三目家伝 六
火繰家の攻勢を受けた事を知る風間家。権力の巨人とどう対処するか危機感を募らせる風間福児。それに対処する竹野中竜兵衛は光芽守靖と通じる動きを示す。魔窟の三目家で陰謀が渦巻く!
人物紹介
風間福児:風間家の当主で三目家の三男。
竹野中竜兵衛:風間家の参謀。
真三忠蔵:三目家の親戚。三目家内で最下層扱いを受けている。
赤実陽:風間家の<影梁>。
光芽守靖:三目家当主。
須々木王:陽の国の国王。
陸奥木隆義:三目家の治安部門を担当する。
津山義幸:光芽守靖の部下の<守人>。
用語
レイヤー:眼鏡型の情報端末。
東亜藍潮計画:陽の国に一帯で最大の港を作る計画。
火繰家:陽の国に昔から続く名家。鉄鋼業と武器の産業を取り扱う。
三目家:陽の国に昔から続く名家。あらゆる事業を取り扱う。
辰港事故:髙木に建設中の世界最大となる人口港で起きた事故
風間家:三目家の分家。本家の三男である風間福児が当主。
<影梁>:諜報活動を専門に扱う者。
奥義衆:陸奥木隆義が抱える<守人>衆。
「六月六日?」
短い清潔感のある黒髪に、優しいながらもどこか冷たく感じる瞳は黒で、細身の顔の風間が少し高い声で。
「光芽守靖様本家の方へも招待は行っていないようです」
青白い肌に薄茶色の短髪、灰色の瞳に細い鼻と色の薄い唇で、椅子に座っている竹野中が応える。
壁一面紙の歴史書で覆われ、乱雑に置かれた椅子と机に、中央には円形で腹の高さの豪華な本棚と、その中には小さな机と向かい合った椅子のある部屋で。
「随分と急だな、いや、やっぱり招待は受けてないな」
風間は立って本棚にもたれながら、レイヤーで自分の予定を一通り確認するが、東亜藍潮計画の会議については初耳だった。
「他の分家にも?」
「招待はされておりませn」
となると答えは一つ。
「念の為、全参加社に確認をとってくれないか」
顔を右手で覆いつつ風間、それに対し調べておきましたと、竹野中。
「流石助かる、で?」
「他企業は全て参加のようです」
今度は両手で顔を覆いつつ。
「火繰家かぁ」
踏む必要のない尻尾を、踏んでしまったのだ三目家は。
「竹野中は具体的にどう読む?」
向き直って風間が尋ねると。
「火繰家が具体的な報復に出たという事でしょう、これは警告ではありません、ここで手を打たねば、今後の東亜藍潮計画から外されるでしょう」
嫌な報復を考えつくもんだ、と愚痴る風間だがそうもばかりしていられない。風間家として何か手を打つ必要がある。
「ん、ひょっとして辰港事件についても、ばれてんのかな?」
やばいというより、少しおどけた表情の風間に。
「それはありません、辰港事故で、事故ではないという証拠は存在しません」
じゃあまいいかと、少し苦い表情で風間。続けて。
「さて、どうしたもんかな?」
困ったという感じではなく、その顔には笑みを浮かべる風間。それに対しいつも通りの表情で竹野中は。
「本家を中心に、三目家全体で事に当たるべきかと」
一般論を言うが、風間が切り返して。
「別に本家は気にしなくていい、風間家だけで考えよう」
「」
少し目を閉じ、開けて竹野中。
「であれば、火繰家との接点を作るべきでしょう」
「……大胆だな、でも、そうなるかな」
竹野中の向かいの椅子に座り、風間は続けて。
「積極的に裏切るつもりはないが、予定が少し早まるかな……、その場合の懸念点は?」
少し考えて風間が尋ねると直ぐに。
「真三忠蔵様が、火繰家に三目家を売るでしょう」
風間は腕を組んだまま、目を大きく見開いた。同じ動きをするのはまずいなぁ、と。
「いえ異なります。真三忠蔵様は三目家の情報をすべからく売り渡すでしょう、真三忠蔵様には失うものが何もないからです、復権の為であるなら安い取引と考えるでしょう」
たまったもんじゃない、と思わず口から洩れる風間。しかし、自分だって似たようなものか、守靖にしてみれば、と考え至って微妙な笑み。
「対して我々は火繰家との間に、パイプを繋げる事を目的とします。これは風間家を独立させる為の、第一歩となります」
「!」
気づいて風間、感嘆のため息を漏らす。
「……流石だ、竹野中に任せよう」
お手上げとばかりポーズをとって、立ち上がる風間に。
「風間様」
「んー?」
いつも通りの表情だが、どこか硬い表情の竹野中が。
「赤実には例の件、話されたのでしょうか?」
「……いや」
「早い方がよろしいかと」
「うー、まあそうなんだろうけど、絶対ひと騒ぎするだろうしなぁ、最後まで聞けっていっても、……やけにせっつくな?」
いつも通りの表情だが、どこか硬い表情の竹野中が。
「彼が暴走したらわたくしでは止められません」
「あー……」
なる程、竹野中は陽の暴走を怖がっているんだ、と風間は気づいて思わず笑いそうになり、唇を内側に巻き込んでどうにか耐える。だってそうだろう、あの竹野中をして怯えさせるんだから。
「……ん、そう、ね、話して、おくよ」
しかし気づいて風間、陽の暴走に一番近いのは自分だと気づいて、笑うどころではないと、思わず肩を落とした。
「真三忠蔵は裏切る、そして風間家も、か?」
七三分けの黒髪に、細い眉毛と茶色い瞳、面長でしっかりした鼻と大きな口に、派手さはないが仕立ての良い服を着、立派な椅子に座る光芽守靖。
「風間様のお考えまでは、一向に」
そう答えるのは、青白い肌に薄茶色の短髪、灰色の瞳に細い鼻と色の薄い唇で、光芽の前に立つ、竹野中。
「分かりやすい、実にいい」
その答え方に対し。
壁は白を基調に様々な装飾が施され、それを支える木の飾り柱も太く立派、高い天井には大きく豪華な装飾の照明があり、その全体的な雰囲気は、上品で気品に溢れた応接室。
「で、貴様の見立てでは、真三忠蔵はいつ頃動く?」
「はい、具体的な情報を流すのは須々木王の退位を待ってからと考えます、火繰家との接触はそれ以前からとなりますが」
目を細め光芽が。
「それだけか?」
「具体的に知るには<影梁>を使う必要があります」
今度は面倒くさそうに、眉間にしわを寄せて。
「貴様の所にもいただろう?」
「彼は風間様の私兵でございます」
自分の手ごまじゃないから、そっちにで勝手にやってくれと、そういう意味と理解して光芽は役にたたんな、と言いきって。
「陸奥木の奥義衆を使おう、これについて意見は?」
「ありません、思うままなさるのがよろしいかと」
そう言って頭を下げる竹野中。
「……分かった、下れ」
深々と一礼する竹野中が部屋を出ていくと、代わりに別の扉が開き、堅物で神経質そうな細い瞳、つんつんに短い髪に細く長い顎と細い筋のような鼻の津山義幸が、音を立てずに入って来て一礼し。
「光芽様、やはり奴は危険なのでは?」
椅子に深く座り直し光芽が応える。
「問題ない、あれがこちらと通じている事実が重要だ、いずれ完全に従わせる、人間誰しも自分が可愛いものだからな」
光芽は、そう上目遣いに笑って見せた。




