Episode 9.
「…誰?」
「アストといいます、ここにきらくるさんは居らっしゃいますか?」
目の前の獣人はもそりと起き上がりギラリとした目でアストを見た。
どうやら食事の後だったようだ。
グロテスクに血がバラ撒かれている。
アストは顔を顰めた。
「きらくる?…ああ、あの神獣か、あいつならここには居ないよ。」
「そうですか、ありがとうございます…失礼します。」
「ストップ。」
獣人がアストの肩を握る。
(…)
不愉快そうにアストは獣人を見た。
「情報料、味見させてくれない?」
「喰種との混合…改造ですか?」
「ああ、禁止されてるがここじゃそうまでしないと生きていけない、
何しろ食うものが無くなるからな。」
アストの手に色が混ざる。
それは獣人の顔面に叩きつけられた。
その獣人はもう動かなくなった
「改造禁止令、駄目ですからね…で、何の用ですか?そとはねさん。」
いつの間に居たのか、扉の前に立つ犬神は笑う。
「あれ、バレちゃったか。」
「犬神の気配で分かります、で、どうしました?」
そとはねは写真をアストに手渡す。
その写真には"死神"の姿が映っていた。
アストは唖然とした。
軍警でも撮れなかったのに、と驚きそとはねを見る。
得意げに笑いながら続ける。
「君はこれ…あ、言い方が酷いね。彼女を追ってるんだよね?」
「…はい。」
「なら話は早い!手を引いてくれる?」
そとはねは妙に違和感のある笑みを貼り付けたまま言う。
アストは一歩引く。
「ぴゃっ!それはこっちの台詞だよ。」
そとはねとアストが見た先には木にぶら下がった女が居た。
アストはその女を知っていた。
嫌でも忘れられないと思う。
「お前は…キルティア。」
凄惨な事件現場を残す第一級殺人犯だ。
その現場を生で見たアストの脳裏にこの女がこびり付いていた。
キルティアとアストはその現場で出会し、お互い覚えていたのだ。
「ぴゃっ軍警ちゃん!久しぶり!元気にしてたかな?」
「あんたも"死神"を追ってるの?やめてほしいんだけど。」
3人の視線がぶつかった。