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第63話 君はもう用済みだ

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 明かりもついてない夜の診療所で、とある少女が眠っている。彼女はつい最近起きた強姦事件で、心と体を痛め、診療所に入院していた。しかし父親が亡くなり治安が悪化したことにより、その地域は一時的に封鎖されることとなった。


「マリノ、もう少しで捜査官の方々が来るからね」


 診療所にいるのはその少女の友達と少女のみ。医者や看護師は資料や荷物を置いて出ていった。仕方ない、これも命令なのだから。反対に友達だけ残ることができた。理由は、よく分からない。


 だから彼女の友達は逃げずに、彼女の近くにいる。


 コンコンッ


「はい、今開けます」


 ガチャ


「……貴方たちは?」


「驚かないでください。我々はアンチャード、ダークエイジによる民間人への加害を防ぐために結成されたチームです」


 眼鏡をかけた老けた男は、奇妙な笑顔をしたまま部屋に入っていく。


「そ、そうですか」


「さあ、マリノさんを引き渡してください。彼女はこれより、ダークエイジの被害者で唯一の生存者として、我々の管理下となります」


「……マリノは私たちの家に帰ります」


「何を言っているんですか、彼女の父親は死にました。彼女には居場所がありませんよ」


「……私の家があります」


「貴方の家も封鎖地帯の中です。貴方も居場所がありませんな。そうですね、貴方も来てくれませんか」


「……」


「さてと、よしお前ら。目標の拘束を始めろ」


「……えっ、拘束って」


 鉄砲を持った数々の兵士は、彼女を叩き起こし、無理やり運ぼうとする。それを見た彼女の友達は慌てて兵士の腕を掴むも突き飛ばされ、壁に激突する。


「おっとっと。間違えました、おい、君は確か、目標ちゃんの友達か。君は現実というものを知らないみたいだな。簡単に言うと、ダークエイジは虚構だ」


 眼鏡をかけた男は、彼女の腹に強い蹴りを入れた。

 彼女は強い痛みと憤りを感じるしかなかった。


「ダークエイジが彼女の父親を殺した、これは誤りだ。本当は、我々が殺した……おおっと、それは憤りを感じている顔だな、ふへへ、いい顔をしているな。武器屋のマーティンも、同じような顔をしていたよ、彼はとても賢くて、愚かだった」


「……何を言ってるの」


「マーティンを殺したのは私だ。ダークエイジはマーティンを守ろうとした。そう、真実は我々によってねじ曲げられたんだ。面白いと思わないか?」


「……何で、何で」


「あははははははははは、その顔が見たいんだよ。君は後でショットガンで撃たれる。だからもうその顔は見れない、ショットガンは恐ろしいぞ。顔面もグチャグチャで、撃たれたら肉片が飛び散る。頭なんてなくなるから、顔で遺体を特定することはできない」


「……どうして」


「あひゃひゃひゃ、君はもう用済みだ、残念ながら。マリノには特殊な力があってね、君には無いからここで死んでもらう。そうだ、せっかくだから面白いシナリオにしてあげよう」


「……助けて!!」


 彼女が悲鳴をあげた、その時だった。


 ガシャン!!


 ドンッ!!


 ガラスが割れる音と共に、上から黒ずくめの男が現れた。男は天井のガラスを突き破って、中に入ったようだ。


「貴様は、ダークエイジか!?」


「ああ、如何にも」


「邪魔しに来やがって、お前ら、下手に撃つなよ。目標を殺せばリーダーに怒られる」


 そうして兵士はナイフを構える。それと同時にダークエイジは、腕に着けたナックルダスターを展開し、4本の刃を突き出す。


「何だ、その武器は」


「カイザーナックルだ、震えて死ね」


 ダークエイジは拳につけた4本の刃を構え、そのまま2人の兵士に向かって特攻する。


 グサッ!!


 ジャキッ!!


 2人の兵士の腹にはそれぞれ4本の刃が深く刺さったようで、彼らは即死した。ダークエイジはすぐにその刃を抜き、獣のように鋭い目つきで構えのポーズをとる。診療所内には全部で8人の兵士がおり、たった今2人死んだ。残るは、6人。


「死ね死ね死ね!!」


「おいバカッ、やめろ!!」


 味方を倒された恐怖のあまり、1人の兵士がショットガンを乱射する。しかしダークエイジは素早く、弾の軌道を全て見極めたかのように上半身を反らして避け、勢いつけて兵士の足元に滑り込み、足で兵士の股間を蹴り上げた。


「へあっ!?」


 局所を蹴られ慌てた兵士はショットガンを落とし、股間を押さえる。その隙を、ダークエイジは見逃さなかった。横から顔面に蹴りを入れ、地面に強く激突させる。更にヘルメットを外し、頭を掴んで棚の角にぶつけたりもしている。


「くそ、くそ!」


 ダークエイジの行いは、言葉に表すことのできない所業である。それを一番理解しているのは、何でもない、ダークエイジの敵の奴らである。


 ダークエイジは地面に転がり落ちたヘルメットを拾い上げ、すぐにベッドの奥にいた兵士の顔面に投げつけた。


 ガンッ!!


 あまりの痛みに投げつけられた兵士は気絶した。これで戦闘可能な残りの兵士は4人。流石に仲間の死や気絶を黙って見てられるほど、兵士たちは甘くない。3人の兵士は背後からダークエイジを蹴り、廊下の方へと押しやる。


「ダークエイジ、お前はここで死ぬ」


「そうか、そうは見えないけどな」


 狭く長い廊下で、3対1の戦いが始まる。まずは1人の兵士が真正面からナイフを振りかざしてきた。ダークエイジは見極めて右に避け、兵士の腕をへし折る。しかしその兵士は強かった、腕をへし折られても我慢し、勢いつけて膝を蹴り上げる。


「グハッ!!」


 そしてそのままダークエイジの背中にナイフを突き刺した。流石はアンチャード、対ダークエイジの軍隊である。腕を折られたくらいで、その兵士は屈しない。


「やるじゃないか、アンチャード」


 ナイフが背中に刺さったダークエイジもまた、屈しない人間である。ダークエイジは背中に刺さったナイフを抜かずに、右手のナックルダスターのみを起動して、痛みを我慢しながら突進する。


「死ねぇ!!」


 逃げ場のない狭い廊下で、3人同時に真正面から振り下ろされたナイフを、ダークエイジは左腕で受け止める。しかしナイフは腕には刺さらない、何故ならあえて起動しなかったナックルダスターが腕に収納されているから。


「死ぬのは、お前らの方だ」


 ブシャッ!!


 そしてダークエイジは、右手のナックルダスターで目の前にいた兵士3人の顔面を切り裂く。痛みに悶える暇もなく、3人の兵士は目を潰されて死亡した。


 ダークエイジは返り血を手のひらで拭きながらも、その手のひらに返り血が付いていて、拭いても拭いても意味ないことに気づき、フッと笑いながら目標であるマリノのいる部屋に戻る。


「ダークエイジ、他の兵士はどうした?」


「ああ、倒した」


 戻るとそこには眼鏡をかけた兵士がいた。格好からして彼がリーダー格なのだろう。


「マリノさんのご友人さん。今からここで戦いが行われる、君は他の部屋に行くんだ」


「……はい」


 ダークエイジは腹を蹴られた少女を起こして、他の部屋に行くよう指示した。対して彼女はダークエイジによる愚行を知っているものの、歯向かうことはできず、反抗せず静かに他の部屋へと向かった。マリノは眠っているのか、特に反応はない。


「ははは、ダークエイジ! 背中にナイフが刺さっているじゃないか! どうした、お前も死にかけているんだろう、きっとそうだ!」


「なら、俺と戦ってみるか?」


「ああそうしよう、この私に勝てるものなど誰もいない!」


「……そうか。ならば、俺が相手だ」


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