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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

二作目「感情と君」

作者: 皇海

好きと言う感情が分からなくなったのはいつからだろう。

中学の頃までは好きな子がいた。

しかし、高校生になった途端好きな子と言う存在が一切できなくなった。

僕は可笑しいと思い、可愛いなと思った先輩に告白してみた。

結果はフラれてしまったが、フラれた時の感情は「良かった。」その一言に尽きた。

心が安心する。何かから解放されたようにホッとしたのだ。

それから数ヶ月が過ぎ、今度は可愛いと言う感情が分からなくなった。

これまでは可愛いと思う存在なんていくらでもいた。

それが、アイドルや女優でさえ可愛いと思えなくなったのだ。

人の欠点ばかりが目に入るようになった。

そこから人を嫌いになるまで時間は掛からなかった。

そして、そんな自分の事も嫌いになっていった。


そんなある日、僕は君に再会した。

久しぶりに会った君はあの頃の面影はなく、髪や爪は荒れ、化粧も一切せずに、服もお世辞にもお洒落とはいえなかった。

しかし、その欠点だらけの姿がとても綺麗だと思った。

あの頃の様に。


僕は君に惹かれ、君は僕に惹かれた。

そこからは早いものだった。

数ヶ月の交際をし、結婚までニヶ月もかからなかった。

僕は君以外の人と一切関わらない生活をしたが君は少しずつ一般人と同じような普通の生活をする様になっていた。

お互い干渉しすぎないようにしていた為、始めは気にならなかったが徐々に不思議になってきた。

僕は君に聞いた。「どうして僕と同じ感性を持ちながら人と関わる事が出来るのか。」と。

君は言った。

「私は君と出会って変わった。このままじゃダメなんだと思ったから。私は君とは違ったの。君は一人で生きられるけど、私は生きられない。」と。

僕は、君とは違うと区別されイラッと来たが、その日は何も言わずに終わった。

しかし、彼女は日に日に社会に適合し、飲み会にも行くようになった。

僕との時間は無いに等しかった。

日々溜まっていく鬱憤に僕は耐えきれなくなり家を出た。


君は僕と同種だと思っていたが、それは僕の思い違いだった。

君にしっかり、社会に順応していて人との関わりの大切さも知っていた。

僕は君といると君をダメにしてしまうと思って家を出た後すぐに離婚届を渡した。


そして僕は自殺をしようとした。

僕がこの世界で生きる価値はもう無くなったからだ。

電車の音がして、僕は線路に飛び降りた。

それと同時に誰かに手を引かれた。

それは君だった。

僕と入れ替わりで君が電車に突っ込んだ。

肉塊が潰れる音。悲鳴。駅員を呼ぶ男性の声。緊急停止を知らせるベルの音。

その中で僕は倒れた。


次に起きた時は鼻にツンとくる消毒液の匂いのする病院だった。

君は救急隊や医師による救命も出来ないほどバラバラになっていたそうだ。

僕は感情を取り戻したように泣き崩れた。

そして、僕は君の事が好きだったことにようやく今気づいた。

でも気づいた時にはもう君はこの世に存在していない。


僕は何度も自殺をしようとしたがそのたび、君が轢かれる瞬間が脳裏を過ぎり未遂に終わった。

立ち直るまでに長い月日を要した。

その間に、君の仲が良かった同僚が君の身の回りの整理を全て終わらせていた。

驚く事に君は離婚届をまだ書いておらず、僕のもとにも財産分与がされた。


後日、君から僕宛に手紙が届いた。

その手紙を読んだ時僕はまた泣き崩れた。

しかし、今回は悲しみだけではなかった。

僕は生きることを決心した。

次君に会う時恥ずかしく無いように生きようと。

まだ人を好きにはなれないけど。


手紙は今も肌身離さず持っている。


読んでくださり有難うございます。

今回は、前回の小説のコメント欄で指摘された点も踏まえながら作ったものです。


次回作はまだ構成も考えて無いのでだいぶ後になりそうです…。

もし良ければ前回作や次回作も読んで頂けると嬉しいです!

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