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第51話 新たな武器

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 夜、その事件が起きた現場に行き、ひとりで調査を始める。こういう時、ボルトがこの街にいたら、少しは捜査の状況を聞くことができた。しかしボルトは都市の中央部にいて、この街には当分帰ってこない。そうなると頼れるのはハードくらいだが、彼がいる地区は少し離れている。


 それにこの事件は、俺の落ち度で起きた。少しでも早く見つけていれば、彼女は無事だったかもしれない。犯人が捕まっていれば、ダイジンさんも倒れなくて済んだかもしれない。


 ダイジンさんには持病があったらしく、事件のストレスのせいで悪化したらしい。これも、俺のせいだ。彼のためにも、早く犯人を見つけないと。


「この足跡の匂い、消えてないな」


 そう焦ってもいたが、早々に証拠が見つかった。モンタージュは、モンタージュだからこそ、この証拠を見逃したんだろう。これは、モンスターに詳しい人にしか分からない証拠だ。


 それはモンスターの匂い。モンスターは悪臭を放っていて、そのうえ取れない。俺は嗅覚が強化されているし嗅ぎ慣れているから、モンスターの匂いもすぐに分かる。この場に漂っている微かな匂いを、モンタージュの捜査官は見逃してしまったんだろう。


 そうだとして、ここにモンスター、恐らくオークが来たとして、何故こんなところにオークが来るんだ。ここはトルティラ地区とトリロジー地区の間にある路地だ、森からは少し離れている。


 いや、あの男の怪力、この足跡はあの男の体の大きさと合っている。そうだとすると、この足跡は怪力を持っていた男の物になる。ということは、奴はオークの力を持っている……なんて馬鹿なこと、あるわけないか。


 オークを討伐して、その血を踏んだ靴の匂いが足跡として残っているんだろう。腹に真っ黒な痕が残るほどのパワーも、特殊な討伐者だとしたら……そうだとしても説明がつかない。


 デビルズオール社は、もしかすれば、既にモンスターの力を人間に移植する技術を持っているのか?


 あの男は白髪の少女のことを知っていた。白髪の少女とは、カグラ村で会った強盗団のリーダーのことだろう。今までも何度か会ってきた、奴はゴブリンの軍隊を動かし、巨人襲撃にも関係していた。


 だとしたら、奴らはモンスター自体を悪用するだけでなく、モンスターの力を人に移植した改造人間も戦力に加えるつもりだ。そうなれば、モンスター大戦はより激しく、先の戦争とは比べものにならないほどに行われるだろう。そうなれば、世界の征服も、奴らの夢も夢ではなくなる。


 くそ、こうなったら早めに奴らを殲滅しておくか。とは言っても、このままでは前のように返り討ちに遭うだろう。ならば、武器でも調達しておくか。


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「強盗か、欲しい物はくれてやる!」


 早速、俺は武器屋に向かった。そこの主人はだいぶ歳をとっているようで、俺の姿も見ずにカウンターの下でうずくまっている。そりゃそうか、夜中で完全に閉まっている店に裏口から入ってきたら、誰でも怖くなるか。


「顔を見ろ、俺だ」


「……だ、ダークエイジか。レイプ野郎がどうして武器屋なんかに来るんだ」


「とっておきの武器をくれ。これで、ダイジンの仇を打つ」


「仇? お前が彼の娘を一一」


「いいや、犯人は他にいる。前は武器が足りなくて負けた。犯人を捕まえるには、より強い武器が必要だ」


「……強盗に武器を渡すもんか」


 至って正論だ、これには何も言い返せない。だから俺は少しだけ、ヒーローにあるまじき行為をしてみることにした。


「お前にも子供がいるだろう、ここで俺を止めれば真犯人が動く。次は誰の子供が襲われるか、俺は真犯人じゃないから分からない。そうなると、全てはお前にかかってくる。さあ、どうする?」


 すると彼は手を震わせながらも、カウンターの下から木の箱を取り出した。


「モンタージュの捜査官が持ってるショットガンと同じ性能の特製品だ」


「悪いが俺は鉄砲が嫌いなんだ、他の武器をくれ。できれば、近距離武器がいい」


「……まさか、素手で戦うつもりなのか?」


「いいや、そうか、そうだ、そのつもりだったが、俺は犯人を必ず殺す。でも鉄砲は嫌いだ、だから近距離武器で、ナイフよりも強いものをくれ。戦闘員武器と同性能の特性品は無いのか?」


「……ある。しかし取り扱いの難しいナックルダスターだ。これで殴れば、誰でも死ぬ」


 彼はカウンターの下にある木箱をどかし、その隙間から白い箱を取り出した。戦闘員武器だから売るつもりなんてなかったのか、なら何で持っていたんだ。


「このナックルダスター、通称”カイザーナックル”は取り扱いが難しく、街では出回っていない。元はモンスターの討伐用に作られたが、こういうご時世だからと規制された。この武器を渡してもいいが、私が持っていたということは誰にも言うなよ」


「分かった、約束しよう」


「……信じられないがな」


 こうして俺は、特殊なナックルダスターを手に入れた。とても硬い金属の先には4本の長い爪が付いており、思いっきり相手を殴るように圧をかけることで引き出せるようになっている。しかし少しでも圧をかければ作動するため、間違えれば自分の体に深く突き刺さることとなる。


 なるほどな、ピンチの時に引き出せばモンスターの討伐にも使えるというわけか。戦闘員の時は見たことなかったが、この仕様なら規制もやむ無い。


「裏口は閉めてくれ、二度とこの店に来るな」


「……それも約束しよう」


「……それも、信じられないが」


 こうして俺は、新たな武器を手に入れた。


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「待て、俺にもやらせろ。お前は刺されてんだ、少しは休めよバカ」


「あ、うっす」


「なんて冗談だろ、おら、そこもっと蹴れよ」


 ある五人組の男たちが、無防備な男を殴り蹴り散らかしている。特に巨体をもった男は、無防備な男をこれでもかと言うくらいに痛めつける。


「止めろ」


 その時、どこかから声がした。声を聞いた五人組は動くのをやめて、声のした方を向く。するとそこには、拳に縄を巻き、手首に金属の装飾をつけた黒ずくめの男が立っていた。


「俺が相手だ」


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