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陽国史 一  作者: いちのはじめ
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双頭録 十一

 治安維持の為、各衆は活動を続けていた。衆ではないが舞雪形まいゆきの指導者である早葉甲斐さようかいも弟子達を連れて活動をしていた。その活動中、ついに実践となる騒動の場面に出くわし、剣を取る事となる。弟子の中にはすでに実践を経験している空矢政継そらやまさつぐ黒田量くろだはかりの姿もあった。しかしその実戦を経験した彼等でさえ、簡単に命の危機に見舞われる事となる!


人物紹介

 早葉甲斐さようかい舞雪形まいゆきを使う<守人もりと>。またそれを教えている。

 空矢政継そらやまさつぐ舞雪形まいゆきを習う<守人もりと>。人一倍鍛錬を自分に課している。黒田量くろだはかりとは幼馴染。

 黒田量くろだはかり舞雪形まいゆきを習う<守人もりと>。空矢政継そらやまさつぐの幼馴染で、冷静な性格。

 赤城羊宗あかぎようそう舞雪形まいゆきを使う<守人もりと>。空矢そらや黒田くろだの兄弟子にあたる。

 山紅幸隆やまべにゆきたか舞雪形まいゆきを使う<守人もりと>。二刀流。空矢そらや黒田くろだの兄弟子にあたる。

 夕谷時雨ゆうたにしぐれ舞雪形まいゆきを使う<守人もりと>。空矢そらや黒田くろだの兄弟子だが年下。

 蒲原興三郎かまはらこうざぶろう草平衆くさひらしゅうの<守人もりと>。巨漢で自信家。

 辰間本坂たつまもとさか草平衆くさひらしゅうの<かかり>商人。旧兵器強奪のメンバーで計画立案を担当した。

 

用語

 レイヤー:眼鏡型の情報端末。

 太京たいきょうこくの首都。

 電足帯でんそくたい:足の裏に付ける電磁式の移動補助具。

 電柵でんさく:対飛び道具用の防具。

 青警察:重武装した治安部隊。

 青丹春防衛戦あおにうはるぼうえいせん:四月十六日に青丹あおにう沿岸へ馬山国まざんこく巡洋艦が砲撃を開始して、その後、敵兵が上陸した小規模な争い。

 <守人もりと>:近接戦闘職者。

 舞雪形まいゆきがた:風に舞う雪のように、変幻自在で予測不能な動きをするという、考えの形。

 イロハ装具一式:装備内容を示しており、この場合は完全装備を表している。

 馬山国まざんこく:内戦を終わらせ、内政の不安定さの解消にこくへ争いを仕掛けた。

 「甲斐かい師っ」

 まとまってない黒髪に、上がり気味の眉毛と挑戦的な黒い瞳にレイヤー、そして挑戦的な口元の空矢政継そらやまさつぐが、鋭く叫ぶ。

 その空矢そらやの視線の先、高層ビルの窓から炎と煙が見えていた。

 太京たいきょう北に位置する繁華街、水円すいえん。周囲はそれを観る野次馬や逃げていく人々、まとまりのない人の流れの為、混乱状態にあった。

 空矢そらやに応えて、壮年の男で、短い黒髪を後ろに流し、引き締まった顔つきにレイヤー、神経質な印象だが凛とした黒い瞳の早葉甲斐さようかいが。

 「電足帯でんそくたいを」

 言われて、短い黒髪と整った細い眉毛、優し気な目じりにレイヤー、そして細い鼻と小さな口の黒田量くろだはかりが、その言葉に反応し電源を入れる。

 空矢そらやも、続き他三人も電源を入れ。

 「実践になるかもしれない、決して一対一では戦わないように」

 甲斐かい師はそう言うと、みんなのレイヤーに組み合わせが表示される。

 空矢政継そらやまさつぐ黒田量くろだはかりの組みと、赤城羊宗あかぎようそう山紅幸隆やまべにゆきたか夕谷時雨ゆうたにしぐれの三人一組。

 「電柵でんさくにはまだ電源を入れないよう」

 ここで言葉をいったん区切り、みんなの顔を一通り確認すると。

 「では、向かう」

 決して鋭くも強くもない口調だが、なぜか迫力を感じ、人ごみの中、滑るように走り出す。

 政継まさつぐはかり甲斐かいし師のすぐ後ろに並んで、互いに顔を見合わせる。

 まるでそこだけ人が避けていてくれるのか、全くのよどみない進みに、二人感心しきり。

 直ぐに問題のビルの足元へ到着するも。

 「青警察はまだのようです」

 素早く確認した黒田くろだが。

 それに頷くと甲斐かい師。

 「全員電柵(でんさく)に電源、 決して私の前には出ないように」

 誰も気づかなかったが、甲斐かい師はわずかに逡巡していた。それは弟子である彼等を、危険な目に合わせたくない思いと、しかし実戦経験を積ませ、本当に剣を握るべきなのかどうか、それぞれ、来るべき時に備えさせなければという思い、それが交錯していた。

 「はいっ」

 しかし弟子達は、緊張は強いものの、既に覚悟を決めているのが見て取れていた。特に空矢そらや黒田くろだは、青丹春防衛戦あおにうはるぼうえいせんを経験していて、他の三名とは明らかに落ち着き具合が違っていた。

 各衆に治安応援要請は出されたままであり、衆ではないが名のある<守人もりと>にもそれは同じで、その当初、甲斐かい師は個人で対応していたのだが、落ち着いてきたとはいえ、その件数の多さに、舞雪形まいゆきがたとして対応する事にしたのだった。

 これまで遭遇したものでは、相手が個人であったり、逃走中であったりと、こちらが数で圧せ状況も有利なものしかなかった。が。

 これは大事かもな。

 政継まさつぐはそう思い、そして、これをただの火事とは、誰も思っていなかった。

 燃えているのはビルの中層階、ちょうど真ん中の高さである。それより高い位置の超高架道路から、消防車が到着したのか、放水が始まった。

 東光昇ビルと書かれた正面口より、中に突入する甲斐かい師達。

 商業施設も多く入ったビルの為、中にはまだ右往左往の人で混乱していた。そんな中、甲斐かい師は警備員の一人を掴まえて。

 「君は警備員だね」

 口調はいつも通りだが、敢えて力強く両肩を握り、顔を思いきり近づけそう問いかけると。

 迫力に押されて警備員。

 「は、はい」

 「よしっ、では今見えている範囲の人を全員、外へ誘導せよっ」

 「はっ、了解ですっ」

 きっぱりと言い切るその堂々たる態度に、思わず流される警備員であったが、一度動き始めると他の警備員も同調し、外への流れが一気に出来上がった。

 うまいはったりだなと、はかりが感心する。

 そうしてできた人の流れは、上の階まで続き、その流れに逆らい甲斐かい師達は、問題の階へ、いやその手前で。

 「っ」

 天井が、一部だが崩れ落ち、灰の匂いと熱気と黒煙。そして。

 「甲斐かい師!」

 空矢そらやが剣撃音に気づき、鋭く。

 上の階へ飛び上がっていく。

 これは、この火事が単なる過激派の行動ではなく、<守人もりと>が絡んでいる事件なのだと、全員が理解した。

 そして赤城あかぎ山紅やまべに夕谷ゆうたにの三人は身体を緊張で硬くする。

 階段上がった先、煙で視界が悪いが、何人もの人影!

 甲斐かい師は瞬間、躊躇う事無く床を低く流れていくように進み、それに対する相手が銃でとっさに反撃。

 続けて政継まさつぐも飛び出す。

 流れ弾が夕谷ゆうたに電柵でんさくに弾かれ、その瞬間、飛びのきはかりは、赤城あかぎ山紅やまべにに覆いかぶさり。

 「無理はしなくていいっ」

 それだけ言うと、はかりも飛び出していく。

 非常に低い姿勢では、いつも通りの攻撃ができない。迷いつつもはかりは相手の足を切り払い、政継まさつぐ達を追う。

 視界が悪い中、いくつもの弾丸に電柵でんさくが反応、その度に電力を失っていく。

 銃声に耳がいかれはじめ、音が脳に入り込んで、内側から膨らみ圧迫される。もう感覚だけでは、政継まさつぐの位置など分かりようもない。

 はかりはいきおい、階の突き当りの部屋まで来て、そこへ飛び込んだ。

 瞬間視界が開けたが。

 「っ」

 転がり込んで立ち上がりつつ、その目には顔まで覆ったイロハ装具一式の。

 <守人もりと>!

 鋭い一撃が相手から放たれるっ。

 剣で受けるはかり

 しかし 剣ごと首を持っていかれるっ。

 筈の、強力な一撃を崩れた姿勢で受け流した。

 あまりの事に、相手がその姿勢で一瞬固まった。その<守人もりと>に対し。

 「蒲原かまはらさんっ」

 「よい、辰間たつま君は脱出したまえっ」

 蒲原かまはらと呼ばれた<守人もりと>は、再び構え直すと、立ち上がったはかりは気づきたくはなかったが、その巨漢にひるんだ。

 もう一人の方は、明らかにイロハ装具一式を着慣れていない様子で、<守人もりと>ではないが、身体の全てを覆っている為、慣れない者が剣で斬り倒すとなると、厄介だとはかり

 蒲原かまはらが大きく構え、しかしその数倍の速度で振り下ろし、最短距離を剣が走るっ。

 「 」

 かわすはかり。流れた相手の姿勢の隙に、首めがけ最速の一撃っ。

 ごっ

 鈍い音。

 「……っ」

 しびれる右手、顔をしかめ飛び退くはかり

 蒲原かまはらはかりの一撃を躱すではなく、自分の後頭部で迎えうったのだ。

 さすがに衝撃で直ぐには立ち上がれず膝立ちに崩れ、しかし。

 「」

 顔は見えないが、気合と共に立ち上がっていると、はかりには分かった。

 「ふぅ」

 はかりは呼吸を整え、電柵でんさくの出力を上げた。今この戦いだけもてばいい、そう考え。

 蒲原かまはらが再び構え、捨て身と思える程深く踏み込み、最大の一撃をっ!


 他の場所では政継まさつぐが舌打ちを繰り返しつつ、煙が濃くなる中、どこから来るともしれない銃撃に、神経をすり減らしていた。

 突っ込み過ぎた故、はかりとはぐれた事に気づいたが、既に敵中にあり、へたに動きを緩めた為、そこから出れずにいたのだ。

 ぱんっ

 発破音と床を削る銃弾。

 じっとしているのは危険だと、レイヤーの機能を最大限に使い、自分の位置を確認。

 「うおっと……っ」

 急に目の前の床が崩落、その衝撃で埃が 舞い、瞬間、政継まさつぐの周囲全てが炎で包まれた!


 そして赤城あかぎ山紅やまべに夕谷ゆうたにの三人は、それぞれに息を切らし、手に持った剣先は震え、そして周囲の床は、赤く、それが広がっていた。

 床には一緒に、相手の剣も落ちている。

 「やった、やったぞ……」

 疲れたわけでもないのに荒い息で、うまく声がでない赤城あかぎ。最年少の夕谷ゆうたには興奮して気が大きくなっており、二刀流の山紅やまべには身体をほぐすように動き、その興奮に飲まれまいとしている。

 ぼふっ

 鈍い音と共に、黒煙がこちら側へ吹きだしてきた。驚いて一瞬身体を硬直させたが、気の大きさは自信へと変わり、直ぐに構えを取る三人。

 そこへ。

 「うっ」

 完全装備の二人が飛び込んできた。

 相手は待ち伏せだと驚くも、至近距離、とっさに構えた銃を撃ちながら強行突破。

 もう一人は慌てて煙の中へ戻る。

 三対一。

 電柵でんさくが弾をはじき、撃たれる恐怖は、それを理解する前に興奮へとってかわり、彼等を一歩前に踏み込ませ、三者三様の剣劇。

 しかし完全武装は隙が小さく、致命傷ではないが、相手を床に叩き伏せる。

 だが相手も必死。強行突破継続。

 「うおぁっ」

 夕谷ゆうたにが咆哮のような雄叫び、そして力任せに、薪でも割るかの如く、一撃。鈍い音。へこむ外装。

 まだ動く。目の前に下階への道。必死。

 「おぁっ」

 誰が叫んだのか、三人が一斉に叩き始めた。もはや舞雪形まいゆきがたでも何でもない。

 「あ、はっ」

 赤城あかぎが自分の剣が曲がった事に気づいて、手が止まる。

 それに遅れて山紅やまべに夕谷ゆうたにも。

 荒い息の中、べこべこになった外装から、赤くにじみ。最初のものとまじりあい、周囲は赤一面。自分達の足も、赤く。

 「……」

 あれる息、三人。

 感じる筈もない、足元から、何故か、感じる、ぬくもり。

 赤城あかぎは、太ももの裏筋が、急激に硬直、嫌な痛みで姿勢を崩し前のめり。だが足が動かない。床一面の赤。

 「ひっ」

 声にならない空気の漏れるような音。

 床に顔が浮かぶ。

 自分の顔じゃないっ。

 手が伸びてきたっ!

 捕まるっ!

 「う、あっ……え?」

 倒れ込んだはずの赤城あかぎの身体を、後ろから抱き支える。

 「あっ」

 山紅やまべに夕谷ゆうたにも、通路側にやや背を向けていたとはいえ、甲斐かい師が来た事に全く気付かなかった。しかも、赤城あかぎを前からではなく後ろから支えるなど、階段側から来たわけでもないのに、全く意味が分からなかった。

 「甲斐かい師っ」

 三人の様子、持っている剣の状態、そして足元の死体二つ。

 「……これが実践だ」


 「あっ」

 ごきんっ

 右腕が不自然な形と冷たい激痛。

 吹っ飛ぶ剣。

 勢い止まらず床を滑るはかり

 蒲原かまはらは渾身の一撃。

 自分はどこに攻撃を受けようが、構わず相手を打ちのめすという攻撃のでは、余りにも差がありすぎた。

 勢いで倒れそうになる身体を持ち直し、直ぐにはかりへ飛び掛かった。

 まだ倒れたままのはかり

 ぼぅっ!

 「ぬっ!?」

 突然、奥の部屋から崩落の音と共に、炎が吹きあがった。

 思わずのけぞった蒲原かまはら、しかし直ぐ消えかかっている炎の先、はかりへ向けて、剣を。

 「おわっ」

 その瞬間、炎の奥から塊っ、蒲原かまはらにぶつかり倒れる。

 「くそっ」

 政継まさつぐだった。

 彼も倒れるが、身軽な政継まさつぐは直ぐに起き上がる。しかし煤で顔は汚れ、髪の毛も熱でちりぢり、着ている服からは、白い煙が上がっている。

 熱で皮膚全体が痛い。

 とっさに電柵でんさくの出力を最大にし、重症こそ免れたが、電力を使い果たしたとレイヤーの表示、そしていくつかの警報。

 がっ、と剣を床に突き立て立ち上がる蒲原かまはら

 まだ熱でくらくらしているが、敵だと認識して構える政継まさつぐ。完全武装の相手だが、これが初めてじゃないと、ぼやけた五感を無視して。

 「次から次へと……貴様も同じように倒してやる」

 凄む蒲原かまはら

 その言葉と、レイヤーが出し続けている警報に気づいて、後ろに、人の気配。

 目の前で蒲原かまはらが構えるが、思わず後ろを振り返る政継まさつぐ

 そこには、起き上がろうと、している、はかりの、姿、が。

 と、同時に、

 渾身の、一撃で、

 蒲原かまはら

 の、

 剣、

 が。

 「がっ!」

 次の瞬間、蒲原かまはら政継まさつぐは、互いに跳ね返るように倒れ込んだ。

 政継まさつぐはとっさに、剣も構えず振り返りもせず、そのまま左肩から相手の剣の内側に踏み込み、体当たりをしたのだ。

 予想以上の頭への衝撃と痛み。しかし直ぐに起き上がり。

 「はかりっ」

 右腕から赤い染み。

 「っ!」

 はかり政継まさつぐに支えられ、どうにか身体を起こすと。

 「何だ政継まさつぐ、ひどい顔だな」

 そう言って口の端だけで、笑ってみせた。

 「はっ、はかりこそ」

 少し困ったような笑みで、乱暴な口調で切り返す政継まさつぐ

 「来るぞ」

 咳き込みながら起き上がり、呼吸を整え。

 「ふーっ」

 仁王立ちする蒲原かまはら。視線を相手に向けたまま立ち上がり。

 「立てるか?」

 「足は無事なんでね」

 自分の剣を拾い、呼吸で肩が動くと、信じられない程の痛みで、意識が擦り石で上下に摩滅しているような、感覚に襲われる。それを気力でつなぎ止め、立ったはかり

 はかりから離れ、自分に相手の意識を向けさせる政継まさつぐ。湧き上がる殺意と、相反する驚く程冷たい理性が、身体の感覚を極限まで高め、かつてない程周囲が、別の視点でもあるかのように把握できていた。

 先程まで煙は薄かったが、この部屋も徐々に濃く、匂いがきつく、何より熱が迫ってくるのを、全員が感じる。

 季節も相まって、政継まさつぐの黒くすすけた身体と服は、玉の汗と染み。

 「」

 低く屈むと同時に、無音、政継まさつぐが相手に突進。

 蒲原かまはらも即座に反応、振りかぶる時間が取れず、突き。

 遅いっ。

 政継まさつぐは突きをいなし、相手の懐をすり抜ける刹那、一閃の如く剣が走るっ。相手の腹部関節装甲、薄い場所っ。

 がこっ

 「!?」

 手には衝撃、失敗の音。

 駆け抜けぬ勢いで身体を回転させ、相手に向き直る政継まさつぐ

 しかし構えきる前に、蒲原かまはらの大ぶりな切り返しっ。

 「ふっ」

 姿勢を這うように低く、通り過ぎる相手の右ひじ防具の隙間へ、剣。

 がりっ

 続けざま切り返す、互いの攻撃は致命傷にならず、蒲原かまはらの剣が床の一部をえぐり取り、破片が窓硝子を割り、一気に煙が部屋へと入り込む。

 「はぁ、はぁ……」

 政継まさつぐ蒲原かまはらも息が乱れている。

 正直、相手が完全武装であろうと、倒せる自信が政継まさつぐにはあった。実際、馬山国まざんこく兵士は斬り倒しているのである。しかし、もはや必死なこの状況で、政継まさつぐ舞雪形まいゆきがたどころではなく、剣を振るのがやっとだった。

 「 ……」

 呼吸を整える政継まさつぐ。煙の臭い、熱。

 しかし今の相手は<守人もりと>なのだ。近接戦闘においては、いやその一点においてのみ、最も優れた者なのだ。

 しかもその戦い方において、相手は自己への攻撃を考慮しない、捨て身の、そして渾身の一撃のみを放ってくるのだ。

 避ける必要がない、純粋な攻撃。

 このまま戦い続けるのは、体力的にも状況的にも限界、次が、お互い、最後の、一撃。

 隙間に斬り込めねぇなら。

 相手が大振りの構えを取る前に、政継まさつぐが仕掛けるっ。

 一瞬、反応が遅れ、踏み込めず引き気味に剣を振る蒲原かまはらっ。

 しゅっ

 蒲原かまはらの剣が低く薙ぎ払われるっ。

 しかし政継まさつぐ、下ではなく上、跳ね上がっていたっ。

 もらった!

 装甲も何かも無視っ、ただ渾身の一撃、それごとかち割るっ!

 「!?」

 その瞬間、政継まさつぐは吹っ飛び、蒲原かまはらの装甲も一部が吹っ飛んだ!

 電柵でんさくっ!?

 驚くはかり

 蒲原かまはらが出力を最大にしたのだっ。

 空中でのあり得ない反動に、吹っ飛んだ政継まさつぐ、しかし直ぐに起き上がるも剣がない。そこへ顔が露わになった蒲原かまはらが、飛び掛かる。

 「っ」

 激痛を無視して、はかりが剣を投げつけた。

 しかしとっさにそれをはじき、直ぐに政継まさつぐを狙い直す蒲原かまはら。そのわずかな隙に、自分の剣へ向かう政継まさつぐ

 追う蒲原かまはら

 剣に向かう政継まさつぐ

 剣を振り上げる蒲原かまはら

 剣に近づく政継まさつぐ

 剣を振り下ろす蒲原かまはら

 「!?」

 その時、衝撃!

 声も出せず、服も破けんばかりの水圧が辺りを襲った!

 「消防……」

 はかりがそれと気づいて、当たらないように扉の隙間へ。

 「わぷっ……ぶぇっ」

 その勢いに、壁へ頭を打ち付けた政継まさつぐ、水が他へ向き、その隙に仰向けになると、頭の真上の壁に、深々と突き刺さった相手の剣。

 「……っ」

 剣を拾い直し立ち上がる政継まさつぐ

 窓を破壊し、次々乗り込んでくる消防士達。ここで銃撃戦が起きていようと、ひどい争いの最中であろうと、彼等は一切の躊躇なく、己の任務をこなしていく。もちろん重装備で。

 激しくなる煙の中、相手はその場から消え去っていた。

 「怪我人は? 大丈夫ですかっ?」

 政継まさつぐに気づいた消防士が駆け寄ってくる。直ぐに担架が届き、気が付けばはかりの方へも。

 「乗ってください、また我々の指示に従ってください」

 「ふぅー……」

 あっけない幕切れとなった。

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