閑話休題
「今日は、これで終わり。二人とも、もう帰りな。お母さんが心配するよ。」
源次郎は、そう言って幼い孫二人を促した。エーッと二人は残念そうだ。窓の外に、赤い夕焼けが見えた。
「おじいちゃん、明日も来ていい?」精次が聞いた。
「いいぞ。でも、宿題してからだぞ。」
わかった、と二人は声を合わせ、玄関先で見送る源次郎に手を振って、家に向かって走り出した。家に帰った二人は、会社から帰ってきた父の祐司を待って、4人で夕食を取った。
「パパ、おじいちゃんにご先祖様の話、聞いてるんだ。」ご飯を食べながら、翔太が口をもぐもぐさせながら祐司に言う。
「こら。口に食べ物入れてる時は、静かにしろ。へえ。でも珍しいな。親父がそんな話をするなんて。俺も知らんな。」祐司もどこか、興味を覚えたようだ。
「パパにも話してあげるよ。」翔太が、食べ物を飲み込んで、そう言った。
「明日、朝早いから、また今度な。」
夕食を食べ終わった祐司は、大きなあくびを一つして、立ち上がった。
「あなた。お風呂先入る?」
「うん、そうする。ママ、久しぶりに一緒に入るか。」
「馬鹿なこと言ってないで、早く入ってきて。面倒くさい人ね。」京子は祐司を軽くにらんだ。はいはい、と祐司は風呂場に向かって歩いていく。
その夜、二人の兄弟はぐっすりと眠りについた。
次の日の朝、二人は朝早くから源次郎の家に向かった。
「おじいちゃん、おはよう!」
「おや、今日は早いな。今日は一段と暑い日だな。よく眠れたか?」源次郎は、首に巻いたタオルで汗をぬぐった。
「おじいちゃん、昨日の続き!」
玄関に靴を脱ぎ棄て、精次が源次郎の手を引っ張った。そんな様子を見た翔太が、
「靴揃えないと、ママに怒られるぞ」
そう言って、精次の分まで靴をそろえて廊下に上がった。そんなことに見向きもせずに、精次は早く早く、と源次郎をせかす。
居間に着いた2人に、源次郎は冷たいカルピスを出し、話始めた。