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私は明日美に泣きついた。
胸のもやもやを吐き出したくて。
そんな愚痴を聞いてくれるのは明日美しかいないからだ。
「私、諦めた方がいいかな?」
「つらいなら止めなよ。」
泣きながら言うと、明日美はきっぱりと言う。
うん、つらい。
つらいからやめた方がいいって言うの?
やめたら楽になるのかな?
「…でもね、可憐がこんなに好きになれる人ができて私は嬉しいと思ってる。今までちゃんと人を好きになったことないでしょ?」
「…うん、そうかも。」
学生の頃、一応“彼氏”と呼べるような人はいた。
いつも告白されてオッケーして、でもなんか違うなって思って、それは相手も同じで。
結局上手くいかなくて別れてしまう。
そう思うと、紅林さんは私が初めてちゃんと“好き”だと感じた人なのかもしれない。
「可憐を泣かすやつは許さん。年上だろうが関係ないし。…だけど、後悔だけはしないでね。」
「…うん。」
なんだかんだ、明日美は優しい。
ちゃんと私の気持ちを汲み取ってくれる。




