表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/93

*

児童施設からの帰り道、電車に揺られながら先程のクリスマス会のことを思い出していた。

子供たちに優しく微笑む紅林さん。

子供たちの素敵な笑顔。

思い出すだけで幸せな気持ちに包まれる。


「今日はありがとう。」


「とても素敵な体験でした。あの、もしご迷惑でなければ来年も行ってもいいですか?」


私の言葉に紅林さんは目を細めて「ありがとう」と小さく言うと、ぎゅっと手を握ってきた。

触れた手の温もりが伝わってきて、私の胸はいとも簡単にときめいてしまう。


「あのケーキ、美味しかったよ。」


「えっ食べたんですか?ドライフルーツ嫌いって。」


「確かに苦手だけどそれは若い頃の話で、今はもう食べられるようになったんだ。それに、せっかく可憐が作ってくれたのに、食べないわけがないだろう?」


「わぁ!ありがとうございます。」


「でもこれからは俺に一番に渡してほしい。大島にドヤ顔されるのは腹が立つからな。」


「ふふふ。嬉しいです。私お菓子作り得意なんですよ。他に食べたいものありますか?」


美味しいって言ってもらえるのがこんなに嬉しいなんて。

紅林さんのためなら頑張って作っちゃうんだから。

紅林さんは右手を顎にあてて少し考えたのち、


「可憐かな?」


といたずらっぽく言う。

一瞬わからなかったけど、すぐにその意味が理解できて私は体が熱くなる。

そして変な声が出た。


「ひぇっ、そうじゃなくて…。」


あわあわしている私を紅林さんは楽しそうに煽る。


「この前拒否られたからなぁ。」


「あ、あの、ごめんなさい。決して嫌とかそういうわけではないんです。その、私、そういうことは慣れてなくて。」


ああ、ここは電車内なのに何を言っているんだ。

幸い人はまばらだけど、何だかもうテンパってきてよくわからない状態になっている。

焦る私に紅林さんは笑いをこらえながら、少し引き寄せて囁くように言った。


「わかってる。無理強いはしないよ。渡したいものがあるから、俺の家、寄ってって。」


紅林さんの囁き声はまた落ち着いた声でかっこよくて、私は胸がきゅーんとなってコクコクと頷くことしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ