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クロレキシ  作者: 赤森千穂路
第三章 七つの大罪編
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第96話 堕天の王

 しおりは固有術式を展開していた。彼女の術式“傲慢(プライド)”は彼女から半径200メートル以内の領域に存在する全ての妖気を操ることが出来る術式だ。その効果を活かし、涼真とマモンの妖気を操り、彼らの術式の発動を阻止したのだ。


 彼女に腕を掴まれた状態のマモンが、額に青筋を浮かべた。


「ねぇしおりちゃ〜ん、なんで俺の邪魔すんの? 涼真(こいつ)は敵なんだよ?」


「……ようやく、尻尾を掴んだぞ」


「はぁ?」


 マモンが訝しげな顔をすると、しおりはニヤリと笑い、指をパチンと鳴らした。

 すると、マモンの足元に黄金の魔法陣が出現した。


「幻獣、招来」


 しおりが唱えた瞬間、魔法陣の向こう側にとんでもない量の妖気を涼真は感じ取った。

 幻獣。それは神に仕える者たち。種族としては神に属する。彼らは元は神より格下の妖怪や魔物。しかし、それらの格付けは体内妖気の総量によって区別されており、幻獣の名を冠される者は、妖怪や魔物でありながら神に等しい妖気量と術式を兼ね備えるのだ。


「来い、鷲獅子(グリフォン)


 魔法陣から激しい光が放たれ、涼真は思わず手で顔を覆い、目を細める。

 その時、一瞬だが光の中を黒い影がヒュッと高速で横切ったような気がした。

 激しい光が収まり、涼真は辺りをキョロキョロと見回す。


「今の影は……?」


「うあああああっ!?」


 上空からマモンの悲鳴が聞こえた。涼真が空を見上げると、そこには大きな四足獣に咥えられ、宙を舞うマモンの姿があった。

 四足獣は頭と首、前足が鷲のようで、下半身はライオンのようだった。背中には金色の翼が生えており、今もそれを大きく羽ばたかせている。


「くっそ……んだよ、コイツ!?」


 マモンは四足獣の鋭い嘴で捕らえられており、苦しそうにもがいている。嘴は腹に食い込んでおり、中々に痛そうだ。


「クルルァアアア!!」


「いいぞ鷲獅子(グリフォン)。もっとスピードを上げろ」


 しおりはニヤリと笑いながら、しかし、どこか楽しそうに鷲獅子(グリフォン)に指示する。

 鷲獅子(グリフォン)はそれに小さく頷き、主に言われた通りにスピードを上げた。突風が舞い、校庭の砂を巻き上げる。


「おいルシファー、どういうつもりだ!?」


 すると、校舎の屋上から男の声がした。涼真が声のした方を見ると、そこには驚いた顔をしたがアスモデウスがいた。

 しおりは彼の方にふいっと顔を向け、ほくそ笑む。


「そういえば、お前も共犯だったな」


 しおりは長く細い脚を曲げ、ピョンっとジャンプしアスモデウスの前に着地する。

 彼の襟首を掴み、鷲獅子(グリフォン)の方へ投げ飛ばす。


鷲獅子(グリフォン)!」


「グルァアッ!!」


 すると、鷲獅子(グリフォン)はマモンを吐き捨て、アスモデウスと空中で衝突させた。


「がっ!?」

「うぉっ!?」


 2人が衝突した瞬間、しおりは黒く輝く翼を展開し、彼らの頭上に素早く移動した。目下の2人の悪魔を見下ろし、天に向かって手をかざす。


「さぁ、()()()()()()()だ」


 彼女は手中に黒い妖気の塊を出現させ、それと共に掲げていた腕を勢いよく振り下ろす。


「“堕天の王(デモンカタストロフ)”」


 彼女の手のひらから、暗黒の光線が放たれた。光線は2人を呑み込み、生徒たちが掃けていた校庭の中心に衝突し、大きな爆発を起こした。

 黒煙が舞う中、彼女は鷲獅子(グリフォン)と共に翼を羽ばたかせ、校庭にスタッと降り立つ。その拍子に煙が晴れ、2人の悪魔の姿が露わになった。


「ぐ……おぉ……」

「が……あ……」


 マモンとアスモデウスは派手に抉られた地面の中心で苦しそうに呻きながら倒れていた。しおりは白く細長い腕を組み、2人にゆっくりと近づく。


「我々七つの大罪はアザトースを討ち滅ぼすために存在する集団だ。他の目的のために協力するようなものではない。ましてや、リーダーの私に隠れて独断で行動するなど言語道断」


 しおりは傷だらけの男たちの前で立ち止まり、彼らに厳しい視線を送った。


「今も私の術式下に置かれた貴様らは立ち上がることすらできんだろう。その程度の実力で私を裏切るなど……全くもって烏滸がましい」


 しおりは憎々しげに吐き捨てた後、クルリと体ごと回転させ、校舎の屋上を見上げた。


「さて、残るはアイツらか……」


 バサリと大きく黒い翼をはためかせ、再び校舎の上に降り立つと、残っていた3人の大罪たちに声を掛ける。


「お前たち、先に魔界へ帰ってろ」


「めんどい」


「……チッ」


 寝そべった状態のベルフェゴールに一蹴された。しおりはベルフェゴールに舌打ちした後、レヴィアタンの方を向いた。


「レヴィアタン、頼んだぞ」


「キィィ!! ルシファーまで僕に丸投げするんですかぁぁ!! まぁ、唯一まともな貴女の言うことなら従いますけどねぇぇ!!」


「……最早、嫉妬関係なしに怒ってるな。すまないな、いつも面倒ごとを押しつけて」


「……まぁ、別にいいんですけど! と、とにかく連れて帰りますね!!」


 レヴィアタンは少し顔を赤らめ、自由奔放なベルゼブブとベルフェゴールをズルズルと引きずって行く。しかし、少し歩いたところでピタリと白髪の少年は止まった。


「……ルシファー。誰がなんと言おうと、僕らのリーダーは貴女です。あんな新入りマモンの言うことを素直に聞く僕らじゃありませんよ」


 彼はしおりの方を振り返り、ニコッと笑った。そこに、彼に引きずられていたベルゼブブも口を開いて、


「そうそう! あんな誰かの術式を奪わないと強くなれない奴の言うことなんか、ぜーったい聞かないもんね!」


 と憤慨した。しかし、彼の手には相変わらず食べ物が握られている。

 しおりはクスリと笑う。目を細めて優しい笑みを浮かべた。


「ありがとう。私に着いてきてくれて」


 レヴィアタンも彼女に釣られるように優しくと笑ってみせると、黒い翼を展開させ、ビュッと校舎の屋上から飛び去った。


 しおりは再び屋上から校庭へと舞い戻る。そして、マモンとアスモデウスを見下ろした。彼女の目には、光が灯っていなかった。


「さて……お前たち2人には、今から私のする質問に答えてもらう。だが、答えるときは必ず本当のことを言うように。今のお前たちは地面に這いつくばることしかできない木偶の坊だ。もし嘘を言ったと分かったその時はどうなるか……分かるな?」


「ぐ、ぐぅ……」

「分かっ……た……」


 苦し気な声を上げ、小さく頷く2人。しおりは目を閉じて一呼吸し、開口した。


「では1つ目……」

「ちょっと待ってください!」


 しおりが質問を問おうとした時、誰かが横槍を入れた。涼真たちは一斉に声がした方を向く。

 そこには、真剣な顔をしてしおりに向かってズンズン歩いていく美香の姿があった。彼女の隣にはいつもの穏やかな笑みを消し、険しい顔をした愛梨もいる。


「しおり……いえ、ルシファー。貴女と彼らは仲間ではないのですか? なぜ貴女は彼らを攻撃し、尋問のような真似を……」


「話は後だ、ミカエル。それと、今すぐここへサンダルフォンを呼べ」


 美香は不意打ちを喰らったかのように驚いた顔をした。


「さ、サンダルフォン様を? いったいなぜ……」


「話を終えた後、コイツらを天界の牢獄へぶち込むためさ」


「なぜ彼らをわざわざ天界で収容する必要があるのですか? 悪魔なんですし、魔界で収容すればいいのでは?」


「……その理由は、今からコイツらが自白するだろうさ」


 しおりはマモンたちの方へ向き直り、再度質問を問い始める。


「では改めて1つ目の質問だ。お前たちは誰と繋がっている?」


「……」

「…………」


 しかし、2人が返したのはしおりから目線を逸らした顔と、沈黙だった。


 ダンッ、としおりは2人の眼前の地面を細長い右足で踏みつける。そこには窪みができ、土煙が立ち上がった。


「黙秘は許さん。さっさと答えろ」


 しおりは声を低くし、2人を脅した。アスモデウスは口をつぐみ、マモンはギリリと歯を噛み締めている。


 すると、アスモデウスが諦めたようにふっと顔の力を抜いた。


「……俺たちが繋がっているのは、『リグレス』という組織だ」


「おい、アスモデウス……!」


「ほう、それで? そこでお前たちはどんな立ち位置なんだ」


 アスモデウスを責めるマモンを無視して、しおりはアスモデウスに更に問うた。


「俺とマモンはボスに拾われ、ボス直属の部下ってことになってる。リグレスには幹部の方々もいらっしゃるが、俺たちはあの方々よりも地位は下だ」


「コイツっ……ペラペラ喋りやがって……!!」


 額に青筋を浮かべ、目じりをキッと吊り上げたマモンが隣で堰を切ったように喋るアスモデウスに手を伸ばした。

 しかし、それをしおりは許さなかったようだ。彼女はマモンの髪を乱暴に掴み、彼の顔を地面へと叩きつけた。


「ぐぁっ……!」


「私の質問に答える気がないのなら黙っていろ。殺すぞ」


 しおりは顔を地面に埋めたマモンの耳元で囁き、彼の髪から手を放した。


「さて、続きを話してもらおうかアスモデウス。お前たちはそこで何がしたかった?」


「……俺は10年前、とんでもない屈辱を味わい、侮辱された……。だから、リグレスの一員となり力を蓄え、復讐したかったんだ! そこの……黒神涼真に……!!」


 アスモデウスはギラリと鋭い視線を涼真に送ってきた。彼の目からは怒りが伝わってくる。しかし、それは涼真にとって理不尽なものだ。

 

「それはお前が悪いことをしたからだろ。お前が明日香にやったこと……僕はまだ赦してない」


「私も。あの時の明日香ちゃんの顔……私は今でも忘れない」


 涼真に続き、彼の腕の中にいる舞も辛辣な言葉をアスモデウスに浴びせた。

 しかし、アスモデウスは吊り上げていた眉を更に吊り上げ、


「お前たちが俺の教育を邪魔したんだろうが!! お前たちとあの!! あの執事だ!! あの執事に会わせろ!! まだお前の家に居るんだろう!? 今すぐ奴を連れて来い!! そしてもう一度戦わせろ!! 今の俺なら、奴なんかに」

「黙れ。今のお前に他人に指図する権利など無い。余計なことを話すな」


「ぐぅ……!」


 しおりはアスモデウスの言葉を容赦なく遮り、アスモデウスを制する。アスモデウスもしおりの剣幕に怯んだのか、悔しそうに黙った。


「それじゃあお前は、力を蓄えるためにそのリグレスとかいう組織と繋がったのか?」


「あ……ああ、そうだ。それだけじゃない。俺は、黒神涼真たちに敗北して、あの執事に妖気の薄い人間界に放り出された。俺を回復させないためだと言っていた。そうした方が死ぬまでの間に、より苦しみを味わう時間が長引くから、ってあの執事は言っていた」


 もはや悪者じゃねーか、と涼真は心の中で自宅に祖父と一緒に居るであろう金髪イケメンにツッコんだ。

 ギリっと歯を噛み締めながら、アスモデウスは憎々しげに続ける。


「そして、執事は転移術式で俺を人間界に放置し、すぐに去って……俺は悔しくて堪らなかった。どうしても奴に復讐したいという気持ちでいっぱいだった。だけど俺はどうすることも出来ずにどこかの薄暗い路地裏で這いつくばるだけだった。今みたいにな。でもその時……あの方が現れた」


 ドクン、と涼真の心臓が大きく跳ねた。何故かは分からない。しかし、アスモデウスの言った『あの方』という言葉に、何か異様なものを感じた。


「あの方?」


 しおりがアスモデウスに問うと、彼はコクリと頷いた。


「あの方は動けない俺の前にしゃがみ込み、こう仰った。『悲しいねぇ。君は自分の家族を強く育てようとしただけなのに』ってな」


「……それで?」


「俺はそのお言葉に涙したよ。家族でさえも理解してくれなかった俺の家族に対する愛を、あの方は分かってくださった。あの方は、俺を肯定してくださったんだ! だから俺は、あの方に着いていくことにしたんだ!」


 アスモデウスの目は闇に染まっていた。まるで、誰かに“洗脳”されているかのように。妖気感知で彼に術式がかけられていないか確認してみたが、もちろんそんなものはなかった。

 涼真はアスモデウスの目に見覚えがあった。かつて涼真が戦った相手、セラフィエルと同じ目をしていた。彼も“洗脳”の術式を施されていなかったにも関わらず、『あの方』という人物に心酔していた。

 もしセラフィエルのいう『あの方』とアスモデウスのいう『あの方』が同一人物の場合、彼はかなりの話術の使い手だ。それも、熾天使や元・七つの大罪に通用するほどの。術式を使用することなく他人を自身に心酔させ、意のままに操る人物。そして、姿を巧妙に隠している。


 そのうえ、先日戦ったサープがそんな人物の下に仕えているとなると、『あの方』は戦闘もかなりの実力があることが窺える。サープという人物の基準は全て、戦闘の実力基準のような気がするからだ。彼の性格では、恐らく自身より弱い者の下に仕えることはないだろう。

 つまり、戦闘も、話術も、そして姿を上手く現さないことから、頭も良く回ることが想像できる。

 『あの方』に関するスペックは、今涼真が知りえる全てにおいて、涼真を遥かに上回っているだろう。


 涼真は改めて、とんでもない人物たちを標的にしているのだ、と思った。


 しかし、同時にもう一つ、あることを思った。

 何故そんな人物が涼真の母を殺し、涼菜を拐ったのだろうか。仮に『あれ』がセラフィエルの独断だったとしても、何がセラフィエルをそこまで動かしたのか。父から聞いた話だが、母は術式どころか、体内に妖気すら持っていないただの人間だった。そんな人物をわざわざ殺す必要があるのだろうか。

 それに恐らく、彼らは涼真も殺そうとしていた。今の涼真を殺す必要がある、というのは100歩、いや、100万歩譲っても涼真としては理解したくないが分かる。ラグルもサープも、彼らは皆揃ってなぜか人間を憎んでいた。なので、人間を助ける仕事をする涼真が憎い、などという理由ならば一応筋は通る。しかし当時の、10年前の涼真は妖気が覚醒(めざ)める前で、理にかなわない。


「それがどうした?」


 しおりのその声で涼真はハッとし、彼女の方を向いた。しおりは冷たい声のまま続ける。


「それが大義名分になるとでも思ったか? お前が七つの大罪にとって都合の悪いことをするならば、私は容赦なくお前を殺す」


 アスモデウスとマモンは悔しそうな顔をしてしおりを激しく睨み付けた。

 その時、しおりの背後に黄金の光が天から差し込んだ。その光の中に朧げに影が浮かび上がり、やがてそれは段々と濃くなり、6対の純白の翼を持つ少年の姿に変わった。


「おいミカエル。いきなり呼び出して、どういう用件だ?」


 少年はマッシュに整えた金髪をフワリと揺らし、翼を羽ばたかせながらゆっくりと校庭に着地した。

 しおりが少年の方を振り返り、待っていたと言わんばかりにニヤリと笑った。


「来たな、サンダルフォン」


「お前は……ルシファー!? なんでチミがここに……」


「話は後だ。とりあえず、コイツらを天界の牢獄に連れていって、リグレスという組織について聞き出してくれ」


 しおりはマモンとアスモデウスを親指で示した。


「リグレス……それって、メタトロンが探っている組織の名前だったはず……」


 涼真は目を見開いた。メタトロンが探っていた組織とは、自身が追っている組織のことだ。つまり、リグレスとは、涼真が追っている組織の名前だったのだ。

 涼真のもしもの考えが当たってしまったのだ。


 涼真はマモンとアスモデウスを指さす。


「サンダルフォン……そいつらからリグレスについて全部聞き出してくれ」


「黒神涼真……チミもいたのか」


 サンダルフォンはゆっくりと涼真の方を振り返った。


「……チミには、何でも協力するって言ったもんな。任せてくれ。オレッちは天界の牢獄の支配者だからね」


「あぁ、頼む」


 サンダルフォンは涼真と頷き合うと、うつ伏せに倒れている2人の悪魔の方へ歩み寄った。


 マモンがグググと腕をサンダルフォンの方へ伸ばす。


「くそ……捕まって、たまるか……!! 俺には、まだ……まだぁ……!!」


「無駄だ。私の術式下にいる限り、お前から妖術が放たれることはない」


 しおりは手刀を右手で作ると、トンっとマモンの首筋を叩いた。カクン、とマモンは力なく地面に突っ伏した。


「サンダルフォン、連れていってくれ」


 サンダルフォンは黙って頷き、マモンとアスモデウスのそれぞれの頭上に手をかざした。


「“闇縛(やみしば)り”」


 サンダルフォンが唱えると同時に、彼の両手から黒い稲妻が飛び出した。稲妻はマモンとアスモデウスの全身を駆け巡り、糸のように2人を縛り上げる。


「んじゃあ、オレッちはこれで帰る。後は任せたぞ、ミカエル」


「はい! お任せください」


 美香はピシッと敬礼をし、サンダルフォンに良い返事をした。

 サンダルフォンは2人の悪魔を捕らえている稲妻を握ると、バサリと純白の翼を再び展開させた。


「あぁそれと、黒神涼真」


「うん?」


 何かを思い出したように言ったサンダルフォンは、涼真に真剣な眼差しを送ってきた。


「近いうちに天界の牢獄へ来てくれ。セラフィエルがチミと話したいと言ってる」


 セラフィエル。彼と最後に会ったのはつい先日だ。その時は彼の精神がおかしくなったと思ったのだが、今では回復したのだろうか。

 それに、彼が涼真をわざわざ自分の前に呼び出すとは思えない。罠の可能性もある。しかし、行かなければ何も始まらない。

 少し考えた後、涼真はコクン、と頷いた。


「……分かった。また天界(そっち)に行くよ、サンダルフォン」


「ありがとう。来る時は事前にガブリエルやミカエルに連絡してくれ」


 サンダルフォンは小さく笑うと、マモンとアスモデウスを掴んだまま翼を大きく羽ばたかせ、金色の光に包まれながら、猛スピードで大空へと消えていった。

 サンダルフォンを見送った涼真は、しおりを見た。


「じゃあしおりさん、今度は貴女の目的を聞かせてもらおうか」


「あぁ、そうだね。それじゃあ話そうか。私がなぜこんなことをしたのか」


 しおりは目を細め、妖艶な笑みを涼真に送った。

お読みいただき、ありがとうございます。

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