Episode 6.
「大丈夫ですか?先輩。」
「龍巳、あんた…」
ツハラエルと黒猫が心配そうに話しかけるが彼女はぼーっとしたまま動かない。
まさかあんな形で会ってしまうとは、と黒猫は彼女を撫でた。
パーカーから鉄の臭いがする。
「龍巳、アレ以来会ってなかったし…ちょっとやばいかもね。」
「先輩大丈夫かな…」
樹海の中までは来ないだろうが、ここを獣人に見られたら確実に殺される。
黒猫は立ち上がった。
「どこ行くんすか、レンさん。」
「少し歩く。ちゃんと龍巳守ってあげてね。」
考える、再会した事によって記憶が戻れば彼女はここを去る。
そうしてしまえばきっと獣人と軍警と組織。この3陣営はぶつかり合い、終わらぬ戦争を繰り返すかもしれない。
被害は最小限に留めたいのに……
と、考えをめぐらせていると誰かとぶつかった。
「き、きらくるさん…」
「レンさーん!こっんばんは。」
「こ、こんばんは…」
一応きらくるの従者であるレンは少し身震いする。
暫く無断で色々な所に行っていたので殺されると思った。
「お帰り!ちょっと来てくれませんー?」
「あっ…え?は、はい。」
きらくるは彼女の居る方に進む。
やばいと思った。
(ツハラエル…頼む、龍巳に死なれたら困るんだよ…)
がさり、と其処にはツハラエルと包帯塗れの彼女が居た。
彼女は意外にも立ち直っていてきらくるを見ていた。
「えっとですね!お久しぶりでーすねー、龍巳さん!」
「そうだね、きらくる。」
ツハラエルがオロオロしている。
黒猫は何かあったのか?と少し身震いした。
彼女はパーカーを着ると立ち上がった。
「帰るぞサド医者。」
「ちょっ…だって、先輩…何で…!?」
きらくると黒猫は首を傾げた。
ツハラエルがこんなに驚いている、何かがあったのは間違いない。
でも彼女は平然としている、寧ろツハラエルが何故こんなに驚いているのか分かっていない。
鎌を手に取り彼女は言った。
「きらくる、悪いがオアソビはまた今度な。」
「えー!?つまらないですー!」
(あんなの…組織は、先輩に何を……?)
ツハラエルはずかずか進む彼女に必死に着いて行く。
(…………そんな事されたら、ますます面白くなっちゃうじゃん)
何の事か分かったきらくるは成る程!と言って反対方向に進む。
それにふわふわと着いて行く黒猫。
「何でツハラエルはあんなに驚いてたんですかね?」
「龍巳さんの傷を見たんですよーきっと、てーか絶対!」
傷?と聞き返した黒猫。
きらくるは笑って言った。
「分からなくて正解なんでーすよ!」