表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽国史 一  作者: いちのはじめ
63/137

白若竹 十四

 かつてこくを人口減少から救った竹筒明星社たけつみょうじょうしゃ。色々な疑問がある中で、その象徴たるメガシリンダーへ向かうひざし


登場人物

 赤実陽あかみひざし風間かざま家の<影梁かげはり>。

 多々良真琴たたらまこと:<かかり>技師。

 「問題なし」

 猫のような丸い顔に短い黒髪と白い肌、目の周囲は赤く、レイヤーをかけたひざしが言った。

 「ありがとう赤実あかみ君」

 短くまあるい茶色の髪に、眠そうな茶色い瞳、レイヤーをかけ、色艶の良い肌に童顔の頬の多々良真琴たたらまことが、上のグレーチング通路へ向かって明るく応えた。

 まだ周囲の音は静かで、薄青い空は快晴の中、多々たたらの工房にて。

 小さな箱が山と積み上げられた、新品の電柵でんさく電足帯でんそくたい。その中からいくつかを無作為に選び、動作試験をしているところだった。

 以前は無かった大型の機材もあって、あんなに広々としていた工房が、今は機材をよけて歩く程となっていた。

 「試験はこんなところでいいと思う」

 多々たたらの言葉に、上から飛び降りてくる陽。ふわりと着地するのは、新しい電足帯でんそくたいによるものだった。

 「うん、いい感じだと思うよ」

 多々たたらの横に立って、出来上がった箱の山を眺めるひざし

 これで日に千五百ずつ、電柵でんさく電足帯でんそくたいを作れるようになったよ。

 「だけど問題があってね」

 それだけの数をおいておける場所がないんだよ。

 と言い、腕を組んで上を見上げる多々たたら。思いの他機材は大きく、近場で倉庫も借りられなくて困っていたのだ。

 「だから出来上がり次第、納品させてもらえるように頼んで、今日が最初だったんだ」

 「それで急いで試験してほしかったんだ、場所は?」

 「竹筒明星社たけつみょうじょうしゃ、メガシリンダーだよ」

 「!」

 おもわず、いいの!? と声を出してしまう陽だが、無理もない、一週間前にそこから旧兵器が強奪されたのだから、民間人が簡単に出入りできないと思うのが普通だろう。たとえ、搬出時を狙われた結果であったとしてもだ。

 「僕もどうかと思うけど、先方がそう言うんだから仕方がないよ」

 「……」

 竹筒明星社たけつみょうじょうしゃは民間企業だし、社に過失がなかったにしても、軍需品奪われているのだ。

 左の指を唇にあてて考えるひざし

 草平衆くさひらしゅうがメガシリンダーを調べていたのは、保管会社の竹筒明星社たけつみょうじょうしゃが、兵器を預かる契約を国と取り決めていたからだけど、あんな事があったばかりなのに。

 「二度目はないって思ってるのかな?」

 「どうだろう、二度目を起こさせない、じゃないかな」

 思わず呟いたひざしの言葉に、多々たたらはそう応えた。

 「だって色んな衆が太京たいきょうの治安維持を手伝ってるんだから、二度目は難しいんじゃないのかな」

 なる程、これが一般の考えなんだ、とひざしは妙に納得した。しかし口には出さなかったが、こうも思っていた。

 襲撃したのは、その衆だけど、と。

 とはいえ竹野中たけのなかさんいわく、哭腑衆こくふしゅうが情報を強化して動いているから、当面は大丈夫だろうとも言っていたが。

 「そっか」

 気のない返事で返したひざし、に。

 「赤実あかみ君、今日の夕方時間あるかな?」

 多々たたらひざしに向き直って、遠慮がちに切り出す。

 十七時くらいなんだけど、の多々たたらの言葉に首をかしげて続きを促す。

 「実はその時間に、メガシリンダーへ納品しに行くんだけど」

 「行くっ」

 多々たたらの言葉にかぶせるようにして、ひざしは元気よく答えた。

 これはいい機会だと思ったのだ。陽は一度、メガシリンダーの中を見てみたいと思っていたから。


 「厳重」

 伸びてきた日中の光は、この時間でも外に赤い光を残している。

 メガシリンダー正面入り口から右手に周り、複数の赤警察と青警察が守る通用路を、磁気浮遊式貨物箱を運びながら抜け、更に進むと持ち物を非破壊検査するゲートを通り、ようやく、業務用通用口へたどり着いたひざし

 その目の前で多々たたらは、レイヤーでの書類チェックをしていて。

 「ありがとうございます」

 レイヤー越しに挨拶をすると。

 いよいよだ。

 メガシリンダー内へ進んでいく二人。

 外から中は見えなかったが、中から外は見える仕組みで、壁の素材は硝子ではないが、それゆえ閉塞感は一切なく、ベランダやバルコニーを歩いているようだった。しかも内壁同士も所々、薄く曇っているが、奥が見えるようになっているのだ。

 「 」

 しかしそういった構造は、新鮮だが状況把握がひどく困難だとひざしは感じていた。しかも。

 新しい。

 どこもかしこも綺麗で、まるで新築の構造物のようのだ。

 「管理が行き届いてるんだ」

 多々たたらが感心する。

 これで匂いまでそうなら、陽も同じ感想だったろうが。

 埃っぽい……ような、イオン臭のような。

 状況と情報が一致しない感覚に、気持ち悪さを感じていた。

 まったく無人の内部を、レイヤーの指示通り進んでいくと、行き止まりに、物々しいゲートが見えてきた。

 そのゲートに磁気浮遊式貨物箱を押し付けると、自動的にその奥へと取り込まれていく。何やら音がするのは、先程も行った非破壊検査だろう。

 「!」

 そしてひざしは気づいた。わずかだが磁気浮遊式貨物箱が取り込まれた瞬間、自分の身体が浮いたような気がしたのだ。

 重量計。

 それと分かった。

 恐らく、最初の入口にも有って万が一、重量数値が違った場合、保安機能に引っかかる仕組みなのだろうと。

 厳重だなぁ。

 機械的なビープ音がすると、空っぽの磁気浮遊式貨物箱がゲートから戻ってきて。

 「ご苦労様です」

 ここにはいない誰かに向かって、多々たたらがお辞儀をするので、ひざしも続いた。そして。

 「終わり?」

 「うん、終わったあ」

 緊張していたのだろう、安堵のため息とともに言うと、一息。

 「じゃあ戻ろうか、良ければ今日は僕が夕食をごちそうするよ」

 眠そうな顔が、更にふにゃりととろけて、それがひどく可愛いと、ひざしは感じて。

 「うんっ」

 満面の笑顔で応えた。

 ひざしは今は知らない事だが、この後何度かメガシリンダーに行く事になり、その最後は、人類存亡をかけた戦いとなる。

 ……いや、どちらが勝っても負けても。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ