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第55話 ダークエイジへの怒り

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 次にヌンチャクを取り出し、相手の足元をすくって転ばせてから肘で顔面を思いっきり突く。あまりの衝撃に呼吸できなくなっている隙に、もう1人の男の首をヌンチャクで強く絞める。


「ああああ、ががががが」


 やがて男は気絶した。同時に肘で突かれて苦しんでいた男は起きて、地面に転がっていたショットガンを手にし、俺の後頭部に突きつけた。


「残念だったな、ダークエイジ」


 カチッ


「残念なのはお前の方だ」


 グサッ!!


 そのショットガンが空だったのを俺は知っていた、だから後頭部に当てられても何も驚かなかった。アイツがショットガンを乱射してくれたおかげだ。ヌンチャクで気絶していた男の首筋にナイフを突き刺し、部屋の電気をつけて最後の1人の元へ向かう。


「来るな、この男の首を撥ねるぞ!」


 最後の1人は、椅子に座らせた武器屋の主人の首筋にナイフを当てて脅している。言葉通りに俺は動かずに、こっそりとポケットに手を入れてナイフを取り出す。


「絶対に動くなよ」


「ああ、分かってる」


 その言葉と同時に、俺はブーメラン型ナイフを思いっきり壁に向かって水平に投げた。するとナイフは壁に反射して、奴の右手に突き刺さった。


「うわっ!」


 驚いている奴の落としたナイフをすぐに拾い、そのまま奴の腹に思いっきり突き刺した。俺は奴の頭を壁に押し付け、耳元で囁く。


「やめてほしかったら答えろ、誰に雇われた?」


「ぐふふ、たすけてくれ」


「早く答えろ、命は助けてやる」


「ぐふ、あっ、ブラッドリーだ」


 それだけ言って、男は命を落とした。やっぱりか、ブラッドリー・ルバントンが全ての元凶か。奴は武器屋を襲撃し、次なる強盗のための下準備をしていたのかもな。だとしたら、ブラッドリーはまだ生きているのか。


「二度とこの店に来るなと言っただろう」


「仕方ない、助けるにはこうするしかなかった」


 俺はナイフを抜き、武器屋の主人を締め付ける縄を切る。彼は手首を痛めたのか、やれやれと首を振りながら手首を押さえている。


「しかもこの店で殺害行為とは、一体何人殺した」


「8人だ、上はもっと悲惨だがな」


「この店を汚すのはやめてくれ。規制された武器の違法所持がバレたら、この店どころか私の人生も終わるんだぞ」


「そうか、ならこれからも俺に協力しろ。まずはナックルダスターの刃を磨いてくれ」


「……どうしてお前に協力しなければならんのだ」


「この店にモンタージュが調査に来る、その前に規制武器は全て俺が持ち帰っておく。そうすればお前は罪に問われない。代わりに、これからも手伝ってもらう。命を助けてもらったんだ、考えてみろ」


 少し黙った後、彼は答えた。


「ええい、分かった。武器を持っていけ、ただし絶対に明後日までに返せよ。このまま持ち逃げすれば、俺は必ずお前を追い詰める……って、いない」


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 武器屋の襲撃から3日後、俺は花屋の屋根の上にいた。


 いつも通り彼女の店に向かっていた時、俺は彼女の泣く声が聞こえた。そして何よりも、彼女のそばには帽子を深く被った男がいた。恐らく、彼がリリーさんの父親なのだろう。


 そのまま店に入ればいいのに、俺は臆病になったのか、わざわざ屋根に登り聞き耳を立てている。とても気持ちの悪いことだ、家族の会話を聞くなんて。しかし距離を置いたとしても、集中すれば彼らの会話は聞こえてしまう。だったら潔く、屋根の上から聞いた方がまだいい。


「それで、巨人襲撃は大丈夫だったのか?」


「ええ、私たちはね。ただ何人かが亡くなった」


「そうか。随分と大きくなったな」


「今更父親ヅラしないで。ずっと心配してたのに、旅に出ていたなんて、私聞いてないよ」


 リリーさんは珍しく、父親に怒りをぶつけている様子だった。対して父親は帽子を外すようなことはせずに、店に並んだ花の匂いをスンスンと嗅いでおり、どこか余裕を感じられる。


「村のみんなは元気そうだった、前に会った時は口が悪くて焦りを感じたが、何かあったのか?」


「お父さん、何も知らないの?」


「巨人襲撃があったと聞いて、遠方からはるばる帰ってきたばかりなんだ」


「あっそ、じゃあそのまま、知らないままでいて」


 そうして彼女は店から出ようとしたが、父親に止められた。


「悪かった、確かにあの時に俺は逃げた。今までずっと逃げていた。しかし巨人襲撃があったと聞いて、不安で戻ってきた。この数年に何があったか分からない、だから父さんに全て教えてほしい」


 彼は帽子を取り、真剣な表情で懇願する。リリーさんもそんな父親の姿を見たからか、足を止めて振り返り、巨人襲撃のことについて話し始めた。


「数週間前、三体の巨人がカービージャンクを襲った。巨人はある討伐者によって倒されたけど、トルティラ地区は壊滅的な状態となった。でも、みんな助け合ったり、若い人が街に来たりして、少しずつ明るさを取り戻していった。それなのにマリノは夜、男に襲われた。ダイジンさんも、病で倒れた。そしてマーティンさんの武器屋も、襲撃された」


 彼女はそこからずっと、最近のトルティラ地区の出来事について話を続けた。街で起きた良いこと悪いこと、マリノさんとダイジンさんの一件と武器屋の襲撃に共通している人物についてと、そいつに対するリリーさん自身の感情を、彼女は言葉にして父親に訴えていた。


「一一最初はダークエイジが犯人だってなってた。なのに後になってダイジンさんが否定して、真犯人は遺体となって見つかった。でも、どの事件にもダークエイジが関係している。私の主観だけど、つまりダークエイジは、この地区に悪影響を及ぼしている」


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