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寝起きの彼女はひどく焦っていて、そんな姿を見るのはすごく新鮮だし、妙に可愛く見えた。
昨晩、散々好きだと言われた余韻が残っていたのだろう。
項垂れる彼女にキスをした。
とたんに顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
“好きだ”と言うくせにそういうことをするとそんなウブな反応かよ。
「優香に…会ったんだろう?」
そう核心に迫ってみればビンゴだ。
とたんに目尻に涙がたまる。
「…子供がいて、優香さんとやり直すつもりだって。…本当ですか?」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。
何を吹き込まれたんだ。
子供はいないし、俺は優香とこれっぽっちもやり直したいとは思っていない。
「俺に子供がいたら、どう思う?」
興味本意で聞いてみると、“わからない”と言う。
綺麗事は言わない、正直にぶつかってくる。
だからそれがよけいに、彼女の本心だと思った。
彼女と話をしているとあたたかい気持ちになる。
大島が癒されると言う気持ちがよくわかる。
真っ直ぐな気持ちでぶつかってくるから、愛しさが込み上げてくる。
これが好きだという感情なのかはよくわからないけど、彼女を自分のものにしたいという衝動が湧き上がった。
だけど彼女は逃げた。
俺の手をするりと。
いとも簡単に、だ。
本当に何をやっているんだと自己嫌悪だ。




