赤ちゃん、お散歩に行く
やっぱり健康が一番だ!
お金かからないし。
退院後も一日休みを命じられた私は本日ようやく出勤だ。
竜一を連れて保育園に到着すると保育士さんに声をかけられた。
「実は竜一君がお休みの間に知らせが出たのですが、今日、近くの公園にお散歩に行くことになったんです」
そういえば竜一を拾ってから保育園か家か…病院しか行ってないな…。
「竜一も喜ぶと思うので連れて行ってもらえますか?」
竜一を下ろしながらお願いした。
「わかりました。ではお預かりしますね」
保育士さんと笑顔で向き合うもはたと気付いた。
「怪我だけはさせないようにお願いします!!」
実費の恐怖だけは避けたい!
保育士さんの手を両手で掴み切に願ったのだった。
――――――――――――――――――――
どうやら今日は公園に行くようだ。
公園か…懐かしいな…。
昔は毎日のように通っていたからな。
喧嘩で呼び出されて。
もちろん全員伸してやったけど。
公園に思いを馳せているとセンコーがベビーカーを持ってきた。
「竜一君はこれに乗って行くからね」
さすが俺。専用のマイカーが用意されているとか。
分かっているじゃねえか、センコー。
お前等は歩けよ、愚民共!
「竜一君のテンションが異様に高いわね」
「お散歩が余程嬉しいのかしら…」
やってきた公園は小さいながらもたくさんの遊具があった。
ブランコか…あの木の板で頭殴ったあとチェーンを首に巻き付けて締め上げた思い出しかねえな。
支えの鉄の部分も頭打ち付けてやれば気絶させられたし、ありゃあなかなかいい武器だったぜ。
回る遊具か…穴んところに奴等の首を入れて回して遊んだな。
あいつら滅茶苦茶吐いてたな。
懐かしいぜ。あの頃が。
当時の出来事に思いを馳せていると俺の目の前に葉っぱが差し出された。
「竜ちゃん。キレイな葉っぱ見つけたからこれあげる」
彩音が俺の腹の上にゴミを置いていきやがった。
くれんならもっといいもんくれよ。
それを見ていたたっくんが今度はダンゴムシを持ってきた。
「ほら、竜、ダンゴムシだぞ。いいだろう~」
ドヤ顔しているが全く羨ましくない。
むしろ赤ちゃんの視点からのダンゴムシはデカくて気持ち悪い。
「一つやろうか?」
そういうとたっくんはダンゴムシを俺の腹の上に…乗せんな!!
俺が手で払うとダンゴムシは丸まりながら俺の足元に転がり着地した。
足を振って振り落とそうとするもダンゴムシは体を広げて俺のズボンの中目がけて登って来やがった!
「あぎゃああああああ!!」
たくさんのヤンキー共を伸した公園の思い出は、ダンゴムシが体を這う恐怖によってかき消されたのだった。
――――――――――――――――――――
「…なんだか竜一が疲れ切っているみたいですけど…」
「竜一君、ダンゴムシが怖かったみたいで…」
は?ダンゴムシ?
ぶふっと吹き出してしまい竜一に睨まれた。
「そっかそっか。竜一にも怖いものの一つや二つあるよね」
「あぶう!【怖くねえ!】」
ムキになる竜一をなだめながらふと思った。
鬼も怖くないこいつがダンゴムシでビビるとか…こいつの恐怖の基準は一体どうなってんだ?
読んで頂きありがとうございます。