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久しぶりに食堂で紅林さんと一緒になった。
紅林さんに会うのはあの日以来だ。
別に何てことはない。
お互い何もなかったかのように普通だ。
ほっとしたような、ちょっと不満のような、複雑な気持ちの私。
だけど普通だからこそ、言えることがある。
何の気兼ねなく、クリスマスを一緒に過ごしませんかって誘うことができる。
今年はクリスマスがちょうど休日にあたる絶好のクリスマス日和だ。
誘わない手はないでしょ。
「紅林さん、今週末のクリスマス、一緒に過ごしませんか?」
黙々とご飯を食べていた紅林さんの手が止まって、こちらを見る。
手を口元にあてて少し考える素振りをしてから静かに言った。
「…ごめん、その日は用事があるんだ。」
「そうですか…。」
残念…。
用事があるなら仕方ないよね。
納得しかけたその時、ふと、何かを思い出す。
───クリスマスは必ず子供たちと過ごすから
───あなたの出る幕はないわよ
───嘘だと思うならクリスマスにデートに誘ってみたらいいわ
───必ず断られるから
はっとなった。
優香さんに言われた言葉。
そして断られた私。
本当にそうなってしまった。
でも待って。
この前紅林さんは“子供はいない”って言ってたし。
直接本人の口から聞いたもん。
嘘じゃないよね?
用事って、そういうことじゃないよね?
聞きたかったけど、ここは会社の食堂だ。
誰が聞いているかもわからない。
何だか遠慮してしまって、私は不安なままこの想いを口にすることができなかった。




