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第105話 私は不死身

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「おっと、威勢いい!」


 奴は腕で、俺の振るうナイフを受けた。するとナイフの刺さった腕は光り始め、少しずつ傷口が塞がっていくのが分かる。やっぱり、コイツに攻撃は効かないのか。俺はナイフを抜き、距離をとる。


「おいおいブレイクさん、ナイフは私には効きませんよ。私に効く成分は、この世にはない」


 奴の言う通りだ、やっぱりナイフじゃ意味ないか。俺はナイフ2本をその場に捨て、代わりにナックルダスターを展開させる。そして、助走をつけて思いっきり突っ込む。


「まるで無能なゴブリンみたいだな!」


 奴は攻撃を避けずに、両手で刃を受け止めた。すると手のひらの傷が光り、また回復していくのが分かった。くそ、これも効かないのか。俺は修復していく傷に刺さった刃を抜かずに、思いっきり下げる。


 ブシャッ!!


 腕まで切られた奴は流石に痛がっているものの、効いてはいないのか、俺の顔面を膝で蹴り上げた。


 ガンッ!!


 しかし、俺の顔面は特別なヘルメットに守られており、膝で蹴り上げたくらいじゃ効かなかった。奴は俺から離れ、肘までちぎれた腕を修復させた。既に一体目のサイクロップスは森を抜けている。


「言っただろう、私は不死身だとな!」


「どうやらそうみたいだな」


「ああ、私は不死身なんだよ」


 不死身不死身うるさいな、コイツは。だが、絶対にコイツにも弱点はあるはずだ。ブラッドリーの時みたいにロープで拘束して殴り続けるか、幸いにもロープは近くの家の二階に置いてある。


 俺は立ち上がり、奴に背を向けて走り始める。もちろん、向かうのはロープのある家だ。


「おい、待て!」


 奴は回復を中断させて、手首より先がちぎれたまま、俺を追いかける。なるほどな、回復は止まったまんまじゃないとできないのか。何というか、奴はとても残酷でグロテスクな見た目をしている。形を鮮明に感じられる分、余計に気味が悪い。


 俺は路地裏に行き、道に積み上げられてあった木箱を登ってから、窓を蹴破って二階に入り、ロープを掴む。5秒後くらいに、奴も同じルートを辿って二階に来たようで、ちぎれた手首をブランブランと揺らしながら話し始める。


「ロープなんか持って、どうするつもりだ?」


「決まっているだろ、こうだ」


 俺はロープの端を奴の首にくくりつける、そしてすぐに引っ張って足に結びつけ、上から下へ、下から上へと何重にもグルグル巻きにする。奴は身動き取れずにいるものの、動いていないからかゆっくりと傷を修復させていた。


「回復できても、動けないなら意味が無いな」


 すると奴は、高らかに笑い上げる。


「はは、気づいていないのか!」


「何だ?」


「私の回復能力は赤い光を発生させる、そしてその赤い光は高熱を持つんだ。このロープは軍用じゃないだろう?」


 ジジジッ……ジュ!


 と、奴を縛ったロープから突然、焦げ臭い匂いがした。まさか、奴の回復能力に使われる光でロープが燃えているのか。ロープが燃えて緩くなったからか、奴の拘束はゆっくりと解かれていく。


「回復する暇を与えてくれてありがとう、おかげで私はピンピンとしているよ」


 そして奴は立ち上がり、俺を強く蹴飛ばす。


 ガンッ!


 あまりの力に吹き飛ばされ、俺は窓を突き抜けて路地裏へと落ちる。このコスチュームの防御力を超える攻撃だった、もしかしてだが、奴は回復すると同時に強くもなっているのかもな。


 ドンッ!


 激しい音を鳴らしながら、奴は地面へと飛び降り、そして俺に向かって拳を振るう。俺は腕で受け止めるも、勢いを発散できずに壁まで押し飛ばされる。俺は急いでその壁を伝って、路地裏の外に出る。


「お前のパンチも素晴らしかったが、私のも負けていないぞ」


 こうしている間にも、サイクロップスは街に到達していた。120mもある、巨大なサイクロップスはゆっくりと家を踏み潰していく。ニュークはそれを見て、激しく笑い出す。


「あはははは、あははははははっ、これが私の夢見た世界だ。素晴らしいよ、巨人襲撃も私が提案したものだ。ちょうど孤児院の子供を有効活用したかったんだ。街をモンスターが襲うシナリオ、一番迫力があったのは私の案だったよ」


 孤児院の子供を有効活用したかった、これはどういうことなんだ。孤児院といえば、タイムパーク孤児院のことか。地下室の事件で助けられた、親のいない子供を保護するために、三人の子供は孤児院に送られた。


 あの子供たちはモンスターを操る能力が高いとして、地下室に閉じ込められていた。そして巨人襲撃で現れた巨人は三体。何より、確かあの時、ハードが言っていた。タイムパーク孤児院は子供の事情により、モンタージュへの協力を拒否すると。


 まさか、巨人襲撃の巨人って。


「勘づいたようだな、そうだ。巨人を動かす能力も高かったが、何より子供たち自身を巨人にして洗脳する方が効率的だった。マリノだったか、あの女がポータガルグーンになったように、あそこの子供はみんな巨人になった」


 その言葉を聞いて俺は怒りを抑えられず、路地裏に戻り、奴の腹に拳をねじ込んだ。しかし、奴に攻撃は効かずに、逆に顔面を強く殴られてしまった。奴の強化された拳は、ヘルメットごと吹き飛ばす。


「おっと、ブレイクさんの顔が見えてしまった。市民が近くにいなくて残念だよ。少なくとも、お前は代替可能な存在だ、いつ消えても構わない」


 奴は外れたヘルメットを見ながら、ニヤリと笑う。俺はヘルメットを装着し、また立ち向かう。


「うおおおおおおお!!」


 声を荒らげながら、奴の顔面を強く殴ると、奴の顔面はまた光り始めた。奴は回復しようと距離をとろうとするが、逃がさない。俺は奴の元へ走り、すぐに二発目を入れた。


 ドンッ!


 顔面を殴ったとは思えない重い音が路地裏に鳴り響く中、俺はニュークの顔面を何度も何度も殴りつける。そう、回復する隙を与えなければいいんだ。俺は両手で、強化されたその拳で殴り続ける。


 ボゴッ! ボゴッ! グシャッ!


 ドゴッ! ドゴッ! グチャッ!


 やがて肉の裂けるような、えぐれるような生々しい音が聞こえてきたところで、俺は手を止めた。しかし、奴の心臓の鼓動は止まってはいなかった。くそ、ここまで殴ってもまだ死なないのか。奴は口元を歪め、声にならない声を上げた。


「うあーーー!!」


 顔面を強く殴ったからか、麻痺して上手く喋れないらしい。ニュークの顔はまた光っている、だから俺は逃げられないように奴の首筋を掴み、ナックルダスターの刃を色々なところに突き刺す。


 ブシャッ!!


 グチャッ!!


 腹、手のひら、首筋、顔面、おでこ、そしてブラッドリーと同じく目に刃を突き刺した。しかし、奴は顔面を回復させたようで、目も元通りになっていた。そして奴はまた俺を蹴飛ばして、ナイフを構える。どうしたらいいんだ、どうやったら奴を倒せるんだよ。


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