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*

紅林さんが手を伸ばして受け取ってくれるのを、私はドキドキしながら見つめていた。

綺麗にラッピングされたシュトーレンが、私の手から紅林さんの手に渡る。

それだけで胸がいっぱいだ。


「ありがとう。」


紅林さんが私にお礼を言った瞬間、


(マコト)!」


紅林さんの背後から声がかけられて、綺麗な女性が現れる。

忘れもしない、優香さんだ。

紅林さんの腕に自分の腕を絡めている。

もう、それだけで衝撃だ。


「今帰り?一緒に帰ろ。」


「…優香。」


「あら、何これ?真ドライフルーツ嫌いだから食べられないでしょ?」


今しがた受け取ってもらったシュトーレン。

優香さんはチラリと私を見ると、紅林さんの手からそのシュトーレンをもぎ取った。


「返せ、優香。」


強い口調で言うけれど、優香さんは全く動じていない様子で、「それよりさ」と話題を変える。


「クリスマスなんだけど。」


「はあ?」


「今年も行くんでしょ、いつものとこ。」


よくわからないそのやり取りに微笑ましさすら感じられて、なぜだか自分が惨めになった。

私の知らない、ううん、知りたくなんてなかった、紅林さんと優香さんの関係。

こんなにも仲がよくてラフな感じなんだ。

それもそうか、元夫婦だし。

考えれば考えるほど居たたまれなくなって、鼻の奥がつんとしてくる。


「あの、ドライフルーツが嫌いだとは知らなくてすみませんでした。よかったらそれ、優香さんが食べてください。…えっと、じゃあ私、失礼しますね。」


自分でも早口になっていることはわかる。

だけど一刻も早くこの場から立ち去りたくて、私は逃げるようにその場を後にした。

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