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赤ちゃん、焦る(後編)

 何度か試しているうちにある文章が目に付いた。


 『指紋認証を使用するかパターンを入力』


 指紋認証って何だっけ?


 俺は自分の手を見た。

 指紋って指の模様の事だよな?

 そういえば咲子が現代の人間には指に魔法がかけられていて指が鍵の代わりになっているとか何とか。

 不思議がる俺を面白がって咲子が何度もスマホの穴に指を当てて画面を開いているのを見た。


 なにが魔法だ!ただの指紋じゃねえか!


 まあ指紋で開くっていうだけでも十分魔法のようなのだが…。


 こいつももっと早く教えろや!!


 スマホに八つ当たりをしたあと、咲子の近くまでスマホを引きずると指を穴に当てた。


 画面が一瞬で切り替わり電話のマークが目に付いた。


 これだ!!


 しかし前回は思うように動いてくれなかった。

 だが今は反応してくれないと困る!


 俺は手を広げて電話のマークが指に当たるようそっと近付けると画面が切り替わった。


 誰でもいいから出てくれ!


 俺は一番上にある欄に指を当てるとスマホから『プルルルル…』と音が鳴った。

 どの時代でも電話の音は一緒なんだな。としみじみ感じていると電話から『生川さん?』と声が聞こえてきた。


「あうああだぶう!!【咲子を助けてくれ!!】」

『え?竜一君?』

「あうああうあだ!!【咲子が倒れたんだ!!】」


 一生懸命叫ぶも咲子以外は俺の言葉が分からない。

 しかし電話の主は異変を感じてくれたのかすぐに来てくれると言ってくれた。


 数分後、家の扉が開かれ入って来たのは…。


「あだう!【眼鏡!】」

「生川さん!?」


 眼鏡は倒れている咲子の額に触れた。


「すごい熱だ。救急車を呼ばないと」

「あうあ…【咲子…】」


 眼鏡がスマホを取り出し救急車に連絡している間、俺は咲子の服を掴んで咲子の名前を呼び続けた。



 救急車が到着し連れて行かれそうになる咲子にしがみついた。


「あだうあう!【俺も行く!】」


 困惑する消防隊員を無視して俺は咲子の服を掴み続けた。


「あだうあう!【俺も行く!】」


 もう一度訴えると眼鏡が俺の頭を撫でた。


「じゃあ僕も行くから一緒に行こう」


 眼鏡の笑顔は本物だと判断し、咲子から手を離すと眼鏡が俺を抱っこした。

 そして俺は初めて…救急車に乗ったのだった。

 救急車に連れて行かれる奴は雑魚だけだと思っていた俺だったが、まさかこんな形で乗るはめになるとは…。



 ――――――――――――――――――――



 目を覚ますと見慣れない天井が。


「目が覚めた?」


 顔を横に向けると優しく微笑む相沢さんがいた。


「私…どうして…え?…なんで?」


 状況がわからず困惑していると相沢さんが説明してくれた。


「竜一が…?」

「うん。凄く必死で生川さんの事を助けようと頑張ってたよ」


 私の隣で私の服を掴みながら眠る竜一を見た。


「今は疲れて眠っちゃったみたい」


 小さな体で大変だっただろうに。

 自分を助けるために竜一が頑張ってくれたのだと思うと自然と笑みがこぼれた。


「竜一君って不思議な子だよね。まるで僕達の言葉を理解しているみたいで」


 そりゃあ中身はただのヤンキーですから…。


「会社には休みを伝えておくから今日はゆっくり休んで」


 部屋が少し明るくなっているのに気付いた。

 朝まで付き合わせてたとか申し訳なさすぎる!


「今日も仕事なのにこんな時間まで付き合わせてしまい申し訳ありませんでした」

「気にしなくていいよ。役に立てて嬉しかったし」


 頭を下げる私を笑顔で返してくれた。

 相沢さん…神か…。


 相沢さんが退室すると竜一の寝言が聞こえてきた。


「あうあ…」


 【咲子…】か。


 竜一も心配かけさせてごめんね。

 助けてくれてありがとう。

 竜一の頭を優しく撫でた。


 それにしても一泊入院か…。

 今月の給料がマジヤバいな。





読んで頂きありがとうございます。

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