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第14話 ここのボスか?

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「ボスに報告しろ」

「計画も順調だな」

「ああ、モンスターも溜まっている。あとはコイツらの覚醒待ちだ」


 計画、モンスター、覚醒。奴らは興味深い単語を口にした。前の奴らも計画とか言ってたな、やっぱりこれは組織ぐるみの犯行か。それに覚醒、聞き馴染みのある言葉だ。モンスター、なんで奴らはモンスターを溜めようとしているんだ。モンスターを倒して得をするのは、討伐者だ。もしかして、ウォーリアーズと関係があるのかも。


「敵襲だ!」


 遺体を発見したのか、外にいた男が叫んだ。すぐに倉庫の中にいる奴らも鉄砲を構え、少年少女を脅し始める。まずい、このままでは彼らも殺されてしまう。俺はすぐにナイフを取り出し、倉庫の中に多く積まれた荷物の上を転々と移動する。


「おい、てめぇのせいで隣のガキが死ぬんだぞ。いいのか、俺らは本気だからな」


 中でも少し変わった服を着ている男が、少年のことを鉄砲で脅す。しかし、何かがおかしい。その男の心拍数は少しずつ上がっている。鉄砲の引き金にも手をかけている。もしや、本当に少年を殺すつもりなのか。脅しじゃなく、本気で。


 倉庫の真ん中には椅子に縛りつけられた少年と少女が、横並びで配置されている。そして彼らを囲むように、鉄砲を持った男たちが6人ほどいる。中でも変わった服装をした男は、少年の前に立ち少年の頭に鉄砲を突きつけている。


「おい、出てこい! さもなくば、撃つぞ!」


 くそ、隠れて戦うのもここまでのようだな。俺は奴の忠告通りに、倉庫の天井から降り立った。急に現れた黒ずくめのミイラに驚いたのか、何人かは後退りをした。その一方で変な格好をした男はニヤリと笑っている。


「言われた通りに出てくるとは、正直な奴やなあ」


「子供たちを解放しろ」


「偽善者め、死ね!」


 そうして、奴は引き金に手をかけた。話し合いでは解決できなさそうだな、もちろん承知の上だが。俺は急いで腰からナイフを取り出し、電球めがけて思いっきり投げた。


 バリン!


 電球が割れると同時に、辺りが真っ暗になった。そう、今日は新月の日だ。明かりがないため、奴らの視界は奪われたことになる。こうなれば、俺の方が有利だ。暗闇の中を飛び回りながら、まずは少年の前に立つ奇妙な服装をした男の顔面を蹴る。


「グエッ」


 そして電球を割って落ちてきたナイフを拾い、すぐそばに立っていた男の腹に突き刺した。同時にその悲鳴を聞いて駆けつけた男の頭めがけてナイフを投げる。


 ザクッ


 男は何も言わずに倒れた。当たり前だ、悲鳴を出す隙すら与えなかったからな。しかし、油断はできない。外から援軍が駆けつけてきたようで、残り8人に増えていた。めんどくさい、一気に片づけるか。倒れた男が手にしていた鉄砲の引き金に指をかけ、思いっきりぶっぱなした。


 バンッ!!


 鼓膜が破れそうなくらいの巨大な音と共に、鉄砲から弾が発射された。その弾に撃たれた男は、口から血を垂らしながら倒れていった。これが鉄砲の威力か、前に撃った鉄砲と少し形状が違うな。もしや、より強化された鉄砲なのかも。


 威力が強い一方で、耳がとても痛い。感覚が鈍る。聴力が強化されてる分、発射音が大きく聞こえるんだろうな。耳がジンジンとして、痛い。


 鉄砲に頼るのはダメだ、しかし鉄砲は扱いやすい。俺は引き金から指を離し、鉄砲を手にした状態で目の前の男の後頭部を後ろからスパンと叩いた。鉄砲は鉄で出来ているからな、発射しなくともこういう使い方ができる。最悪な鈍器だろう、これが鉄砲の真の使い道だ。


 グチャッ


 続けて後ろから、奇襲を続ける。暗闇など敵ではない、むしろ味方だ。奴らからすれば何も見えないが、俺からしたら全て見えている。視力を失った分、他の能力で全てを補っている。今の俺は、超人だ。


「くそ、何しやがる!」


 こうして、俺は襲ってきた奴らを全て倒した。手には血にまみれたナイフが2本、見て分かる通り、とても残酷で残虐な殺し方をした。まあ、俺には見えないけどな。奇抜な格好をした男は腰が抜けたのか、下の方でモゾモゾと動いている。


「おい」


「ヒッ、ヒィ……」


「お前がここのボスか?」


 奇抜な格好、残念ながら俺は色が分からないからどういう色の服を着ているか分からない。しかし鎧ではないトゲトゲの服を着ているのは、この空間把握能力で分かる。きっと虹色で夜でも目立つ服装をしているんだろうな。


「ええ、まあそうで」


 グチャッ


「ああああわあやあやあわわわわや」


 ナイフを奴の手に突き刺してみると、奴は声にもならない声を上げた。心拍数が急激に上がっている、次どこかを刺せばコイツは死んでしまうな。俺はコイツの体を持ち上げ、子供から距離を置いて尋問を始めた。


「おい、どうして子供たちを?」


「そ、そんなん言えるかよ」


 グギッ


「うわああああああたあまたあああ」


 反抗するような口調をしてたから、俺は奴の手を踏みつけた。誰だって傷ついた手を本気で踏みつけられたら、きっとこんなみっともない声を出す。まあ、反抗的な口調をしているから仕方ない。俺だって、あまり殴りたくないんだ。いや、殴りたくはあるのかもしれない。じゃないと、こんなことはやってない。


「命は無いぞ」


 俺はナイフを首筋に当てたまま、奴の耳元にささやいた。すると奴は焦りからか、更に心拍数が上がっていく。手からは血が流れている、このまま処置しなければ命も危ない。


「……計画だ!」


「……何の計画だ」


「子供たちを誘拐する計画だよ! 誘拐して他の国に売りつける、そういうビジネスなんだよ!」


 奴は諦めたのか、ベラベラと計画についてを話し始めた。子供を誘拐して、他国に売りつけるビジネスか。労働力が不足している、もしくは子供を性的に利用するとかいう目的があるのか。詳しくは知らないが、それにしても奴の心拍数は上がったままだ。


 よく分からないが、不気味な心拍数だ。これはまるで、普段の様子とは違う。いや、この男の全てを知っている訳じゃないが、それにしても不気味だ。これはまるで……待てよ、何だこの臭いは。


 フンフンフン


 匂いを嗅いでみると、倉庫の外からとてつもない悪臭が漂っていることが分かった。これは、もしかして?




「かかったな!」


 グオオオオオオオ!!


 奴の声と同時に、倉庫の外から3体のゴブリンが現われ、俺めがけて突進してきた。まさか、さっきのはモンスターの臭いか!


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