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クロレキシ  作者: 赤森千穂路
序章 戦いの予兆
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第4話 裁き

 その日の授業が一通り終了し、部活動が始まった頃。怜矢と陸玖は中学校の校舎裏にやって来ていた。その理由はただ1つ。健生から今日も今日とて金をたかる為だ。

 健生にはいつもと同じく、放課後に校舎裏に来るように事前に言ってある。


「チッ……遅ぇな……」


 と怜矢の隣で、陸玖が小石を蹴りながら舌打ちした。陸玖が蹴った小石はガサッ、という音を立て、2人のすぐ側にある草むらへと姿を消した。


 校舎裏が人目に付きにくい理由が2つある。1つが、校舎のすぐ横に森があるからだ。高い木々が生い茂る森と面した校舎裏は昼間でも薄暗い為、人目に晒されにくい。

 もう1つが、校舎裏にある裏庭が整備されていないということだ。年に1度、用務員が整備するらしいが、今見た限りでは年に1度どころか、数年は整備が行われていないように見える。怜矢たちが立っているコンクリートの部分以外は雑草がぼうぼうに生え、一面真緑に染まっていた。

 全校集会の時の教頭の話によれば、本来ならばここには芋などを植える小さな畑のようなものがあったらしい。しかし、怜矢たちの膝上ほどまで伸びた雑草に覆われていれば、その話を聞いていない限り、畑の存在など誰も知り得ないだろう。


 つまり怜矢たちが今いるこの場所は、他人にバレないようにしなければならないことをするには絶好の場所なのである。

 しかしそれは、怜矢と陸玖にとってだけではなかったことを、2人は今日知ることとなる。


「やぁ」


 突然、2人のどちらでも、健生のものでもない声が背後から聞こえて、驚いて後ろを振り返った。そこには知らない少年が立っていた。

 足音などは一切せず、健生が早く来ないかと気を張り巡らせていた怜矢が察知することができないほどの気配の無さ。

 そして、目の前の少年が放つ何とも言い難い異様な空気。

 彼がただ者ではないことは一目瞭然だった。


「お、お前、誰だよ」


 怜矢が震える声で訊くと、少年は口元に薄らと笑みを浮かべて、


「僕は神様だよ。君たちの罪を裁きに来たんだ」


 と優しく、しかし背筋をゾッとさせるような冷たさも含んだ声で怜矢の質問に答えた。


「は……はっ! あ、頭イッてんじゃねぇの!?」


「神様? んなモンがいるかよ。バカが!!」


 陸玖と怜矢は少年が言ったことを全力で否定する。身振り手振りと声量を大きくし、頭の中で残響する少年の気味の悪い声を掻き消すように。

 陸玖は怜矢の目から見て、なんとか平静を装えていたが、怜矢自身は先ほどよりも声を震わせてしまっていた。


 少年は怜矢たちの必死な叫びを鼻で笑い飛ばすと、右手を前に突き出し、怜矢たちを指さした。


「頭がイッてる、バカ。その言葉、そっくりそのまま君たちに返してやるよ。よくお似合いだ」


 前に伸ばした右腕と、下ろしていた左腕をゆっくりと左右に広げる。そして、今まで滑らかな曲線を描いていた少年の唇が上下に開かれ、白い歯が見えるのと同時に、彼は怜矢たちに宣告した。




「さぁ、裁きの時間だ」




 その瞬間、少年の全身から黒い煙のようなものが噴き出した。それはまるで風に乗ったように怜矢たちに向かって流れてくる。

 その黒い煙のようなものに包まれた途端、怜矢は酷い頭痛に襲われた。それだけではなく、続けて吐き気、目眩。次第には視界までもがグラついて見えてきてしまった。


 突然の激しい体調不良に襲われつつも、怜矢は少年に尋ねる。


「な、何する気だ……!?」


「変なことばっかりぬかしやがって……ぶっ殺すぞ!!」


 隣で陸玖がこう言ったものの、怜矢は少年を殺すどころか触れる事すら無理だと悟っていた。


 何かが、起こされる。あの少年によって。




「妖魔、招来」




 少年の詠唱と同時に、彼を中心に地面に黒い魔法陣が現れた。魔法陣には謎の文字が描かれており、少年を中心に時計回りにゆっくりと回転している。

 大気が揺れ、周囲の伸び切った雑草たちがガサガサガサと無駄に大きな音を立てる。普段では意識しないような自然現象の音ですら、今の怜矢の心を掻き乱すには十分な威力を持っていた。


「来い、ナギ」


 少年の2度目の詠唱と同時に、怜矢たちと少年の間に新たにもう1つ、魔法陣が現れた。先程の魔法陣との相違点は、今度の魔法陣は薄紫色をしており、地面に描かれておらず、怜矢の腰の上辺りの空中に描かれている、という点だろう。


 そして少年の呼び掛けに応じ、紫の魔法陣から何かが飛び出してきた。それと同時に、魔法陣はどちらも消滅した。

 その何かは怜矢と陸玖の前に二本足でズン、と地響きを起こして着地した。

 魔法陣から現れた存在、ナギは3メートルはあろうかという巨躯で2人を見下ろし、恐ろしい形相で睨みつける。

 見た目は狼の頭をした熊が二本足で立っている、という表現が1番近いだろうか。ただし、体毛は薔薇のように鋭く尖っており、その色は薄茶色だ。

 グルルル……と喉の奥で唸る様は、まるで獲物を前にした肉食動物のようであり、怜矢はナギの発する威圧感に圧倒され、尻もちをついてしまった。


「ばっ……ば、化けっ、もの……!!」


「んだよ、コイツ……!?」


 一方の陸玖は、怜矢のように尻もちをついたりすることはなかったが、普段よりも口数が少ないことから動揺していることは間違いない。


 この時2人は意図せず、全く同じこと事を企んでいた。

 それは、この場から逃げる事。一刻も早く逃げなければ自分たちの命がないと悟ったのだ。

 2人は目配せをし合うと同時に、目の前の怪物たちに背を向け、一目散に逃げ出した。背中にビリビリと感じるほどの圧が怜矢と陸玖を襲う中、2人は振り返ることなく必死に走る。


「言ったよね? 僕は神様だって……」


 しかし、そんな2人の考えを読んでいたのか、怪物を呼び出した少年は焦るような素振りを見せずに2人に呼びかける。


「僕らから逃げられるとでも思った? 残念だったね」


 と、抑揚の無い声を発すると、走り出した怜矢と陸玖に向かって右手を伸ばし、


「“金縛(かなしば)り”」


 と詠唱すると、伸ばした右手をグッと握った。途端、雷に打たれたような衝撃が2人を襲った後、彼らの体に異変が起こった。


「っ!?」


「……!?」


 怜矢は体をピクリとも動けなくなっていたのだ。走る体勢のまま体は固定され、短く声を発することすらできない。まるで、金縛りにあったかのように。

 唯一動かせるのは両の目玉だが、それを動かしたところでどうにもならないだろう。黒目を左に向けると、陸玖も自分と同じように動けなくなっているようだった。そして、陸玖も目玉を動かせることに気付いたようで、彼の目玉が怜矢の方を向いた時、


「さぁ、ナギ。とっとと懲らしめてやろう」


「あぁ。そうだな」


 少年とナギがゆっくりと自分たちの方へと近付いてきた。神(自称)と怪物は怜矢と陸玖の正面に回り込み、拳を構える。


「さぁ……覚悟はいいか?」


 少年のその声に合わせて、ナギと呼ばれた怪物は紫色の、少年は黒色のオーラのようなものを振りかぶった拳に纏わせた。



 死。



 動けない怜矢の頭と心が、この1文字に無惨にも塗りつぶされた。目の前が真っ暗になるというのはこういうことを言うんだなと思ったのを最後に、怜矢はゆっくりと瞼を閉じ、痛みを待ったーー。




「ま、待て!!」




 後ろから、怜矢の聞き慣れた声が聞こえた。勿論、陸玖にとっても聞き慣れている筈の少年の声だ。その声の主の気配はどんどん近付き、やがて2人の間を通り抜けると、手を大きく広げ、2人を庇うように怪物と少年の前に立ち塞がった。


「ふ、2人には……手を、出させない……!!」


 その声の主は、佐藤健生。2人が毎日のように暴力を振るい、金を巻き上げていた小学生の時からの同級生だった。


 怜矢は自分たちを庇うようにして立っている健生を見て、目を疑った。

 何故毎日のようにいじめているアイツが。

 何故自分たちのことを嫌っているはずのアイツが。

 何故、もう自分たちを友達とも思ってないであろう、アイツが。

 目以外を動かせないため表情からは読めないが、恐らく陸玖も同じことを思っているだろう。


「……なんでそんなヤツらを庇う? ソイツらは君のことをいじめてたんだろ?」


 と、少年が健生に問う。その目には冷酷な一閃が引かれており、怜矢たちに情けをかける気等一切ないことが窺えた。

 健生は少しの沈黙の後、言葉を選ぶようにゆっくりと、


「……確かに、その2人は僕のことをいじめた……毎日毎日殴られたり蹴られたり、お金を取られたりした……けどっ!」


 健生は何かを振り切ったかのように顔を上げ、少年を真っ直ぐと見据えると、ハッキリとした口調でこう言い切った。


「僕は2人を見捨てることはできない……!」


 怜矢は息を呑んだ。そして、一気に疑問が湧き出す。何故、確実に恨みを持っているであろう自分たちに対して非常になれず、見捨てることができないのかと。


「……お人好しだな」


 少年は健生の考えを尊重したのか、手に纏わせていたオーラのようなものを消した後、拳を下ろした。その隣でナギも少年に続いて拳を下ろす。


 健生は2人が戦闘態勢でなくなったのを見て安心したのか、はぁぁ、と大きくため息をこぼした。

 その直後、少年がパチンと右手の指を鳴らすと、怜矢は体を動かせるようになっていることに気付いた。掌を開いたり閉じたりして、体に何の異変もないことを確かめると、安堵のため息を吐く。

 陸玖は怜矢の隣で、肩を前後に回して体の調子を確認しているようだった。


「……よかったよ、2人とも」


 健生が2人に安心したような顔で声をかけてきた。普段から散々な目に遭わせている相手に優しい言葉をかけられ、かなり気まずい。


「あ……えーと、その……」


 怜矢が健生から目線を逸らし、なんと言おうかと悩んでいると、


「……なんだよ」


「え?」


 不意に、今まで黙り込んでいた陸玖が口を開いた。その声は普段よりいっそう低く、彼の機嫌が余程悪いことを怜矢は悟った。

 その悪い予感は的中したようで、陸玖は鬼のような形相で2歩ほど前に出ると、健生の胸ぐらを乱暴に掴み、


「なんで俺たちを守った? なんで俺たちに背を向けた!? 俺たちに恩を売って何がしたいんだよ、テメェは!!」


 と、怒鳴り上げた。肩で大きく息をする陸玖を前に、始めは少し怯えた様子を見せた健生であったが、次第に顔を俯け、何かを考え出した。

 そして、次に怜矢たちに向けた顔は、先ほどまでの安心したような顔ではなく、悲しそうな、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「……僕は……僕はただ……戻って欲しかっただけだよ。僕と友達だった頃の、2人に……」


 健生の言葉に、陸玖は石のように固まってしまった。陸玖が健生の胸ぐらを掴んだままピクリとも動かずにいると、健生が言葉を続ける。


「なんで……どうして、僕のことをいじめたの? 僕が何かした? もし本当にそうだったら謝るから、きちんと話してよ……」


「……お前に……お前に話したって分かりっこねーよ!! 俺たちみたいな受験に失敗した奴らの気持ちが!! 受験に失敗して、周りの受験に挑みすらしてない奴らからは『落ちた』って理由だけで馬鹿にされて!! 親には失望されて……! そんな俺たちの気持ちが……家族と幸せそうに暮らしてるお前なんかに分かるもんかよ!!」


 そう、陸玖の言う通りだ。

 中学に入学する前、2人揃って私立の学校の受験に落ち、公園でブランコに座りながら絶望感に襲われていた時に聞こえてきた笑い声。

 それは、両親とどこかへ出掛けていく健生のものだった。

 許せなかった。自分たちは必死な努力の末に両親に失望され冷たい態度を取られているのに、何故努力もしていないアイツがあんなに笑って、楽しそうにしているのか。

 そんな彼に怒りが込み上げた。だからいじめた。そして、中学ではある程度の地位を確立したかった。その土台がどんなものでも良い。勉強ではなく、運動でもなく、弱者を虐げた先にあったものだったとしても。

 だが、2人のその願いは叶わなかった。受験に落ちたことが同じ小学校だった者伝いに学校に知れ渡り、今の中学でそのことを知らない者はいない。自分たちよりも遥かに馬鹿な奴らに見下された2人のプライドはズタズタになった。

 それが健生へのいじめをエスカレートさせ、遂には暴力だけでは飽き足らず、金までもをせしめるようになり、今に至るという訳だ。


 周囲の評価のせいで蓄積された苛立ちを何かにぶつけたかった。その点に関して共感を覚えたから、2人は一緒に健生という玩具で遊び、ストレスを発散させていたのだ。


「健生くんは分かりたくもないだろーよ、君みたいな奴の気持ち」


「なっ……」


 再び息を荒げていた陸玖に、少年が冷たく言い放った。怜矢も突然の少年の声に、思わず彼の方を見る。

 怜矢が目を向けた時、少年の中性的な顔は怒りの表情で歪んでいた。


 少年は陸玖の手を健生の胸ぐらから雑に引き剥がすと、少し痛そうに手を押さえる陸玖を睨み付けた。


「君みたいな、受験に落ちたことを言い訳にして、他人を傷付けて鬱憤を晴らすような奴の気持ちなんか、1ミリも理解したくない筈だ。健生くんに限らず、誰だってな」


「ぐ……!」


 陸玖は悔しそうに歯噛みし、奥歯をギリリと鳴らした。少年の言葉に言い返せないようだった。

 そんな陸玖に、少年は説教染みた言葉をかけ続ける。


「君にとっては君自身のプライドは大事なものなのかもしれないけど、他人からしちゃあそんなの道端の石っころと同じくらい興味ないんだよ。だから自分のプライドが傷付けられたからって、他人を傷付けちゃ駄目だ。寧ろ理不尽な痛みは、君が1番分かってるんじゃないのか?」


 少年の言葉に、陸玖は目を見開いて驚いた顔をした。いや、何かに気付いたのかもしれない。とにかく、ハッとしたような顔をしていた。


 すると陸玖はクルリと健生と少年に背を向け、怜矢の方を向いた。その時の彼の顔を見て、怜矢はギョッとした。

 再び悔しそうに歯噛みする陸玖の目尻に小さな水滴が浮かんでいたのだ。


「……帰るぞっ、怜矢」


「あ……お、おう……」


 陸玖は振り返ることなく、早足でその場を去っていく。それに追いつけるよう、怜矢は駆け足で陸玖の後を追った。

 健生たちが追いかけてこないかと思い、何度か後ろを振り返るが、健生も少年も、その後ろで2人とも同じようにこちらを見つめている怪物・ナギも怜矢たちを追いかけてくることはなかった。


 やがて角を曲がって健生たちの姿が見えなくなった時、陸玖は立ち止まった。


「な、なぁり……」

「うるせぇ話しかけんな」


 食い気味に乱暴な言葉を被せてきた陸玖は、両手で目の辺りを拭った。

 両手を下ろしため息を吐くと、


「……俺は」


「……うん」


「俺は、見返してやるよ。俺からの理不尽な痛みは、俺に理不尽な痛みを与えた奴らに与えてやる。……健生に謝んのはその後だ」


 と宣言した彼の目付きは険しいながらも、どこか明るい光が宿っているように見えた。

 幼馴染の新たな目標を知った怜矢は、ならばと思い、たった今決心したことを目を少し赤くした彼に告げる。


「……分かった。俺も付き合うよ」


「あん?」


「俺だって……見返してやりたい」


「……勝手にしろよ」


 そんなやり取りをした後、2人の少年は夕焼け色に染まる学校を後にした。心に薄汚れた、熱い炎を灯して。






◇◆◇◆◇






 陸玖と怜矢が校舎の影に隠れて見えなくなり、健生は安堵のため息を吐いた。


「あー……恐かったぁ……」


「胸ぐらを掴み慣れてたな、アレは」


 と、隣で涼真が訳の分からないことを言い、少し張り詰めていた気が緩んだ。


「でも、帰して良かったのか? あの様子じゃ反省どころか、謝ってもらえそうにもないよ?」


「……良いんです。それに、反省……というか、もう僕が2人にいじめられるようなことはないと思いますから」


「へぇ、そう思った理由は?」


「……なんとなく、です。でも、陸玖の最後の目が……前までのアイツの目に似てましたから……」


「目だけで一度裏切られたヤツのことを信じるのか。やっぱり君はお人好しだねぇ」


 苦笑いを浮かべた涼真だったが、すぐに表情をピリッと緊張感の含んだものにすると、


「……健生くん。今すぐここから離れた方が良い。危ないよ」


 と忠告してきた。

 彼は怜矢たちが去っていった方を睨み、健生を手で自身の後ろへと押しやる。


「え? どうしたんですか?」


「あれ、見てみなよ」


 涼真が指さした方を、健生は涼真の背中に隠れながら見つめる。彼は校舎の2階辺りの虚空を指さしていた。

 何もないですよ、と言おうとした瞬間、黒い液体のようなものが地面のあちこちから虚空目掛けて湧き出し、宙に浮かびあがっていく。液体たちは涼真が指さした辺りの虚空で上昇するのを止め、1つにまとまり始めた。


「あ……あれは……!?」


「妖気は使用されずに長い年月が経過するか、人間の負の感情に晒されると腐り、『瘴気(しょうき)』と呼ばれるものになる。多分、この辺りにあった妖気が怜矢くんと陸玖くんの負の感情に晒されて、瘴気になったんだよ」


 涼真の言うことに健生は納得した。今まで怜矢と陸玖に自分がいじめられていたのは、ずっとこの場所、校舎裏だった。つまり、彼らが発散した負の感情が校舎裏に溜まり、瘴気になったのだ。


 ボコボコと変形を続けていた瘴気の塊は、一際大きな突起を作った直後、そこから星形に変形し、頭、腕、足が生え、やがてドス黒い鬼のような姿になった。


「く、黒神さん! ア、アレは……!?」


「アイツは瘴気の塊から生まれる妖怪、『瘴鬼(しょうき)』。分類としちゃあ負の感情から生まれる悪魔族に近いのかもしれないけど、鬼みたいな見た目から、裏世界では妖怪に分類されてる。意思はなく、力のままに暴れるだけの妖怪だ」


 と健生に冷静に解説すると、後ろを振り返り、


「ナギ、健生くんを連れて校舎の陰に隠れてろ」


「ああ」


 ナギは健生を抱き抱えて後退し、校舎の影にその図体からは考えられないほど速やかに隠れた。

 それを見届けた涼真は、瘴鬼の方を向き直る。


「グォォォオオオ!!」


「さて……始めようか」


 背をのけぞらせ、雄叫びを上げる全長5メートルはあろうかという巨大な鬼。それを見て、涼真はニヤリと不敵に笑った。

お読みいただき、ありがとうございます。

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[良い点] 改行がきちんとあって、読みやすかったです。 展開としても、謎のアプリの存在、黒神の実演から始まり、その黒神と呼ばれている人物を主人公として明示+女性を襲う悪いおっちゃんボコす戦闘シーンと…
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