第61話 武器屋再襲撃
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次の日の夜、俺は武器屋の主人に武器を返しに行った。元々、俺は武器屋の主人から武器を預かっていた。それは強盗が武器屋に入った時、武器屋には違法な武器が置かれてあった。観賞用として置いてあったのか、販売はされていなかったがグレーゾーンではある。
だから俺が回収して、次の日には返却することでモンタージュの捜査を免れようとした。しかし、ダイジンさんの件があったから武器を返すのが遅くなった。というわけで、今日返しに来たというわけだ。
「何をしに来た、私を殺しに来たのか」
「武器を返しに来た」
武器屋の主人のマーティンは、手を震わせながらもショットガンを構えている。やはり、俺のことを警戒しているんだろう。彼からすれば俺は、ダイジンさん殺しの犯人だ。
「あの事件は俺のせいじゃない、モンタージュに仕組まれた」
「嘘をつくな、化け物め」
俺は脅しも気にせずに、ナックルダスターやヌンチャクの入った木箱をカウンターの上に置く。その冷酷さが怖くなったのか、彼はショットガンに弾を装填し引き金に指をかけた。
「立ち去れ、化け物!」
「俺じゃない、ダイジンはモンタージュの捜査官に殺された」
「信じられるか!」
「信じなくていい、モンタージュの人間を疑え」
すると、彼は引き金から指を離し、ショットガンを下ろした。説得によって落ち着いたかのように見えるが、心拍数が安定していないことから、彼は怒っているのが分かる。
ダンッ!
彼はプルプルと体を震わせ、カウンターを思いっきり叩いた。
「他人のせいにするな! ダイジンが死んだのはお前のせいだ!」
その言葉に、俺は反論できなかった。ダイジンさんを殺したのは俺じゃない、それでもダイジンさんは俺のせいで巻き込まれた。マリノさんを俺が助けたから、ダイジンさんは殺された。全ては奴らが仕組んだこと、それでも俺には負わなきゃならない責任がある。
「……そうかもな」
それだけ言って出ようとした時、ショットガンを何者かが武器屋に入ってきた。
「ダークエイジ、民間人を襲撃した罪で逮捕する」
くそ、このタイミングでモンタージュがやって来たか。逃げようにも、入り口と階段は塞がれた。そうなれば、彼らと戦うしかないのか。幸いにも、拳という武器がある。ここにある武器を盾と投擲物として使いながら逃げ回れば、外に行けないこともないだろう。
それにしても何故このタイミングで入ってきたんだ、騒音として誰かに通報されたのか。
「マーティンさん、無事ですか!」
「ダークエイジを早く捕まえてくれ」
「大丈夫です、落ち着いてください」
俺は無駄な抵抗をせずに棒立ちのまま、マーティンを見つめる。いざとなれば抵抗できる、手錠をかけられても構造は理解しているから簡単に破れる。でも今は、彼のことが心配だ。
「マーティン、俺を信じろ」
「口を開くな!」
「マーティンさん、ここは我々にお任せください」
モンタージュの捜査官は俺の腕を後ろに引っ張り、膝に蹴りを入れて手錠をかけようとする。そして別の捜査官はハンドガンを手にしたまま、マーティンに近づいていく。
「ダークエイジの使用した武器が、過去に貴方が登録した武器と形状が似ていました」
「……何のことだ」
「マーティンさん、貴方はダークエイジの協力者ですか? それとも、脅されて協力せざるを得なかったんですか?」
「……脅されていた! 私は何も知らない!」
彼は捜査官に取り押さえられそうになったが、そう叫んだことで解放された。そうだ、彼は無実だ。俺が勝手に巻き込んで武器を借りただけ、マーティンは関係ない。
「ダークエイジは悪だ、さっきだって私を取り込もうと、モンタージュは事件を捏造したとか嘘を言ってきた! 私は騙されないぞ!」
「やめろ!」
俺はマーティンの言葉を遮るようにして、すぐに声を発した。しかし捜査官に首の方を強く取り押さえられたせいか、声が出せなくなった。
「マーティンさん、続きを聞かせてくれ」
「ダイジンさんはモンタージュの捜査官が撃ったとかいうデマを聞かされた、そんなこと信じられるわけがないだろう!」
「ほうほう、貴方は大きな誤解をしている。モンタージュがそんな被害者を射殺するようなことはありません」
「そうでしょうね、私はダークエイジに脅されて、それで武器を貸していたんだ!」
「はいはい、分かってますよ、ダークエイジは我々が拘束します」
「ああ、頼んだぞ、この街を汚す害悪を逮捕しろ!」
カチャカチャ
「と、その前に。今回の事件のシナリオを発表しましょう。今回の被害者は貴方、ダイジンさんの旧友であるマーティンさんです」
「……はい?」
「今回の事件で、貴方はダークエイジによってショットガンで射殺される。顔面を撃たれたものですから、遺体はグチャグチャで顔の区別がつかなくって、それはもう大変でした」
「や、め、ろ、おお!!」
「おっと、汚い声を上げるなよダークエイジ。今は大事な時間なんですよ、ちょうどマーティンがダークエイジに射殺される犯行時刻ですからね」
「何を言っているんだ、君たちは」
「ダークエイジの言う通り、我々がダイジンを殺し、ダークエイジに罪をなすり付けました」
「……お前らが、犯人なのか」
「ええ、どうなることやら」
「ふざけるな、貴様らを絶対に許さ一一」
バンッ!!
グチャ!!
マーティンは、捜査官に顔面を撃たれ死亡した。ショットガンで顔面を撃たれたせいで、真っ黒に染まった肉片が辺りに飛び散った。奴らは首から手を離し、手錠の鍵を閉める。
「見ましたか、彼の憎しみに満ちた顔。あいにくショットガンで撃たれたために、その顔はもう見れませんがね」
「ふざけるなァァ!!!」
「さてと、ダークエイジ。次はお前が死ぬ番だ、その覆面を外して汚い顔を世界中に晒すんだ」
そうして奴らは俺の覆面に手をかけようとした、その時だった。
バンッ!!
どこかからか、重い銃声音が聞こえた。距離からして、かなり近い方だろう。対モンスター用のスナイパーライフルで、とにかくここにいる奴らが撃ったものではない。奴らは撃った犯人を探そうとキョロキョロとしている、今がチャンスだ。
バキッ!!
俺は手錠をかけられたまま立ち上がり、近くにいた男を頭突きで突き飛ばす。そして宙に舞った手錠の鍵を、壁を蹴って空中でキャッチし解除する。
カチャッ!
そしてカウンターの近くに落ちていたナックルダスターを手に持ち、入り口の扉を蹴破ってから手すりを伝って屋根の上に移動し、そこから屋根の上を走って逃げる。誰だか分からないが、スナイパーライフルを使った人に礼を言う、助かった。
「くそ、ダークエイジの逃亡を確認。軍隊の到着は間に合わないか……引き続き、奴を探せ!」
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