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第49話 立ち上がれない

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「おお来たか、ダークエイジ」


 現場に到着すると、そこには覆面を被った巨大な男と、雇われた5人のチンピラ共が立っていた。そして奴らの足元には、傷つけられている裸の女性の姿が。巨大な男は、何故か手に持っていた鉄砲を地面に捨てた。


「誰だ、お前らは」


「そっちこそ。ダークエイジは本名じゃないそれは分かっている、人に聞くならまず自分が名乗れ」


「なら名乗らなくていい、彼女に何をした?」


「ふっ、答えなくたって見りゃ分かるだろ!」


 そうして奴らは、武器を持って向かってきた。対して巨大な男はゴミ箱の上に座り、様子を見ているようだった。なるほど、アイツはコイツらのボスってわけか。しかし、手下たちは動きが遅い。


「うおりゃああああああ!!」


 ナイフを振りかざしてきた男の攻撃を見極め、さっと右に避けてから背中を蹴り飛ばす。そして落としたナイフを空中で拾い、右手に持ち替えて向かってきた男の足に突き刺す。真正面から飛んできた拳を両手で受け止め、押し返してから回し蹴りで顔面を地面に叩きつける。


「ふざけんなよ!!」


 蹴り飛ばされた男は受け身をとって着地し、腰のベルトからナイフを取り出した。そして右手でナイフを持ち、俺の胸めがけて振りかざす。


「ふざけてるのはどっちだ」


 俺は左手で奴の腕を止め、右手で腹に拳を何度も入れる。そしてナイフを奪い取り、重力に任せてナイフを奴の足に落とす。


「あぎゃっ!!」


 足の痛みに気を取られているうちに、俺は奴の顔面に、拳を突き刺すように殴る。ナイフで足を怪我している奴は、受け身も着地もできずに、その勢いのまま無抵抗で地面に倒れた。


 ヒュン!!


 静かに後ろからナイフを振りかざしてきた男の腕を見ずに掴み、その場でへし折ってから、ナイフを握らせたまま腕を太ももの位置に持っていく。


 グサッ!!


 へし折れた腕で、奴は自分の太ももにナイフを突き刺した。コイツは痛みを感じると声を出せなくなるタイプなのか、さっきの奇襲はお見事だったが、俺には見えている。


「く、くそ、くそう!」


 残された最後の1人は、自暴自棄となったのかナイフをあたり構わず振り回し始めた。こうなると、人間はより弱くなる。モンスターだってそうだ、自暴自棄になっている状態が、いちばん弱い。


 ナイフを振り回していて、上半身は危険でも下半身は空いている。戦闘員だったから分かる、ガラ空きな部位が一番狙いやすいってな。まあ、誰でも分かるか、自暴自棄で我を見失っている奴以外は。


 空気を斬るナイフの軌道を見極め、タイミングに合わせてフッとかがめて腰を回し、その場で飛び跳ね、側宙をするような感じで奴の腕に足を引っ掛け、思いっきりねじ曲げる。


「あぐぁ!!」


 その勢いでナイフは吹き飛び、壁に突き刺さった。俺はナイフを壁から抜き、男に馬乗りになって、そのナイフを思いっきり奴の手のひらに突き刺した。


「あばあああ!!」


「早く黙れ」


 コイツを黙らせるために、俺は拳で何度も何度も奴の顔面を殴った。ナイフで刺されるという痛みを味わったことないのに、ナイフを振り回すからだ。これでナイフの痛みを思い知ったか。


 部下の5人のチンピラ共を倒すことには成功したが、まだ大物が残っている。その男はゴミ箱から飛び降り、近くにあった袋から布を取り出し、それを自分の体に巻き付けた。


「お見事だ、ダークエイジ。この街のチンピラをこんなにも早く戦闘不能に追い込むとは、やはりお前は素質がある、というよりも、戦闘力そのものだ」


「……何が言いたい?」


「ダークエイジの正体について調べていたんだ。独自の戦闘スタイルで、街に蔓延る悪を殴る。それだけならまだいいが、ダークエイジは俺たち組織に手を出した。これは許せない」


 話しながらも、大柄な男は縄を手に巻き付けた。これは俺と同じやり方だ。もっとも、今の俺は縄をつけていないが。昔は攻撃力を高くするために、縄をつけてその状態で人を殴っていた。待て、何なら、その格好も、俺に似ている。


「何がしたいんだ、お前は」


「おお待て待て。ダークエイジ、お前にひとつ聞きたいことがある。お前が街に現れてから、俺たちが追っている標的もこの街に現れるようになった。あいにくその標的は、どこかに消えてしまったようだがな。さて、お前は知っているか、ブレイク・カーディフを」


 目の前にいる男は、ブレイクという名を口にした。つまり、ウォーリアーズもしくは治安部隊、デビルズオール社の関係者ってことだ。


「知らないな、新聞で見た程度だ」


「そうか。ところでダークエイジの戦闘スタイルはどこか、戦闘員に似ている。そういえばブレイクも戦闘員出身だったな、これの類似点についてはどう思う?」


 何なんだ、この男は。俺が、ブレイク・カーディフが戦闘員をやっていたことは極小数の人間しか知らない。ウォーリアーズ、家族、地元の親友、そして……戦闘員時代の同期。


 何よりもコイツは、俺の戦闘スタイルが戦闘員であることに由来していると見抜いている。つまりコイツも戦闘員の可能性がある、しかも上級の。


「そうか、それがどうした?」


 俺は冷静さを保ち、震えを抑えたまま答える。


「うむ、察しが悪いのか。まあいい、俺と戦わないか、ダークエイジ。せっかくお前と同じ格好をしているんだ、それに対しては何か言わないのか?」


 奴は縄を手に巻き、ボロボロの布を身につけている。暗くて形しか分からなかったが、どうやら俺の真似をしているらしい。これは明らかな挑発行為だ。


「受けて立とうじゃねえか、偽物め」


「おお、強気だなあ」


 そうして奴は、速く強い拳を振るった。いつものように、俺は両手で受け止め、頭めがけて回し蹴りをしようと考えていた。しかし、いつもと何かが違った。


 ドンッ!!


「がはっ……」


 ドシャッ!!


 奴の拳は、俺の胸に当たった。そして俺は、あまりの衝撃に10mくらい吹き飛ばされ、壁に強く叩きつけられた。何なんだ、この力は。たった一撃で、ここまで吹き飛ばされるなんて、只者じゃない。


 心肺が潰されたような、そんな強い痛みが俺の体を襲う。どうなってんだ、息が苦しい。両手で受け止めたはずなのに、あまりの強さに弾かれたのか。そしてすぐさま押し出され、吹っ飛んだ……というのか。たった一撃だぞ、一撃で、ここまで痛いとは。


 何という力だ、あの男の拳は。


「どうした? 立ち上がれなくなったのか?」


「……う、うるさい」


「ははは、組織を舐めるなよ。時間が無いから、今日はここまでとしておこう。この女の身柄は任せた。そうだ、ダークエイジ、白髪の少女と言ったら通じるか、あの御方がお前を気に入ってたぞ!」


 背後から足音が聞こえたため振り返ると、そこには男が立っていた。反対に、奴らは逃げていった。ナイフも抜き取られていて、血痕も拭われていた。その男は、ゆっくりと裸の女性の元に向かって歩いていく。


「ああ、こんな姿で、ああ、助けに来たぞ、ああ、誰が、こんな目に、ああ……あっ」




 そして男は、叫んだ。


「ダークエイジ、私の娘を襲ったのは、お前か!」


 俺は男の目を見て、そこで分かった。


 彼はダイジンさんだ。


「答えろ、私の娘を襲ったのは、お前なのか!」


 俺は、その場で首を横に振ることしかできなかった。次々に、彼の仲間が路地裏に集まってくる。


「答えろ! 答えろ! お前なのか、やったのはお前なのか、答えろ!!!!!!」


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