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第65話 唯一の協力者

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「隙あり!」


 俺が横を向いた瞬間、奴は毒のついたナイフを振り下ろしてきた。くっ、この体勢であの速さだと避けることはできない。そうなると、力任せに行くしかない。


「ふんっ!!」


 俺は両手で奴の下ろした左腕を掴んだ。奴は両手にして力を入れてグッと押し込むが、俺は膝を着きながらもとにかく耐える。力を込めれば込めるほど、刺された腕が痛むがここは耐えるしかない。


「ダークエイジ? どうした、弱っているのか?」


「だ、黙れ!」


 こうしている間にも、さっきの割れた窓から何者かが侵入して来ている。誰だ、別の部隊の兵士なのか。この状態で逃げる術はない、今逃げたらマリノは誘拐され、リリーさんは殺される。絶対に、ここで勝たないとダメなんだよ。


「ぐっ、ああっ!」


「はっはっはっ、もう少しで刺さるぞ」


 こうして苦しめられているその時だった。


 バンッ!!


 パリンッ!!


 何者かによって、目の前で俺にナイフを刺そうとしていたニュークの頭に弾丸が撃ち込まれた。


「あ、あれれ、あれれれれれれ。何でだ、何で私は撃たれたんだ」


 奴は自分の頭を弾丸が貫通したことを、頭から垂れる血を見て初めて理解したのか、変な様子で怯えている。そして奴はあまりの衝撃に毒付きのナイフを落とした。よし、今がチャンスだ。


「うおおおおおお!!」


 俺は毒付きのナイフを拾い、奴の心臓に強く突き刺す。そしてすぐに、留め具を外したナックルダスターを思いっきり奴の頭部に突き刺す。勢いそのままに飛び出した4本の刃は、奴の頭に深く刺さっていく。それだけじゃ終わらない、俺は奴の胸ぐらを掴み、背負い投げをする要領で、奴の頭を地面に思いっきり叩きつける。


 ドンッ!!


 そして横たわる奴の体をうつ伏せにし、背中の上に乗ってナイフで奴の手を固定する。こんなに頭を傷つけられても、心臓に毒つきのナイフが刺さっていても、まだ奴は生きている。流石に反撃する力はないのか、治癒能力に意識を向けているのか、いずれにせよ奴はまだ生きている。


「あがが、やるじゃないか、ダークエイジ」


 奴は傷ついた口を先に修復させ、語り出した。余っているナイフで口を刺そうとも思ったが、話を聞きたいのと逃がさないために、そのナイフは奴のケツに刺した。


「お前にも協力者がいたとはな」


「協力者?」


 そうだ、奴をスナイパーライフルで撃った男、アイツは一体誰なんだ。そう考えていると、背後から一人の男がやってきた。男は帽子を深く被っており、顔は見えないが高身長で、とても冷静な精神状態のままスナイパーライフルを構えている。


「助けに来たぞ、ダークエイジ」


 背後に立った男は口の前に人差し指を持ってきて、シーっというジェスチャーをした。ここで、彼の正体が分かった。顔は見えないが、俺には分かる。スナイパーライフルで頭を撃った男の正体、それは。


「ぐっ、くそ!」


 奴は最後の力を振り絞って起き上がり、俺を蹴って割れた窓から逃げ出した。くそ、まだこんな力が残っていたとは。すぐに駆け寄るも、外には誰もいなかった。逃げられてしまったのか、あんなにナイフが刺さっているというのに歩けるとは、もはや奴はモンスターだな。




「逃げられたか、とにかく今はマリノちゃんとリリーを救うんだ。協力してくれ、ダークエイジ」


 そう、安定した精神状態で一切の狂いもなく、スナイパーライフルで奴の頭を撃った男の名前は、カグタ。リリーさんの父親にして、元討伐者だ。


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 その後、俺たちはカグタの暮らす二階建ての大きな家に向かった。トルティラ地区から離れていたため封鎖されていない。それに外部との交流を一切行っていないから、こうやって真夜中に人を連れ込んできても何も言われない。まあ一軒家だし、自由度は高いか。


 カグタは対モンスター用のスナイパーライフルでニュークの頭を撃ったらしい。人間にも効果的だが、モンスター相手だとかなりの威力を発揮する。ニュークはモンスターと合体しているし、それで深い傷を負ったから逃亡したのか。


 治安部隊の兵士の監視を、俺の能力でくぐり抜けて無事にマリノさんを運ぶことができた。明日になれば奴らも犯行に気づくだろう。ただし、ニュークは生きている。魔剣四天王の一人と言っていた、これはまた厄介な存在だな。


「お前はマリノちゃんを頼む。俺はダークエイジの傷を縫っておく」


 カグタはそうして、俺をソファに座らせた。彼は何故か、心拍数が安定している。この俺、ダークエイジを前にして緊張していないのである。普通はリリーさんのように怯えるはずだ。彼女はガタガタと肩を震わせ、少しずつ呼吸が荒くなっていく。


 しかし彼は、まるで変わった人間の対処は慣れているかのように、俺の肩の傷を縫っていく。彼は知らないのか、知っているだろ、ダークエイジの存在を。


「なあ、昔話をしてもいいか?」


 彼は、俺に聞いてきた。不思議な質問だったが、痛みをこらえるためにも、俺の心の底にある不安を抑えるためにも、一旦は聞くことにした。


「ああ、話してくれ」


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