Episode 12.
「あれ、龍巳仕事?」
クラウンが部屋に入ると彼女はパーカーのフードを深く被って口元に布を纏わせていた。
仕事用の服装は既にボロボロだった。
穴が開いているのは銃だろうか、とクラウンは思った。
彼女は頷くと鎌を手に取った。
「上もひでぇよなぁ、龍巳にくるの殺しばっかじゃん。」
「殺しは嫌い。血の臭いが駄目、私。」
「俺から言っておこうか?」
「いや、いい。」
彼女は鎌をちらりと見てタオルを手に取る。
それで鎌を拭い始めた。
「何してんの?」
「血が…手入れはしてけど最近調子良くないから。」
大きな鎌は"死神の鎌"と呼ばれ、
世の恐怖させる"死神"を作り上げた一つの原因だった。
「で、どうしたの?」
「何となく暇だったから。」
「そう、ごめんね。」
「いや、いいよ。」
刹那、
彼女がふっと顔を上げる。
クラウンも反応を示す。
「何かあったな。」
「……ちょっと行ってみるか。」
彼女は鎌を持ちクラウンはナイフをくるくると回す。
ちぃが走ってきた。
スカートのフリルが揺れる。
「ちぃちゃん、お前あんまり走るなって…」
「大変なの…!」
ちぃは息切れをさせながら必死に話そうとする。
彼女がゆっくりでいいから、と言うとちぃは少し落ち着いてからまた話し始めた。
「軍警師団の人が来て…"死神"を出せって。」
「私?」
クラウンと彼女は目を見合わせる。
「龍巳、罠かもしれねぇぞ。」
「何かあったら殺す、罠だったら殺す。それだけ。」
「こっちだよ。」
ちぃが彼女の手を取り小走りで向かっていく。
クラウンは一歩足を出したがちらりと後ろを見て、
また、歩き始めた。