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赤ちゃん、新入りで遊ぶ

『これは廃墟に肝試しにきていた青年達の録画した映像だ』


 俺は今、咲子と恐怖映像なるテレビ番組を見ている。

 昔は写真に変なものが写ったとか、霊媒師がエクソシストの真似事をするなどの企画が多かったのだが…現代は一味違う。


『無邪気に廃墟を探索する彼ら…』


 そう…スマホがあるこの時代。


『そんな彼らの映像に映り込んだ女の姿…次の瞬間!』

「あぎゃああああああ!!」

「あんたの声でビビるわ!」


 一枚絵だった恐怖写真が今はリアルな恐怖動画になってしまったのだ!



 ――――――――――――――――――――



「あんた鬼にも喧嘩売るような奴がなに幽霊ごときで怖がってんのよ」

【あいつらはな、殴っても気絶しねえんだ!】


 そりゃあ透けてるからね。

 ていうかこいつの怖い基準って…そこ?


「でもあんたダンゴムシも怖がってたよね?」

【お前も一度虫に体を這われてみろ!ヤンキー共と対峙する時の比じゃねえぞ!】


 私はヤンキーと対峙するのも嫌だけど…。


 つまりこいつは自分の手でどうにか出来ない相手が怖いと。


【やべえ…夜、トイレ行けねえ…】


 呟く竜一に呆れた。

 あんたオムツだから漏らし放題だよね。



 ――――――――――――――――――――



 くそっ!咲子の奴、昨日の夜はあんな怖いもん見せやがって。

 子供に見せるもんじゃねえだろ!


 保育園で咲子の顔を思い出しながらおもちゃを投げつけていた。


「遊ぼう…」


 あん?

 後ろから突然声をかけられて振り返るとおかっぱ頭の着物姿の幼児がいた。


【お前、新入りか?】

「ねえ、遊んでよ…」

【だっせえ恰好しやがって。遊んで欲しいならもっとカッコ良くなれ】

「どうしたらいいの?教えて?」


 幼児は俺の目の前に屈んだ。


【あん?まずはそのおかっぱ頭を変えろや】


 幼児が自分の髪に触れて手で髪を結んでみたりしていたのだが…ちょんまげかよ。


【ちょっとこっち来い!】


 見かねた俺は頭を差し出す幼児の前髪を横に流した。


【あとは後ろを結い上げてみろ】

「出来ない…」

【出来ねえじゃねえ。やる気がないだけだろ。出来るまで遊ばねえからな】


 ただでさえ俺は機嫌が悪いんだ。

 てめえのことくらいてめえで何とかしろや。


 すると数分もしないうちに「出来たよ」と幼児が話しかけてきた。


【おめえやるじゃねえか】


 なかなか見どころがありそうな奴だな。


 やっぱり着物といえばこれだよな。


【あとは迫力が足らねえ。遊ぼうとかお願いするから舐められんだよ。『なめたらいかんぜよ!』って言ってみろ】

「なめたらいかんぜよ…?」

【ダメだダメだ!全然迫力がねえ!見てろ。こうだ】


 俺は幼児にメンチを切った。


「あぶうあだぶう!【なめたらいかんぜよ!】」

「すごい!かっこいいね!」

【これが出来ればおめえも一流の女になれるぜ。ま、精進しろや】

「うん。頑張る。ありがとう…」

【おう】


 振り返るとスーッと姿が透明になり消えていく幼児の姿が…。


 そういえば俺、あいつと普通に会話してたけど…なんで会話出来たんだ!?


「あれ?竜?さっきまで一人でしゃべってたけど、今度は固まってる?先生。竜が動かなくなっちゃった」


 先程までの不可解な現象に俺は固まってしまったのだった。



 ――――――――――――――――――――



【ゆ…幽霊なんか大したことなかったぜ】


 保育園の先生から固まったあと、しばらく震えていたと報告受けてますが。

 強がる竜一にやれやれと溜息を吐いた。


【俺はもう幽霊なんか怖くねえ!むしろこっちから遊んでやるわ!】

「はいはい」

【なんたって俺は幽霊と遊んでやった男だからな!】


 家に着くまで竜一の強がりに付き合ったのだった。


 だが私も竜一も知らなかった。

 この日から、メンチを切る極妻のような座敷童が出現するとSNSで騒がれるようになったことを…。





読んで頂きありがとうございます。

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