8 新しい一日
翌朝、起きると、お風呂に入りながら、アンナたちに髪の手入れをしてもらう。
――こういう生活、すごく久しぶり。
まるで子どもの頃に戻ったみたいだった。
髪には、薔薇の香油を髪に馴染ませてもらう。
お風呂から上がると、昨日のようにドレスを着付けてもらい、食堂へ下りていく。
「おはよう、セー君」
「おはよう、姉さん」
軍服姿のセー君は読んでいた書類を脇へやると、にこりと微笑む。
それから朝食のパンとスープが出される。
「今日の予定は?」
「俺は王宮に行くよ」
「王宮?」
「戦場での功績がたたえられ、第二王子殿下の側近に抜擢してもらったんだ」
「すごいわ! そういえば第二王子殿下は今回の戦争で、戦いの指揮を執られたのよね」
「そう。俺を参謀に引き抜いてくださったのも殿下なんだ」
「頑張って! お姉ちゃん、応援してる! くれぐれも失礼のないようにね!」
セー君は分かっているよ、とうなずく。
そうだよね。
戦場でそばにいたわけだから、わたくしなんかよりも太子殿下とは気心が知れているものね。
「頑張るよ。それほど遅くはならないと思うから、戻ったら夕食を一緒に食べよう。それまでは好きに過ごして」
「分かったわ」
朝食を終えると、王宮へ出立するセー君を使用人みんなと見送る。
「それじゃ、姉さん。行ってきます」
「いってらっしゃい」
セー君がそっと一歩踏み出すと、頬に口づける。
それを見ていた使用人誰かが、キャー!と黄色い声を上げた。
「へ!?」
みるみる顔が熱くなってくる。
「せ、セー君……今……」
「いってきます、姉さん」
セー君はくすりと微笑めば、赤面するわたくしをその場に残し、颯爽と去って行った。
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