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第三話 ライラ

二十二話で完結予定!よろしくです~


 ペロペロペロペロペロ……。


「やっ、やめろっ!……やめっ……ひっ!……あっ……はぁっ!!あっ……んっ……あんっ!……」


 女は初めのうちは抵抗していたが、徐々に回復魔法が効いてきて心身が心地よく火照っていき、最終的には快感に従い体をくねらせ、僕の舌のなすがままの状態になった。

 僕も気持ち良さそうな彼女を口内に感じ嬉しくなる。彼女の快楽は僕の快楽にもなる、それがこのスキル「のみこむ」の良いところだ!


 そして回復魔法と共に十分に女に奉仕し終わると、僕はゆっくりと彼女を口から出した。

 もちろん巻きついた時に与えたダメージもしっかり回復させている。それは快感を共有させてくれた彼女へのお礼でもある。


 彼女は地面に足をついた一瞬だけフラッとしたが、その後はしっかりとした足取りで僕に歩み寄り首元に抱きついてきた。


「こ、こんな気持ち良い事されたの私……は、初めて……」


 顔を僕にくっつけながら艶かしい笑顔を見せてくれる彼女。それを見て少し考える。


 僕は今まで思っていた。僕がこれほどまで人間の女を求めるその原動力……それはきっと『性欲』だろうと。


 でも、最近は少し違和感を感じている。本当に純粋な性欲だけだろうか?

 僕は何か、僕の心のどこかにある一種の使命感の様なものに突き動かされているような気がしてならないのだ。

 それが僕が人間だった頃のモノなのか、それともこの強力な力を持つ大蛇のモノなのかは……両方の記憶を持たないので分からない。いつの日かそれを知る時が来るのだろうか?



「あ、あなたの名前は?」

 女が聞いてきた。

「僕はヌメタロー。君は?」


「私の名はライラ。私は人であれ蛇であれ強いと感じた相手には教えを乞うべきだと思ってるんだ。ヌメタロー、あなたが良ければ私を弟子にしてもらえないか?」


 ライラというその女性は僕を真っ直ぐ見つめて言い切った。


「ふふ。弟子かー、悪くないね。まあ僕はこんな体だから何を教えればいいかよく分かんないけどよろしくねー、ライラ」


 やった!なんか知らんけど仲間が増えたぞ。僕は嬉しくなった。


「ところで僕らは今お金がなくて困ってるんだ」

「……僕ら?」


 他に誰が――というライラの疑問に、僕は舌を人差し指の様に動かし、後ろに隠れていたアルティーナをさした。


「あ、あの……」


 やや怯えた様な仕草のアルティーナ。

 対してライラの方はというと……え?


 口角を上げて何やら獲物を狙う肉食獣の様な目でアルティーナを見つめている。え、どしたのライラ?怖いんだが!?


 ライラはツカツカとアルティーナの正面まで歩み寄り、アルティーナを挟んで僕の首元にダッ!と手をついた。いわゆる壁ドンみたいな格好だ。

 え、何この人……。


「君、名前は?」

「あ、わ、私はアルティーナといいます」

「アルティーナか、良い名前だ。歳は16ぐらいかな?かわいいね……」

「と……歳はそう、です。でも私は、可愛くなんて……ない、です……」


 なんか突然ライラはアルティーナを口説き始めた。ええ!?


「アルティーナ、私がこんなに惹かれているんだ。魅力がないハズがない」


 そう言うとライラはアルの髪をなで顎をクイッと持ち上げそのまま唇を合わせた!しばらくその状態が続いた。

 アルは涙目になって慌てふためいていた。


 ……うーむこれって止めるべき?僕は判断に迷ったが結局何もしない事にした。

 なぜかというと、アルがとても気持ち良さそうな表情でライラを抱き返していたからだ。


 僕は二人を真横から見てこう思った。


 ――美しい。と。


 どうやら二人の接吻が終わったようなので話しかけてみる。


「もういいかな?」


 二人は笑顔で見つめ合ったままだ。

 しばらくそのままの状態が続く。

 ライラは妹を見守るような目線でアルを見ていて、一方アルはライラを頼れる姉のように見上げている。それからアルがちょっとフラつきながら僕に寄りかかってきた。


「はぁあー……ライラさんとのキス、気持ち良かったですー。……でもやっぱり一番はヌメタローさんです」

 それを聞いたライラはちょっと悔しそうな表情を浮かべたが、やがてゆるい笑顔に変わった。


「むー……まあ師匠なら仕方ないか」


 師匠かー、そう呼ばれるのも悪くないねえ。

 僕はライラの事をもう少し深掘りする事にした。


「ライラ、さっきも聞いたけどやっぱり君は修道女じゃなく武道家か何かなのでは?」


「……やっぱり隠し通せないかー。そう、私は王室で騎士団の団員だったの!」

「へー、やっぱり」


「私は女だけど小さい頃から男に興味がなく女の子が好きだった。でも騎士団員はほとんどが男だろ?」

「まあ、そうだろうね」


「ずっと欲求不満だった私はある時、女性しかいない修道院というのがあると聞いて迷わず修道女になったよ。私、やると決めたら行動早いからね!」


 僕はニッコリ笑って頷く。うん、欲望に素直なのは良い事だ。かくいう僕もそうだ。


「うふっ。あの頃はめぼしい女の子を毎日食い漁っていたなー」

 ライラは舌をチラッと出して過去に重ねた情事を思い出しているようだった。


 話を聞きながら僕は自分の顔がニヤつくのを感じていた。僕は基本的に素直な人間が好きなのだ。


「そうだ!師匠たしかお金がないって言ってたよね?じゃあうちのネイパリル修道院の用心棒として働くってのはどう?男子禁制だけど師匠は蛇だし大丈夫だと思う!」


 お!なかなか良い提案だ。

 ネイパリル修道院といえば攻撃も回復も出来る聖魔法の総本山で有名だし、何より女だらけの職場!僕にとっても魔道士のアルティーナにとってもメリットしかない。よーし!


「僕はもちろんオーケーだ。アル、君はどうかな?」

 僕が尋ねるとサッと手を挙げてアルは即答した。

「もちろん私もライラさんとヌメタローさんについて行きます!」

 うん、じゃあそういうことで。


「じゃ、早速ネイパリルへ案内するよ。ところでヌメ師匠一つ聞いていい?」

 ヌメ師匠!?何とも微妙な響きだ。


「何だい?ライラ」

「アルティーナ……アルがお金が必要なのは分かるけど師匠もそうなの?その姿で何に使うわけ?」


 んー、酒とタバコ――と言ってしまうと何となくダメ人間、いやダメ蛇だと思われてしまう。ちょっとカッコつけておこう。


「僕はこの通り今は蛇やってるけど元々人間なんだよね。だから自分の正体が知りたくて手掛かりを探してるんだ。お金はその過程で必要だったりするだろうしね」

「ふーん。自分の正体かー……アテはあるの?」


「んー、少なくとも今の大蛇の体に関しては、誰かが正体を知ってると思うんだよね。だからどこかのパーティーの一員として同行していれば、いつか自分の正体を知る手がかりが掴めるんじゃないかなーと思って今までホーリーというパーティーにいたんだ」


「なるほどね。じゃあいずれは修道院から旅立っちゃうわけかー」

「まあね、でもしばらくは厄介になるつもりだよ。よろしくー」


 等と会話を交わしていると、どこからか町の住民達が僕の噂を始めた。

「おい、あれが噂の大蛇ヒーラーだぞ……」

「なんでも女しか回復させないとかで我儘すぎて勇者パーティー『ホーリー』を追放されたって話だ」

「ぎゃはは。そりゃー追放されるわー。てかそんなヤツどのパーティにも入れね―だろ!?」


 僕はその話を聞いて困った顔で舌を出し、鼻の辺りをポリポリと掻いた。

「フーッ……」

 そしてやれやれとため息をつく。もう噂が広まっているのか。

 するとアルティーナが珍しく強気に文句を言った。


「そんな事ないです。ヌメタローさんは男性のバルガスさんだって巻き付いてちゃんと回復させてましたもん。それなのに文句ばっかり言って……悪いのはあの人達の性格ですーっ!」


「何々?師匠は元いたパーティーを追放されたの?」

「はい、ひどいもんです!」

 アルはライラにこれまでの経緯を説明し始めた。


 ――実を言うと、僕も自分の方が非が多いような気はしていたのだが、そこまで「ホーリー」に在籍することにこだわる必要もなかったので態度を改めたりはしなかった。


「あはははっ。ヌメ師匠面白いね!でも多分それ師匠が悪いよ」

 ライラは声を上げて笑いながら僕にそう指摘してきた。

「君もそう思うかい?もうちょい空気読んで周りに合わせとくべきだったかな?」

「えーっライラさんホントにそう思うんですか!?それでも弟子なんですか!」

 アルはちょっと怒ってライラにそう言った。


 ライラはアルをなだめるような仕草をして弁明した。


「ははっ、いやー、集団行動って意味じゃ問題あるけど、私そういう自分の芯を持った人って好きだよ!あ、人じゃなくて蛇だけどね」


 ライラはやはり男っぽい感覚の持ち主のようだ。

 ……それにしてもこの二人は随分、性格が優しいというか生ぬるいというか。ま、でも悪くないなー。


「二人共、改めてよろしく」


 実は僕はこのときちょっと嬉しかった。


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