Episode 2.
「アスト、アスト!!」
自分の名を呼ぶ声で少女はハッとすると目の前の友人を見た。
「大丈夫?うなされてたけど…」
「え、あ…大丈夫……」
「そう?無理しないでね。」
友人はそのまま珈琲をいれに行ってしまった。
コーヒー牛乳にして、と頼んで椅子にもたれかかる。
この前、アストは巷で噂の殺戮者マーダーと初めて遭遇した。
赤くて鉄の臭いが充満していて、大きな鎌を持った、
死神の様な人間だった。
珈琲牛乳に口を付けながらまじまじと光景を思い出して吐き気がしてきた。
あの者は人間ではないと言われ育ってきた。
自分と同い年で人を沢山殺したのだ。
二つ名"死神"、"殺戮者"。
名前が不明らしくそんなような名前で呼ばれている。
最近はジャック・ザ・リッパーなんて物騒な名前で呼ばれているらしい。
フードを被っていて口元も隠していたからよく見えなかったが目は綺麗だったと覚えていた。
(あの子に少し似てたな…)
あの子、が誰なのかアスト自身もあまり思い出せないが……自分にとって大きな存在だという事位は分かっていた。
分かっているからこそ、この記憶も、あの時掴み損ねた手も、きっと探し出す。
「アスト、あんた本当に大丈夫?」
友達は心配してくれるがあの殺人鬼の姿が離れなくて、少し怖かった。
皆言っていた。
「あの殺人鬼は人を魅了し恐怖を植え付ける。」
魅了、だなんて________、しかし見た目だけでとは恐ろしい人だ。
いや人ではない、と。皆人ならざる者と言っていた。
アストの母も父も上司も友達も、
親友以外皆そう言っていた。
親友は、違かった、
「人間じゃない、まぁそうかもね。でもいいじゃない。人と名乗ったのならもうそいつは人間だと思うわ。」
優しくて面白くて、私にすぐ暴言を吐くけど、ほんとに信頼出来る奴。
(軍警に誘わなくて良かった。)
そしたら今頃、親友も同じ事になっていたかもしれない。それだけは嫌だ。
それだけは許さない。
やっぱり、私は"死神"を追おう。
決心して、またコーヒー牛乳を啜った。
「……必ず、」