守人列記 三
陽の国が不安定になりつつある中、草平衆は独自の動きを開始していた。彼等なりの、国を思う気持ちと正義を信じて――。
登場人物
影松桐蔭:草平衆の創立者。<守人>。非常に行動的な人物。
火野雅章:草平衆《草平衆》の<守人>。諜報的活動をしている。
蒲原興三郎:草平衆《草平衆》の<守人>。
辰間本坂:草平衆《草平衆》の<掛り>商人。何やら計画を立てている。
用語
レイヤー:眼鏡型の情報端末。
<守人>:近接戦闘職者。
草平衆:影舘桐蔭が作った<守人>衆。
「決着というニュースは、やはり無いようだね」
細い面長で、顔の作りも細く、茶色い神経質そうな瞳に細身のレイヤーをかけた、影松桐蔭。
雑然とした、物が所狭しと置かれ、壁に時事情報局を映した部屋にて。
「決定的な情報というのが、がせだったんですね」
ぼさぼさの黒髪に困り眉毛、黒い瞳に縁の厚いレイヤーをかけた男が、影松の前で屈みながら言う。
「所詮、そんなものですよ火野さん、噂なんて。この交渉は長引きますね」
その隣で床に座った、巨漢の筋肉質で、髪の毛は左右後ろを短く刈り上げた、蒲原興三郎が。
「でもこれで軍務省設立も、少し伸びるんでしょう? 準備期間が増えるのはありがたいですね」
明るい茶色い髪と、大きな目に大きなレイヤーをかけた若い男が、影松の隣でそう言うと。
「確かにそうですが辰間君、兵は拙速を尊ぶともいうよ」
映像から目を離さず影松。火野が振り返り。
「しかし調査不足で失敗では、今後の衆としても困りますよ、先生」
その言葉に鋭く反応した影松が。
「衆は形の一つに過ぎませんっ、衆にこだわらず、成功に執着せず、名を惜しむを構わず、ただ国を思って行動するのみ、そこに何の迷いがあろうかっ」
影松桐蔭という男はこういう男なのだと、<守人>達は改めて思った。
「自分は恐れていません、準備が出来次第行動しましょう」
蒲原が立ち上がり、その巨躯できっぱりと言い切ると、その場の空気は一変、熱っぽさに取って代った。
最年長の火野は、この熱っぽさに若者特有の危うさを、いつも感じていた。
「そうです蒲原君、滞りなく準備を進めましょう、今また、藤井君が衆内外で、横のつながりを強化してくれています」
着実に実行へ向けて、準備が整っていくでしょう。
「僕も野守さんと計画の詳細を詰めてます、あともう少しで、お伝えできるかと思います」
辰間が言う。
草平衆は<守人>衆として、その精度はかなり低いと思われている。事実、誰それ構わず引き入れるのだから、それは当然だろう。しかし、それはあくまでも<守人>として見た場合であって、その他の能力については全く別の話なのである。影松の考えも正にそこにあった。
人に賢愚の差はあれど、何がしかの才あり。
これは彼の実感であり、実践であり、信念でもあった。だからこそ、ここにいる<守人>達は熱意をもって学び続けられるのだし、行動できるのだ。またそれは、草平衆を支える信念でもあった。




