守人列記 二
デモや暴動、そして馬山国との小競り合いを終えて、徐々に国全体が暗い影に覆われていく陽の国。旧兵器の存在をかぎつけた草平衆が、行動を開始する!
人物紹介
朱巻智也:草平衆の若い<守人>。元金剛衆。
万邦芳孝:草平衆の<守人>。太京駅武市ビル<守人>騒動や四月十二日暴動等、裏で動いていた。
蒲原興三郎:草平衆の<守人>。
原井円生:前公安大臣。辰港事故による勢力争いによって、大臣を辞任させられていた。
影松桐蔭:草平衆の頭目。
火野雅章:草平衆の<守人>。
辰間本坂:草平衆に所属する<掛り>商人。
用語
レイヤー:眼鏡型の情報端末。
草平衆:<守人>に限らず、志あれば誰でも受け入れ、急速に拡大している衆。
<守人>:近接戦闘職者。
「デモの主導者?」
薄茶色でふわりとした短髪に、特徴的な怒り眉とくっきりした黒い瞳、青いレイヤーの朱巻智也が。
木々や緑、花が多く、あちらこちらにベンチやテーブルが並べられ、広場のような所では賑やかな声。ところどころにある太い柱は、自動軌道機の階層へ上がる自動垂直昇降機の入り口だった。
この公園のような場所を細い水路がいくつも流れ、その一つの自動水上走行機に、大きな荷物を載せ移動していた。
「そうだ、万邦芳孝といって、我々と同じ草平衆の<守人>だそうだ」
同乗しているのは、巨漢で絞られた筋肉質に、髪の毛は左右後ろを短く刈り上げており、日に焼けて少し茶色みを帯びている。堀の深い顔立ちでまつ毛も長い瞳は力強く、短めの鼻に大きく豪快な口の男。
「見た事ないですね、蒲原さんはその人に会ったんですか?」
いや、自分は会っていない、又聞きだと蒲原。続けて。
「その万邦芳孝とやらが、一緒にデモを計画したのが原井円生らしくてな」
「それでか、旧兵器の存在を元公安大臣なら、知っててもおかしくないですね」
大きく頷く蒲原。
「でもどこに保管してあるんですかね?」
それを訊こうと直接会いに行ったんだが。
「暴動に巻き込まれたらしくてね、今は入院中だ」
あの日突然沸いた暴動は、後から見返しても計画的だったと思う朱巻。だから。
「怪しいですよね、何かしら裏がある臭いですよ」
自動水上走行機が、両脇一面のアマリリスを抜けていく。
「裏があるといえば、そもそもあのデモ自体、裏で誰かが糸を引いてるという噂だからな」
それが原井円生なのでは? と朱巻と返すと。
「名前が既に出ているなら、それは裏ではないだろう」
確かに。
「まあ我々凡人には、あずかり知らぬ出来事というわけだ」
「末端はそんなもんですよね」
と肩をすくめる朱巻だが、蒲原は不敵に笑うと。
「だがそれで終わらせないのが、影松桐蔭先生なのさ」
「! というと?」
徐々に風景が、木々から建物に変わっていく。正面を見据える蒲原に風が吹きつける。
「先生は言ったよ、それを奪うと」
「!?」
流石に朱巻も驚いて、まさに目を白黒させるとはこの事、平衡感覚を一瞬失い、思わず、箱状の荷物にもたれかかり自分を支えた。
「ははっ、豪胆だ」
笑い事ではない。頭を振って朱巻。
「いや、だって、保管場所も分からないんでしょ? いや、それに、いや、どうやって……?」
そもそもそういう問題でもないのだが、朱巻は軽くパニック状態になる。
「自分も驚いたよ、場所は火野さんが調べてる」
それが判り次第、辰間君が計画を立案して。
「実行部隊で奪いに行く」
強い意志、というより絶対に計画が成功するかのような、自信に満ちた表情の蒲原。
「ん どうした?」
口をあんぐり開けたままの、朱巻に気づいて。
対する朱巻、口を二、三回ぱくぱくするとどうにか声が出て。
「それ……皆知ってるんですか?」
同じ草平衆なのに、全く知らなかった事を本来であれば残念、しかし実際は知りたくなかったから、複雑な気持ちで朱巻は訊いた。
「いや、まだ一部の者だけだ。先生は言っておられたよ、朱巻君なら信頼できるとね」
「!」
その言葉に朱巻、左腰に下げた剣握り、今まで以上に、いや更に強くなる為、修行と鍛錬を積むと渾身の決心した。
風景は高い建物だらけになっていた。




