、全てを話す」


----------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ